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置いて行かれてるっ

 パティラ様の婚約破棄はあっという間に広まった。

 そりゃあ、わたくしの面子をつぶすように、誕生日パーティーであんなことをしたからね。

 あそこには様々な派閥の子女や貴族を招待していたし、噂好きな人もそりゃぁ沢山ご招待していたんだよね。

 目的としては、料理の噂を広めてもらうためだったんだけど、別の意味で役に立ったわ。

 パティラ様は、社交シーズン中に予定外の社交の申し込みが殺到し、今は次の婚約者を精査中なんだそうだ。

 ちなみに、シャグリア様は『虐める妹と一緒に居るのは辛いだろう』という理由で、いち早くベルモル様の家に引っ越しをさせられた。

 新しく結んだ婚約では、ハウフーン公爵の名のもとに、『絶対に婚約破棄をせずに結婚する』『生涯、夫婦ともに責任を取り合う』『カルフィア子爵家とは縁を切る』というような物が織り込まれているそうな。

 ついでに、カルフィア子爵は後妻と離縁もしたそうだよ。

 なんでも、後妻さんは自分の娘を甘やかしまくって、前妻の物は自分の物、女主人なので使用人は自分に従って当然、正式な跡取りである妹はいずれ良い思いをするのだから、姉に譲って当然。

 みたいなお花畑だったそうで、カルフィア子爵は離縁の機会を狙っていたんだって。

 一応後妻さんは子爵家のご令嬢だったから、すぐに離縁とはならなかったんだけど、今回、ハウフーン公爵家が後ろ盾になってくれて離縁が成立したんだよ。

 権力っていいね!

 今回の噂を機に、子供の婚約を考え直す家は結構出て来たみたい。

 相手の家の事情をちゃんと考慮してっていう感じだね。

 子供の頃に婚約したけど、成長するにつれ事情が変わってくるっていうのはあるあるだし、これを機会に政略結婚とはいえ見直すのはいいと思うよ。

 この流れで、リアン達の婚約も見直してくれよ。マジでな。

 長期休暇に入り、わたくしはデュランバル辺境侯爵領と海岸沿いの領にそれぞれ一ヶ月滞在して、残りを新しく貰った領地の視察や今後の事業の話し合いなどをする事にあてる。

 デュランバル辺境侯爵領はつつがなく事業が進んでおり、王太后様も意見を出してくれているようで、むしろ効率化が進んでいる。

 王太后様、前世が社畜だって言うだけあって、めっちゃ働いているイメージだわ。

 お屋敷に遊びに行くと、貴女は何処の平民ですか? っていう格好で出迎えてくれるし、出される物はお手製だし。

 一応護衛を兼ねて使用人はいるけど、全員が前国王様がくれた影なんだって。

 王太后様にいろいろ相談して、わたくしはデュランバル辺境侯爵領や王都での事業の今後の計画を立てて、海沿いの領地の運営方針を決めていく。

 海沿いの領地はまだまだ発展途上だし、見た事もない料理を広めるのは中々に難しく、王都やデュランバル辺境侯爵領、海沿いの領地はともかく、その他の領地にはそこまで広まっていない。

 行商人を使って、新しい料理を広めてはいるけど、すぐにっていうのはやっぱり難しいね。

 商会ギルドが出来ればもう少しましになるかもしれないけど、今はまだ試験中だから、わたくしもがんばらないと。

 ハン兄様には、商会ギルドが本格的に稼働し始めたら、王都に本部を移して、そこの長になってもらうようにお願いしているんだけど、あくまでもアンジュル商会の経営担当で、爵位とか面倒だって言われてしまう。

 うーん、このままじゃリアンを嫁がせる事が出来ないし、どうにかして説得しないといけないよなぁ。

 リアンも、あれだけ恋愛小説読んでいるんだし、もうちょっと積極的にアピールしてくれればいいのに、クロエとリーチェの話だと、わたくしの話ではすごく盛り上がるのに、いざ二人きりにすると、途端に緊張してしまい、商売の話をして必死に場を繋げるんだって。

 ハン兄様、何を考えているんだろうなぁ?

 鈍い人じゃないから、リアンの想いに気が付いてないという事はない気がするんだけど、難しいなぁ。

 前世喪女なので、正直恋愛感情なんて文字か画面越しにしか分からんのよね。

 王太后様にハン兄様とリアンの事を話したら、何とも言えない顔をしていた。

 王太后様は、前国王にちゃんと恋愛感情を持っていたそうで、その記憶があるらしいんだけど、前世の記憶が邪魔をしてそれをうまく処理出来ないみたいなんだよね。

 下手に二つの記憶があるっていうのも問題だよね。

 それでも、前国王様から貰ったっていう影を大切にしているあたり、ちゃんと今の王太后様も前国王様を想っているんだと思う。

 王太后様とは、前世がやっぱり同年代という事もあって、話が弾んだし、それぞれ得意としているジャンルが違うから、話していて新しい知識を得る事が出来てとても有意義。

 ただ、王太后様はそこまで知識に拘りを持っていた人じゃないというか、良くも悪くも知識は普通より生きている分少し多いっていう感じ。

 知っている事よりも、知らない事の方が多いのは当たり前、むしろ知っているわたくしの方がおかしいという感じだ。

 前世の友人に(一部の知識は)歩くWikiと言われていたので否定はしないけどね。

 それにしても、長期休暇ってわたくし達子供は、一年の復習をしたり、来年の予習をしたりしつつ、基本まったりする期間のはずなんだけど、どうしてこんな事になっているんだろう?

