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恥ずか死ぬ

「お、王太后様が、そのような?」

「ええ、グレイ様に何をされたか、いつでも些細な事でも、事細かに知らせるようにと、信頼出来るメイドまでくれたの」


 実家の息はかかっていない、なんだったら前国王がくれた影の一人だからと、清々しい笑顔で言った王太后様に、グレイ様は引きつった微笑みを浮かべていた。


「それで、王太后は隠居後は何処に行く気なのじゃ?」

「うち」

「……つまり」

「デュランバル辺境領で、のんびりスローライフを送るって。食べ物にも困らないしっていう理由で」


 その他にも、元々わたくしが色々手掛けていることに、ちょっと口出ししてさらに発展させても、誤魔化しやすいという狙いがあるみたい。

 なんでも、前世を思い出したきっかけが、メイドに購入させたアンジュル商会のお菓子だったんだって。

 あれだよ、『ウォーター!』みたいな感じだったって言われたわ。

 なんか違くない? と思ったけど、今までの食生活を間違いだと気づくきっかけだから、そんなものだと言われた。


「まあ、あの王太后が居なくなるのは、良い事じゃが、ある意味困る事でもあるの」

「というと?」

「後宮を牛耳るものが居なくなるからの」

「「「あぁ」」」


 確かに、王太后様になって後宮に入ってからは、後宮の采配に関しては一応王太后様も関与していたんだよね。

 特に、前国王のお妃様達に関しては影響力は強いよね。

 でもなぁ。乙女ゲーム開始の時は実際にいなかったわけだし、そうなると誰が管理していたのかっていう話だよね。


「王太后様の次に影響力が強い人は誰なの?」

「難しいところじゃな。王女の順番で言えば第一王女の母上なのじゃが、実家の爵位から考えると第二王女の母上になる。しかし、後宮内に姫が残っているとなると、妾の母上が一番上になるの」

「陛下のお妃様達は、正妃様がいませんので、実家の後ろ盾の優劣で順位が決まっている状態ですものね」


 つまり、誰も手綱を握れないって事じゃないですか、やだー。

 そんな権力争いを見ていたら、グレイ様も女性不信になるよねぇ。

 しかし、実の母親に手遅れと言われるメイジュル様、どうなの?

 前世の記憶があるから、これはもうだめだって判断して、なんだったらクロエとの婚約を無かったことにしようと動いたらしいんだけど、実家の方が頷かなかったんだって。

 むしろ、今まで自分達に従っていた王太后様が、いきなり自分達に逆らって、今まで何のために育てたと思っているって怒鳴られたとか。

 このまま王都に居ると、自分の身分と名前を使って何をされるか分からないから、とっとと王都を出ることにしたんだって。

 報奨金として領地を貰ってもよかったらしいんだけど、それを貰った場合、メイジュル様が引き継ぐことになって、そうなったら領民が可哀想だから断ったそうだよ。

 そのかわり、好きな領地で過ごす権利を貰ったんだって。

 それが、デュランバル辺境領ってわけね。

 わたくしが新しく貰った領地と迷ったらしいんだけど、領主が変わったばかりの領地に王太后様が住むなんて、何か企んでいると思われるからやめたんだそうだ。

 王太后様の隠居については、今年の社交シーズンで発表して、そのまま社交シーズンの終わりに移動するらしい。

 実家が口出ししてくる可能性を考えて、夜会でサプライズ的に発表して、後戻り出来なくする。

 表向きの理由はもうグレイ様に国政を任せていいと判断し静養、でも噂ではメイジュル様の情けなさと、実家の横暴さに見切りをつけるという物を流す。

 これで、クロエが婚約破棄をしやすくなる下準備をする。

 なんでそこまで考えるのかって? 王太后様、このままじゃ自分の息子が、悪役令嬢にざまぁされる系の馬鹿王子になるって予想したそうだよ。

 婿入りするのだから、相手の家の事を知るべきだって話したら、クロエに面倒事を押し付ければいいって言われて、それは間違っているとコンコンと説明をしたら、自分の母親だっていうのに『俺は王族だ! 命令されるいわれはない!』って言ったそうだ。

 相手は王太后様だぞ?

 それを聞いて、『あ、これは無理だ』って見切りをつけて、身辺整理をしたり、情報を集めたりして、この間グレイ様の所に行ったと言われた。

 グレイ様はものすごく疑っていたけど、護衛とかメイドさんに話を聞いて(多分影さん)、わたくしの迷惑にならないのであればって言う事で納得した。

 どちらかというと、わたくしへの過剰接触を禁止された方に納得していなかったけど、女の戦い方という言葉にかなり警戒しているようだった。

 まあね、女の噂一つでこの男尊女卑が激しい国でも、男を陥れることぐらい出来るからね。

 そのぐらい出来なきゃ、女は子供を産む道具とかしか思われないからね、女は自衛手段を身に付けるんだよ。

 しかし、わたくしへのグレイ様の態度を知った王太后様はすごかったな。

 わたくしも今年で十歳になるし、そろそろ二次性徴を意識し始めないといけないもんね。

 そう考えると、このままグレイ様にされるがままっていうのは、確かに危なかったかもしれない。

 なんせ、こちとら画面の向こうの恋人しかいない耳年増、グレイ様はお妃様にこそ手を出していないけれど、房術を身に付けた絶倫だ。

 ……え、まって。お妃様に手を出していないって言ってるっていう事は、普段どうしているの?

