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考えてみれば頭おかしい

 パチパチと手のひらの上ではじける電気を見つつ、わたくしは満足げに頷く。

 わたくしの魔法属性は風なので、風による摩擦を利用して雷的なものを作り出せないかと試行錯誤していたんだけど、出来たわ。

 そよ風を起こすことから始まり、つむじ風、小さな竜巻までいって、やっと雷的なものを発生させることが出来たよ。

 他にも風魔法で飛んだり、補助的に風を体に纏わせて速度を上げたり、風の壁を作ってシールドみたいのを作ったりも出来るようになった。

 もっと高度な風魔法を扱えるようになると、幻影も使えるようになるらしいけど、上級なんだよね。

 そこまで使えるようになったら、『塔』に入る資格が得られるよ。

 ちなみに、これは小さな竜巻を起こした時に、内部に静電気が発生したのを見て、これって雷系の魔法も使えるようになるのでは? と思ったんだよ。

 読んできた本には風魔法で雷系が使えるっていう記載がなかったし、前世でも雷魔法は独立していたりしてたから考えて無かったけど、やれば出来るもんだな。

 ヴェルとルジャがわたくしの横でのんびりとしているし、この程度なら危険はないと判断されたっぽい。

 小さな竜巻を作った時は、制御が難しくて、一緒に吹き飛びそうになって、慌てたヴェルとルジャが本来の大きさになって、わたくしの服を咥えて吹き飛ばないようにしたっけ。

 いやぁ、小さいとはいえ竜巻は危なかったわ。

 さて、次は音関係に手を出してみようかな。風ってようするに空気の振動っぽい物なんだから、音関係にも発展出来ると思うんだよね。

 超音波っぽいものをイメージして空気を震わせてみるけど、特に音は聞こえない。

 うーむ、難しい。

 振動が音の原因なのはわかっているから、波長なんだよね。

 色々空気を震わせるのを試していると、一瞬「ワーン」と耳鳴りがしたような気がして、目をぱちくりさせる。

 耳鳴りっていう事は、成功?

 いや、でもいまいち微妙じゃない?

 今の感覚を思い出してもう一度空気を振動させてみると、やっぱり「ワーン」と耳鳴りがした。

 ふむふむ。こんな感じで空気を振動させていけばいいわけね。

 振動の波長を変えれば音も変わってくるかな。目標は、超音波的なものを発して、相手を気絶まで持っていくとかなんだけど。

 これはじっくり研究していく必要がありそうだな。


「う~ん、魔法って難しいなぁ」

『ツェツィは素質があるぞ』

『うむ、その年でこれだけ使えれば十分だ』

「でも、小説とかに出てくる転生魔法チートはもっとすごいことしているし、わたくしなんてまだまだだよ」


 魔法の訓練用という事で設置されただだっ広いグラウンドで、ワンピースを纏って、念のため本来の姿になって待機しているヴェルとルジャと一緒に魔法の訓練をしている。

 本当に、前世の転生物を見ると、魔法を使ってチートとかよくあったのに、わたくしの魔法ってささやかすぎぃっ。

 魔力量はまだ成長中だけど、かなりあるけど、それでもリアン達のほうが多いしな。

 流石はモブ。中途半端な能力だ。

 ……乙女ゲームが始まったら、シナリオ通りにイベントが起きるのかなぁ?

 リアン達にひどい目に遭って欲しくないんだよね。

 乙女ゲームの始まりは、ヒロインが王立学院に編入するところから始まる。

 そこで、たまたま同じタイミングで学院に登校することになったメイジュル様達と会うんだけど、強風が吹いてヒロインがメイジュル様達の前に倒れ込むっていうのが最初のイベント。

 なぜか、なーぜーか、転び方がまずかったのか、スカートが大きく捲れて、めっちゃ足が露出して、メイジュル様達の視線を集めるんだけど、ヒロインはそれが恥ずかしくて慌てて立ち上がって、頭も下げずにメイジュル様達の前から立ち去ってしまう。

 その後、案内書に書かれていた教室に入って、自分が醜態を見せた相手がいると知って、「さっきの事は忘れてください!」と顔を真っ赤にして詰め寄る。

 この時点で貴族としてのマナーはかなぐり捨ててるね。第二王子と侯爵家の子息だって知らなくても、見ず知らずの異性に挨拶もしないのにいきなりそんな風に話しかけるとか、ないわー。

 ちなみに、ヒロインは編入生という事もあって、クラス中に存在を知られるわけなんだけど、周囲から冷たい対応をされることになる。

 乙女ゲームをやっている時は、「私が庶子だから」とか言ってたけど、マナーを守らない異分子はそりゃ冷たくされるわ。

 実際ね、庶子は王立学院に結構通ってるのよ。

 浮気する男が多いからな!