 ブラックにならないように家族や文官さんが調整してくれているけど、子供には厳しいんじゃない?

 中身が本物の十二歳だったらストレスで倒れるよ?

 王都の事業の方は、普段王都に居る時でも視察なんかが出来るからいいけど、領地の方になると長期休暇じゃないと動きにくいからね。

 しかも、その合間にも勉強をしないといけないわけで、女子会を定期的に開かなかったらわたくしと悪役令嬢はストレスでどんな性格になったか分かんないぞ、運営コノヤロー!

 しかし、差し迫った問題はそこではない。

 領地や事業に関しては、お父様や優秀な文官や武官が居るからなんとかなる。

 しかし、そんな優秀な人達でもどうしようもない物がある。

 それは、わたくしの体について!

 長期休暇に入るちょっと前、リーチェについに生理が来た。

 それが密かにわたくしにはショックだった。

 リーチェは裏切らないと思っていたのに、思って、いたのに!

 でも、そうだよね。思い出してみれば乙女ゲームのスチルでは、リーチェは一見ほっそりしているけど、着やせしているだけで、イベントなんかでボロリする時はリアンやクロエほどではないとはいえ、かなりの大きさだった。

 くっそ……、わたくしはその兆候がないのに、置いて行かれている気分だわ。

 一応、胸は順調に膨らんできているし、成長していないわけじゃないんだけど、考えてみれば前世ではこの年頃はもうちょっと胸が大きかったような?

 数十年前の記憶だから、ぶっちゃけ覚えてないけど、初潮が来たのは小学六年生の時だった。

 大泣きしたわたくしに、お母さんが大丈夫だって必死に慰めてくれたんだよねぇ、懐かしいわ。

 ちなみに、生理が来ていないことを王太后様に言った所、まだ心配する年齢じゃないときっぱり言われた。

 分かってる、分かってはいるけど、周囲がどんどん生理が始まるのに、一人だけ来ないのってなんかね? うまく言えないけど、なんかなのよ。

 とはいえ、実際に来て激痛とかになったら、ならなければよかった! って言うに決まってるんだけどね。

 聖王の加護があるから、病にはかからないからそっち系の痛みはないだろうけど、この体の関係による痛みは病じゃないもんね。

 それに、周期が安定するまでしばらくかかるだろうし、最初の方は痛みも激しい事もあるし、不安は多い。

 だが! 三人がなっているのにわたくしだけ残されるのは、やっぱりモヤっとするのぉ!


◇ ◇ ◇


Side ロマリア


 紅茶を飲みつつ、嵐のようなツェツゥーリア様がデュランバル辺境侯爵領を旅立ったと報告を受け、無事に次の目的地に到着するようにと祈る。

 私が記憶を取り戻して色々あったけれども、こうしてスローライフを送れるのはどう考えても、ツェツゥーリア様がデュランバル辺境侯爵に交渉してくれた結果。

 下手をしたら実家の領地に幽閉なんて可能性もあったものね。

 そんなツェツゥーリア様は、最近は事業関係の他には年頃の子供の悩みを抱えているようで、私から見ると可愛らしい事なのだけれども、本人からしてみたら真剣な悩みのようなのだけれども、だからといって私ではどうしようもない。

 それに、本人は忘れているようだけれども、影の報告によると、第二次性徴を迎えるというか、初潮を迎えたら陛下と口づけをすると約束しているようだけれども、その事についてはいいのかしら?

 定期的なお手紙や、報告によれば、過度の接触は無くなったそうだけれども、それでも手を繋いだり、たまにツェツゥーリア様が陛下に手ずからお菓子を食べさせてあげているとか。

 未来の国王夫婦が仲睦まじいのはいい事だけれども、今の段階ではねぇ……。

 けれども、あの年頃の女の子の成長って本当に驚くほど速いし、ツェツゥーリア様曰くこの世界は、乙女ゲームの世界だそうだから、その乙女ゲームが始まるころには体がある程度出来上がっている可能性がありますね。

 陛下、理性が持つのでしょうか?

 ツェツゥーリア様が許容すれば、ある程度の事は済ませてしまいそうですが、流石に最後まではしませんよね?

 はあ、不安です。

 かといって、私が王都に戻ってしまったら、それはそれで騒ぎになってしまいますからね。

 一部では、私がデュランバル辺境侯爵と懇ろな仲になっているなどと、妄言を吐いている貴族もいるようですが、彼の愛妻家ぶりは有名ですのに馬鹿らしいこと。

 私が記憶を取り戻す前ですら、あの方に言い寄ろうとした貴族の未亡人が、絶対零度の視線を浴びて硬直した場面を何度も見ました。

 私自身、あんな視線を浴びたいとは微塵も思いませんね。

 デュランバル辺境侯爵とは、良き友人関係をこのまま貫きたいものです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ツェツィ…忘れてないかい? 第二次性徴迎えたら陛下が遠慮しなくなる事を…(笑)
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