 そこら辺の人に手を出しているわけじゃないだろうし、娼館に行っているわけでもないだろうし。……自分でだよね? オカズって……。


「うわ、キッショ」

「「「ツェツィ?」」」

「あ、ううん。なんでもない」


 これまでのグレイ様のオカズがわたくしだと考えると、想像以上にキモイ。

 うわぁ、リアルロリコン死すべし、慈悲はない。

 それをこの時点で気が付けただけでもよかったかもしれない。

 王太后様、ありがとう! 今後はグレイ様と適切な距離を取るわ!


「えーっと、王太后様が隠居した後の後宮についてだけど、手綱を握る人が居なくなったら、どうなるの?」

「そうじゃな、まず考えられるのは、王太后を後ろ盾として好き勝手していた兄上の妃が、他の妃に糾弾されるであろうな」

「ふむふむ」

「妾の母上のように、一応王太后に気を使っていたものは、枷がなくなったのをいい事に、自分が後宮の主人になろうと、貴族を取り込もうと動くであろうな」

「ほうほう」

「兄上の妃達も、自分が兄上の正妃になれるよう、今まで以上に足の引っ張り合いをするようになるじゃろう」

「まあ、そこら辺は王道だよね」


 嫌だなぁ、そんな後宮で暮らすとか、リアンの情操教育に悪そう。

 でもグレイ様に子供が出来ないと、前国王様のお妃様達が後宮にいるのを拒否出来ないし、まだ権力争いをしているから、グレイ様のお妃様も出て行けって言えないんだよね。

 まあ、王太后様がグレイ様に手土産に、何人かのお妃様の不貞の証拠を教えてくれてたけどね。

 いやぁ、グレイ様が誘いに乗ってこないからって、間男を引き入れるの早くない?

 しかも、その証拠隠滅を王太后様に頼むとか、すごいわ。

 万が一子供が出来たら、グレイ様の子供だって後押しして欲しいって言ってきたそうだよ。

 考えられないわ。

 王太后様も、記憶を取り戻す前まではそれを受け入れていたから、黒歴史、って苦笑してたよ。

 生まれてくる子供が、自分にもグレイ様にも似ても似つかなかったら、どう言い訳するつもりだったんだろう。

 そもそも、グレイ様の方でお妃様達に避妊薬を飲ませているそうだし、浮気をしても妊娠することはなさそうだけどさぁ。

 王宮の後宮に、浮気相手を呼び寄せるとか、本当に倫理観に欠けるわ。


「兄上に正妃が出来れば、後宮の勢力図も変わるのじゃが、当分先であろうし」


 そう言ってリアンがわたくしを見る。クロエとリーチェも見てくる。

 あはは、この三人の中ではわたくしがグレイ様の正妃になる事は、疑いようがないんだろうなぁ。

 実際に、ロリコン対応さえされなければ、わたくしだってグレイ様は最推しだし。

 これから大人の色気が加わって行くと考えると、……うわぁ。


「ツェツィ? 顔が赤いですよ?」

「な、なんでもないわっ」

「熱は……ありませんね」

「うん、本当に大丈夫」


 隣に座っていたリーチェが額に手を当てて熱を計ってくれたけど、本当に大丈夫。

 ちょっとスチルのグレイ様思い出しただけだからっ。パソコン版の!

 二十六歳から二十八歳の色気、やばいよねぇ。

 腹黒だから、光属性を持っているヒロインを他国に渡さないようにするんだけど、自分に気があるってわかって、それを積極的に利用しつつ、そのうち自分でも気が付かないうちに執着するようになって……。

 …………いや、わたくしは後宮監禁フラグ折ったし、所かまわずのどろっどろぐちゃっぐちゃフラグも立ててないし、聖王と魔王の加護があるから強姦フラグも無いはずだから大丈夫! ……だよね?


「そういえば、ツェツィは陛下のどこが好きなのです?」

「確かに気になりますわね。陛下は絶対にツェツィの全部が好きだとおっしゃるでしょうけれど」

「どこが……………………顔と声?」

「「「え?」」」

「あ、いや。性格も腹黒だけど嫌っていうわけじゃないのよ? でも、どこがって言ったら、やっぱり、その二つかなぁって」

「ま、まあ。嫌悪感を持つよりはいいですわね」

「兄上に、女心の指南書を渡さねば」

「ざまぁですね」


 だ、だって言えるわけがないじゃない。

 この三人に、画面越しに口説いてくる所に惚れたとか、耳で孕みそうな声に蕩けさせられたとか、スチルで見せる甘い表情に腰が抜けそうだったとか。

 なによりも、わたくしだけを見つめてくる視線が、たまらなく好きだなんて、言えるわけないでしょっ。恥ずか死ぬ!

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