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イエスロリータ!ノータッチ!

 ガゼボには適温になるように魔法が掛けられているようで、寒さなどを感じることはない。

 近衛騎士やメイドは近くにいるけれども、必要がない場合は近寄らないように指示されているのか、ガゼボの中にはメイドがお茶を注ぐ時ぐらいしか人が増えない。


「ツェツィは普段はどんな勉強をしているんだ?」

「普通よ。淑女教育とか、教養のお勉強とか、魔法のお勉強」

「そうだな、まだ四歳だからな」

「えっと、第三王女様もわたくしと同い年なのよね? その、やっぱり王女様って特別なお勉強とかするの?」

「さあ?」


 さぁって……。確かに、乙女ゲームでは交流は遭遇したら挨拶をする程度の仲とはいえ、冷たすぎない?


「グレイ様は、妹様や弟様の事、嫌いなの?」

「嫌いっていうわけじゃないよ。仕事が忙しくて構う暇がないっていうのが正しいかな。それに、第一王女も第二王女も、自分を着飾る事に熱心で、私には媚びた態度を向けてくるが、勉強も真面目にしないわがままで傲慢、癇癪持ちで手に余る」

「そうなの」


 第一王女も第二王女も、乙女ゲームでは出てこなかったな。ゲームが始まった時には卒業していたっていう設定だったし。

 えっと、第一王女は隣国に嫁いで、第二王女は辺境伯家に嫁いだのよね。

 人となりは描かれてないけど、あるあるな感じのわがまま令嬢的な性格なのかもしれない。

 第一王女がわたくしの八歳上で、第二王女が五歳上だったわよね。

 乙女ゲームでは絡みはなかったけど、学院に通う以上、接触は避けられない気がするなぁ。

 でも、それなりに年齢が離れてるからスルーされる?


「ツェツィは王女に興味があるのか?」

「そうじゃないけど、同い年の王女様だと、学院でわたくしと同じ学年になるでしょう? ちゃんと仲良くできるかなって」

「ツェツィはそんなこと気にしなくて構わないぞ」


 いや、気になるよ? ヒロインがハッピーエンドを迎えた後の悪役令嬢の悲惨な末路を知ってるからね。

 ええっと、第二王子の婚約者はスマホアプリでは国外追放だけど、パソコン版では国外追放と偽りの情報を流されて、地下牢に繋がれて第二王子が飼っているスライムの苗床になる。

 宰相の息子の婚約者はスマホアプリ版では修道院行きだけれど、パソコン版では娼館送りで、毎晩何人もの男に凌辱される肉便器になる。

 騎士団長の息子の婚約者は、スマホアプリ版では高齢の男爵の後妻として嫁入りするけれど、パソコン版では義理の息子に犯され、孕まされては堕胎させられるという地獄。

 パソコン版では、悪役令嬢は他にもゲーム中にエロイベントに遭遇することが多かったりするから、制作者は悪役令嬢に恨みがあるのかと言われたほど。

 ヒロインはエロイベントがあっても、最後の一線を越えるまでに攻略者が助けてくれるのに、悪役令嬢はそれが無いんだもん、言いたくもなるよね。

 確かに悪役令嬢も悪いかもしれないけど、よくある命を危険に陥れるような事とか、そういうのはしてなかったんだもの。

 自分の婚約者と馴れ馴れしくする女生徒に注意するとか、ちょっとした嫌味を言うぐらい普通でしょ?

 前世でも今でも、常識的に浮気する方が悪いと思う。

 でもまあ、この世界って浮気は男の甲斐性とか、男を繋ぎとめることが出来ない女が悪いと言われるんだよね。

 理不尽だわ。


「気にしなくていいと言われても、学院に通ったら出来れば仲良くしたいわ。せっかく一緒に学ぶのだもの」

「そういうものか?」

「ええ」


 しみじみと頷くと、グレイ様は「わかった」と言う。

 なにがわかったのだろう?


「今度、メイベリアンを紹介しよう」

「えっ」

「仲良くなりたいのだろう?」

「そうだけど、いいの?」

「構わない。まあ、アレと仲良くなれるかはわからないけどな。話では、それなりに真面目に教育は受けているようだが、それなりに傲慢な一面もあるそうだ」

「そうなの」


 えーっと、第三王女のメイベリアンは、高飛車なキャラだったわよね。だからこそ、エロイベントで泣いて許しを請う姿がそそるとか言われたような?


