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温泉を作りたい

 デュランバル辺境侯爵領での事業に関してはほぼロブ兄様に任せても大丈夫な状態まで持って行く事が出来ている。

 アンジュル商会の精鋭もいるし、研究熱心な酪農関係者や農業関係者が品種改良に余念が無いからね。

 わたくしがする事と言えば新しい料理の提案とか、使用目的の提案ぐらいかな。

 うん、デュランバル辺境侯爵領はかなり発展してるよ。

 王都も発展しているから、『これだ!』っていう特産品があるわけじゃないけど、逆に自給自足も出来るデュランバル辺境侯爵領がないと立ちいかない部分もある。

 うふふ、安泰だわぁ。可愛い甥っこと生まれてくる子供に貧しい生活はさせないんだからね、おばちゃん頑張っちゃう!

 実質頑張るのはロブ兄様だけど!

 でもロブ兄様も次期領主として魔の森に様子を見に行ったり、ダンジョンに様子を見に行ったり、領地経営をする時間が増えたりと忙しくしているけど、ナティ姉様が妊娠している事もあって、お父様と同じ体力回復薬を飲んでいるそうな。

 やだ、うちの家系ってば怖い。

 お父様はわたくしがグレイ様に嫁入りするまでは現役を貫くけど、わたくしが嫁入りしたら引退したいとか言い始めて、「あ、あの二人の子供だ」とかちょっと思ったのは内緒。

 でも、ロブ兄様とナティ姉様の子育てがいち段落するまではなんだかんだで当主をしていると思うんだよね。

 だって、自分がお爺様にいきなり当主の座を譲られて苦労したから子供にはさせたくないって思ってそうだもん。

 お父様優しいもんなぁ。いや、お爺様が優しくないって言うわけじゃないのよ? かなり破天荒だと思ってるけど。

 海に面した領地に関しても、海産物の方は順調に利益を伸ばしていっている。

 各領や王都に伸びる陸路を国土開発大臣と一緒に話し合って整備したおかげで、今までより流通がしやすくなったっていうのもあるね。

 今まであまり食べられていなかった海産物っていうのは、目新しさもあって王都を中心に人気が出ている。

 刺身系の生食は受け入れられていないけどな!

 いいもん、わたくしが個人で楽しめればいいんだもん。

 すり身系も人気だけど、やっぱり揚げ物に合わせた物が人気だね。

 フィッシュバーガーは平民には大人気だ。というか、ジャンクフード系は平民はすぐさま受け入れてくれたよね。

 やっぱり貴族と違って気取って食べないからかなぁ?

 バーガー系を出しても、貴族だとナイフとフォークで食べるからね。

 いいんだけどさぁ、わたくしとしてはかぶりついて欲しいわけよ。

 海に面した領地ではその他にも真珠の養殖も徐々に形になってきている。

 小粒の物は早い時期に回収出来るし、安価で売れてドレスなんかの装飾にも良いという事で、人気商品だ。

 時間をかけて大きくなった真珠はお値段が張る分、貴族のステータスとして受け入れられている。

 ポイントとしては、既に加工した真珠の装飾品を売るのではなく、真珠その物を売って、加工は各自にお任せしているという所だろう。

 今までは加工済みの物ばかりだったから、デザイナーたちがこれに食いついたよね。

 わたくしも、いくつか真珠を使ったドレスや装飾品を作って宣伝しているし、リアン達にも協力してもらっている。

 子供が母親に話して、母親が興味を持ってくれれば需要が高まってウハウハってなぁ!

 実際問題、加工済みの真珠の装飾品がダサイっていうので倦厭されていた部分はあったみたい。

 真珠の需要が減っていたのはあのクソ家族のせいでもあったのね!

 ともあれ、海路に関してはまだ思案中ではあるけれども、領地自体は順調に成長しているし、そのおかげで領民も増えてきている。

 新しく領民になった人は必ず職業案内所(作った)に行って適正な職業を案内される事になっているし、元の領民と揉めるっていう事はほとんどない。

 まったくないわけじゃないんだけどね。

 古参と新参の争いっていうのは、どこの世界でも、どんな物にでもどうしても出ちゃうものなのよ。

 最小限の被害に食い止めるように動くのがわたくし達の役目だけどね。

 そんでもって、もう一つの鉱山の領地。

 問題はこれ。

 今年からいよいよ稼働する事になったんだけど、準備万端でさぁ採掘するぞぉって意気揚々と始めた途端に予想通りの事が起きた。

 そう、大当たりだ。


「ブルーダイヤにピンクダイヤ……」


 いや、ブルーダイヤというよりはプラチナブルーだろうか?

 どっちにしろいきなりこんな大物に当たって欲しくはなかった。

 せめてもの救いはそこまで大きな原石じゃないっていう所だね、どっちも研磨したら……うん、ブレスレットとかにすればいい感じの量かな。

 問題はどう考えてもこの色だよなぁ。

 グレイ様を連想するプラチナブルーのダイヤモンドとわたくしを連想するピンクダイヤ。

 聖王と魔王の影響って考えるのがしっくりくるわ。


「領主様、どうなさいますか?」

「それぞれブレスレットにしましょう。砕いて小さな粒にして、ごてごてした物にならないように、銀細工と合わせてあくまでも品よく仕上げてください。残った部分は、指輪の装飾として使いましょう」


 そう言ってわたくしはサラサラとイメージ図を描いて文官に渡す。

 あとはデザイナーと加工職人が上手い事やってくれると信じてる!


「なるほど、陛下と領主様のお揃いの品物という事ですね」

「っ! そ、うですね」


 べ、別にあえてそうしたわけじゃないし? たまたま採掘した原石がこれだっただけだし?