 だから、母親が平民だからという理由で冷遇されることは、滅多にない。

 しかも、伯爵家で最低限の貴族のマナーを習ったはずなのに、身分の高い悪役令嬢がしっかり自己紹介をするのにもかかわらず「(名前のみ)です。仲良くしてください」としか言わない。

 そこで、悪役令嬢に「自己紹介も満足に出来ないなんて」、とか嫌味を言われるっていうのがあるけど、悪役令嬢が言っていることが真っ当なんだよね。

 事前の属性チェックで、珍しい光属性を持っていることが発覚しているせいか、魔法の授業は個別で受けることも多いし、教養も足りてない、淑女としてのレベルも低い。

 よって、他の生徒とレベルを合わせるようにするため、居残り授業とか、特別授業があるんだけど、それもヒロインは「私が庶子だから、先生にまで虐められている」とか言うんだよ。

 それでも、攻略対象とのイベントから、まじめに勉強をするという感じっぽい。

 でもね、イベントで授業をさぼって空き教室でいちゃつくとか、保健室でいちゃつくとか、中庭でいちゃつくとかあるわけよ。

 今思えば、本気で真面目に授業受けてるの? と思わなくもない。

 昼休みとか授業の休憩時間も、他に相手をしてくれる人が居ないから、攻略対象と過ごすんだけど、目の前で婚約者が他の女とベタベタしてたら、そりゃあ悪役令嬢だって文句の一つぐらい言うよ。

 それで、魔法生物が育てられている温室に、なぜか、ヒロインが入って、そこで暴走した魔法植物(触手系)に襲われるんだけど、その時に好感度が一番高い攻略対象が助けに来てくれるんだよね。

 ただし、ドレスはボロボロにされてるから、スチルがきわどかった。

 しかし、本当になぜそんなところに行ったんだろう? しかも、ゲームのラストの悪役令嬢の断罪シーンでは、魔法植物の暴走は悪役令嬢が意図的に起こしたとか言ってたけど、どうやって?

 後は、実践訓練って言う事で下級の魔物、ぶっちゃけスライムと戦うんだけど、ヒロインはこれに失敗して、絡みつかれてドレスを溶かされて色々されるんだけど、またもやその時に一番好感度が高い攻略対象に助けてもらう。

 ただし、ドレスは溶けていて、もはやかろうじて残ってるっていう程度。

 ちなみにこの件も、なぜか悪役令嬢が仕向けたという事になる。だからどうやって?

 お茶会イベントでは、なぜかヒロインに攻略対象が同行するんだけど、周囲の令嬢がヒロインを無視することに攻略対象が悪役令嬢を責める。

 基本女性だけで行われるお茶会に、招待もしていない男、しかも婚約者持ち、を連れてくれば、無視されて当然じゃない?

 しかも、緊張で震えて紅茶をこぼしてヒロインが自分のドレスを汚すんだけど、これも攻略対象が、主催者がしっかりしないからだと悪役令嬢を責める。

 理不尽だわ。

 そこら辺から、攻略対象がヒロインにドレスとか装飾品を貢ぎ始めたり、お忍びという形でデートに誘ったりし始める。

 そんでもって校内で人目をはばからず、身体的接触はもとより、なんだったら見せつけてる? っていう感じに(本人達はこっそりしているつもり)キスをしたり、あんなことやこんなことをする。

 そんな事をしていくうちに、ヒロインはどんどん周囲から浮いていって(当たり前だ)、授業の一つである初心者用のダンジョン探索で、パーティーを組む相手が居ないので、必然的に攻略対象達とパーティーを組む。

 そこで、なぜか、ヒロインだけはぐれて魔物に遭遇。襲われてあわやと言う所を攻略対象達に救出される。

 これも、後に悪役令嬢が罠にかけたと言われることになる。

 ちなみに悪役令嬢は、ヒロインがそんなイベントをこなしたり、選択肢を選んで攻略対象といちゃついている間に、不遇イベントに襲われる。

 具体的には、学院の中庭を散策していたら魔法生物(触手系)がいきなり現れて、襲われたり(ここで処女を散らすことになる)。

 暴走して逃げ出したスライムに襲われて、いろんな液体でぐちゃぐちゃにされたり、お茶会で自分を責め立ててくる攻略対象に椅子から突き飛ばされて地面に転がって、その衝撃でドレスが破れたり。

 街に出かけて暴漢に遭遇して強姦されてしまったり(護衛はどうした)、ダンジョンで魔物に襲われて数日間凌辱されたりする。

 ぶっちゃけ、学院の卒業式という最終断罪イベントの時点で、悪役令嬢は体も心もボロボロ、なんだったらショックのあまり学院にほとんど顔を出していなかったりする。

 それなのに、ヒロインを虐めたとか、全ての諸悪の根源と責め立てられるんだよね。

 しかも、婚約破棄された時に「純潔を守れないような淫乱め」とか言われるんだよ。

 お前、それは横にいるヒロインに同じことを言えるのか? あっちこっちでいろんなことをしてたくせに? と、プレイ当時思いっきりツッコミを入れた。

 これに関しては、スマホアプリ版では決定的な表現はなかったけど、イベント的にはパソコン版と共通している。

 そんなこともあって、「悪役令嬢可哀想」という意見もあったんだよね。

 断罪されたその後の悪役令嬢の素顔が、めっちゃ美人だったっていうのもあったとは思うけどな。

 乙女ゲームはあくまでもヒロイン視点で進んでいたから、攻略対象との恋愛を楽しむものだったけど、第三者視点で見ると、頭おかしいね。

 貴族としてのマナーを学院で叩き込まれるはずなのに、ヒロインの周囲への態度とか変わらないし、挙句の果てに攻略対象は「淑女なんて碌なものじゃない」とか言うし。

 攻略対象どもは、必死に淑女教育受けている貴族令嬢に土下座しろ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 乙女ゲームはヒロイン万世、攻略対象者万世がすごいけどツッコミ処が多いですよね。三バカの様子を見ると攻略対象者巻き込んだヒロインバッドエンドルートに向かっているような感じですね。ヒロインは身分…
[気になる点] >街に出かけて【強姦】に遭遇してしまったり(護衛はどうした)、ダンジョンで魔物に襲われて数日間凌辱されたりする。 →暴漢に遭遇して強姦されてしまったり の方が良いかもです。ご確認下さ…
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