「その点、ツェツィは素直で可愛いな」

「かわっ……。そ、そんなことを簡単に言っちゃだめなのよ」


 イケボでそんな事言われたら惚れてまうやろ!


「グレイ様は陛下で、かっこいいのだから、そんな風に可愛いとか言ったら、誤解されてしまうわ」

「事実を言っているだけなんだけどな」

「そ、そんな事言っちゃだめなのよ」


 うぅ、顔が赤くなる。

 声だけで孕むとか言われるイケボで、可愛いとか言うなし!

 精神年齢アラフィフじゃなかったら、コロリと堕ちてるぞ。


「ふふ、顔が赤いよ、ツェツィ」

「そんなことないわ」


 だから頬っぺたをつつかないでぇ。


「本当に可愛い」


 そう言ったグレイ様の顔が近づいてきたと思ったら、頬っぺたに「チュ」と軽くキスをされて、わたくしは顔を真っ赤にして思わずキスをされた頬っぺたを押さえてしまう。


「なっなっ……」


 なんつーことをっ。


「どうした? このようなもの挨拶だろう?」

「そ、そうだけど。グレイ様は陛下だもの。簡単にこんなことしちゃいけないわ」

「ツェツィは他の人には挨拶のキスをしないのか?」

「それは……お父様とか、兄様達とかには」

「とか、ね。じゃあ、私がツェツィにしても問題はないな」


 問題あると思うんだけど。

 こんな場面見られたら、誤解されるんじゃない?

 余計な修羅場には巻き込まれたくないんだけどなぁ。


「もし、誰かに見られてしまったら、ごかいをされてしまうわ」

「大丈夫だ。ここには信頼できる者しかいない」

「でも、グレイ様はこれからおきさきさまをもらうのよね? その人達に嫉妬をされるのは嫌だわ」

「ああ、そうだな。国王として、妃を持たないわけにはいかない。精通もしたし、もう妃の選抜が始まっている」

「こういうのは、そのおきさきさま達にしてあげるべきだわ」

「私は好きでもない相手にこんな真似をしたくはない」

「すっ!」


 お、落ち着け。わたくしは四歳児。

 幼女可愛い的な好きなのよ。そう、多分妹が可愛いとか、好きだなとか、そういうノリよ。


「ツェツィは私の事が好きかな?」

「そ、そんなの」


 前世で最推しだったなんて言えないしなぁ。


「好きとか、まだわからないわ」

「そう? まあ、ツェツィはまだ四歳だからな」


 どこか残念そうに言いながら、わたくしのほっぺをつついたり、唇をふにふにと揉んだりするのをやめてくれませんかね?

 イエスロリータ、ノータッチ!

 膝の上に乗せられてる時点でアウトだけどね!


「それにしても、四歳だからか? ツェツィはあまりお菓子を食べないな」

「それは……」


 そんな砂糖を濃縮したようなだけの、歯がグギグギするようなくそ甘いだけのお菓子、食べ続けられるかっ。


「甘い物は嫌いか?」

「そんなことはないけど、その、甘すぎて」

「ふむ。確かに私もお茶を渋めにしないと食べることが出来ないがな」

「そうよね! この世界のおりょうりは発展してないのよ!」

「料理、料理なあ。昔は今のように香辛料や甘味料がなかったから、味気ないものだったそうだぞ?」

「ちがうのよ。こうしんりょうはかければいいっていうものじゃないの。味がけんかしちゃうもの。甘味料だって、甘さを追及すればいいっていうものじゃないわ」

「やけに料理に熱心だな」

「うっ……」

「もしかして、あまり食事が合わないのか? だからこんなにか細いのか?」

「食事が合わないのはじじつだけど、そんなに細くないわ。普通よ」

「しかし、腕なんて簡単に折れてしまいそうだ」


 そりゃあ、わたくしはまだ四歳ですもの。十四歳のグレイ様からしてみれば、腕を折るぐらい簡単でしょうね。


「わたくしだって淑女だもの。太るなんてみっともないことできないわ」

「あまり肉付きが悪いのも、抱き心地がよくないと思うぞ」


 あーあー、聞こえない。わたくしは四歳児。意味なんてわからない。

 それにしても、四歳の幼女に抱き心地とか言うなんて、本当にこんなキャラじゃなかったはずなんだけどな。


「まあ、ツェツィはどんな姿でも可愛いからいいか」


 勝手に納得しないでぇっ。

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