「コホン。それで、採掘の方はどうなっていますか?」

「現時点ではこの二つレベルの大当たりはありませんね。ただ、魔法士が魔石の反応があると報告をしていました」

「そうですか。土魔法によって地盤固めはしているとはいえ、採掘に事故はつきものです。あくまでも慎重に無理をしないようにと伝えてください」

「かしこまりました」

「それと、これを」

「……これは?」

「温泉です」

「おんせん?」

「魔法士によって支援されているとはいえ、採掘作業は重労働ですから、その疲れを癒す施設が必要だと思っているのです。王都に帰って来たわたくしの祖父母から聞いた話によると、遠い国では温泉があると聞きました。ぜひ我が国にも取り入れたいと思っています」

「どのような物なのですか?」

「大きなお風呂ですね。ただし、熱いお湯が地下から湧き出るのです。独特な臭いもしますが、とてもよい物なのですよ」


 ふふ、この国にはお風呂はあるけど温泉はない。

 なんで今までその存在を忘れていたのかしら? わたくしってばうっかりしていたわ。

 お爺様がポロっと温泉の話をしてくれて「忘れてた!」って思い出したのよ。

 温泉、いいわぁ、素晴らしいわぁ。


「この領地に源泉になる物があるのかどうかを魔法士によって観測して欲しいのです」

「井戸を掘るのと同じような感覚でしょうか?」

「水脈を探るという面では同じかもしれませんね」

「しかし、うーむ」


 文官さんが難しい顔をしたのでわたくしは首を傾げる。


「どうかしましたか?」

「いえ、大きなお風呂というのがどうにも想像できず。いや、私の想像力が乏しく申し訳ありません」

「あ、いえ。えっと、ちょっと待ってくださいね……」



 わたくしは白紙の紙に温泉を描こうとして日本風の温泉はこの国に合わないんじゃ? と思ってしまうが、岩作りの露天風呂ならありかと思って絵に描いて行く。

 まあ、わたくしに絵心はさしてないので微妙なものになったけどな!


「ふむ、この屋根? は雨避けですかな」

「そうですね」

「壁が無いようにお見受けしますね。あとこの屋根が無い部分は?」

「外の景色を楽しめるようにあえて壁と屋根を無くしています」

「景色、ということは逆に見られる可能性もあると?」

「そうなりますね」

「ふむ……却下ですね」

「なぜ!?」


 あっさり言われた言葉にショックを受けて思わず目を見開いてしまう。


「労働者とはいえ互いの裸を見せ合うのもどうかと思いますが、関係ない者から見られる可能性があるとなれば、倫理的にありえません」

「うぐっ。そ、そこは垣根を作るとか、高い位置に設置して下からは見えないようにするとか」

「仮に、領主様のおっしゃるようにしたとしても、利用者がいるかどうか」

「わたくしが利用します」

「却下です」

「なぜ!」

「メイドに肌を見せるのならともかく、陛下以外に領主様の肌を見せたとあっては見た者の首が飛びます。物理的に」

「男女に分ければいいんじゃ?」

「ふむ……いえ、やはり難しいでしょう。陛下が領主様の肌を安易に他人に見せるとは思えません。まあ、労働者のみが使用するという前提でなら話は進めますが」

「うぅ……。とりあえずはそれでいいです」


 実績、実績さえつめば王都でも温泉が作れるかもしれないし?

 最悪アイテムボックスに温泉のお湯を突っ込んで運べばいいだけだし?(血涙)


「では、まずはその源泉なる物の調査ですね。水脈調査は魔法士を使っても難しい物がありますので、数年がかりになる可能性があります」

「……どっかに都合よく温泉が湧いているといいのですが」


 わたくしの呟きに、文官さんはしばらく考えて「そういえば」と口を開いた。


「区画整備をしている時に、動物が浸かっている温かい湖があると報告があったような」

「それです! どこですか? 視察に行きましょう! そうしましょう!」


 そして温泉に入るのだ!


「先に武官に見に行かせ、安全が確保出来たら『視察』として行く事は認めますが、くれぐれも動物に交じって『入る』なんて言わないでくださいね」

「うっ」

「安全が確保出来、人体に影響もなく、施設もしっかりした建屋に出来ましたら領主様がお入りになる事も可能だと思います」

「あぅぅぅ」

「まあ、少なくとも今年の長期休暇中は無理ですね。魔物ではないとはいえ、動物が出入りしているとなればその温泉なる物の位置を変えるか、お湯を別の場所に引く事が出来るようにしなければいけませんし、そのための土地も確保しなければいけませんので」

「わたくしの部下が優秀過ぎて辛いです」

「お褒めいただきありがたく思います」


 わたくしの温泉~~~っ。

 でも、温泉が完成したら労働者への癒しだけじゃなくて規模によっては観光名所にもなるよね?

 お土産にクズ宝石を買ってもらえれば無駄にならないし、いいんじゃない?

 よし、ちょっと頑張って計画を立てよう。

 わたくしの本来の目的の、わたくし自身が温泉に入るというのはちょっと無理かもしれないけど、領地の発展はやっぱり大切だよね。

 そして、温泉という物をこの国に広めれば、女の子同士でお風呂に入る事に抵抗が薄れ、リアン達とキャッキャウフフのお風呂遊びが出来る!

 やましくないよ! これは純然とした交流だから! より親しくなるためのコミュニケーションだから!

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― 新着の感想 ―
[一言] 無事に温泉に入れるのは何時のことやら…(笑)
[一言] 父君は何か目標があるのですかね。茶飲み友達募集で満足するほど枯れて無いでしょうし、奥方に操をたてて頑張っていた分簡単に信念を曲げて後妻を貰う事は無いでしょうから、息子も妻似の娘も手を離れると…
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