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ブレイク、ブレイク!

「ツェツィ、ずっと思っているのですがここ最近、よく大豆製品を食べていますよね。そんなに大豆が好きでしたか?」

「それを言えば、キャベツの千切りもですわ。揚げ物には必須と言いつつも、その三倍の量を食べていますもの」

「正直、その可愛らしい体のどこに吸い込まれているのか、妾は不思議でならぬ」


 女子会で言われた言葉に、わたくしは大豆とブロッコリーのツナマヨサラダを咀嚼して胸を張る。


「大豆製品には、女性ホルモンを増やす成分が含まれているのよ!」

「「「女性ホルモン」」」

「わたくし気が付いたの。皆よりも背が小っちゃくても、その分スタイルで勝負すればいいって! すでにクロエとリアンには負ける気しかしてないし、着やせするリーチェにも負ける気がするけど、今から頑張ればそこら辺の令嬢には勝てるようになると思うのよね! おっぱいマッサージも欠かしてないわ!」

「おっぱっ……」


 わたくしの言葉にクロエが顔を赤くして絶句する。


「さらには、王太后様の元で学んだマッサージ師が王都にもお店を構えてマッサージサロンも出来たわ! まさに万全の体勢よ!」

「ああ、あのマッサージサロンは良いものじゃな。メイドのするマッサージとはまた違って気持ちがよかった」

「どっちかって言うと整体に近いわね」

「以前言っていたものですね。舞台俳優が早速贔屓にしているようです。それまで個人でお抱えのマッサージ師は居たそうですが、やはり技術に差があったり料金に差がありましたから、より優れていて一律な料金はありがたいようですね」

「職にあぶれたマッサージ師は王太后様の所に弟子入りしに行ってるし、いい循環だわ」


 王太后様って社畜って言ってたからバリバリのOLだと思ってたんだけど、整体鍼灸師だったそうなのよね。

 意外だったわ。趣味で細々とした知識は手に入れていたそうだけど、どれもお婆ちゃんの知恵袋的な物なんだって。

 でも、結局の所、わたくしとは知識の分野が異なるからありがたいわ。

 骨格矯正を兼ねたブラジャーの開発にも携わっていたとかで、今自分で開発している夜用ブラはそれを参考にしているそうだ。

 転生してまで社畜になる気はないから、ゆっくり開発しているみたいだけど、身に付いた社畜根性ってなかなか抜けないものだよね。

 スローライフって言ってるけど、家事は基本的に自分でしているし、趣味とか言って家庭菜園しているし。


「足ツボや手のツボを押すというのも気持ちがよかったの」

「マッサージの施術前にやると効果が上がるんだよねぇ。第二の心臓とか言われるぐらいだし」

「メイド達がするマッサージも気持ちがいいですが、ツェツィの言うようにまた違った物をたまに受けるのはいいですね。気分転換にもなります」

「そうよね。って、クロエ~、そろそろ戻って来て~」

「……コホン。ツェツィ、淑女たるもの発言には気を付けないといけませんわよ」

「いや、わたくしだって言う相手は選んでるよ?」

「まったく」

「そういえば、アンジュル商会の方でドレスのデザインを変えようとしていると聞きましたけれど?」

「あぁ、今の正式なドレスって、年頃から一定の年齢の淑女のドレスってどうしても露出部分が多いじゃない? それを減らそうかなぁって」

「しかしながら、そういったドレスを着こなしてこそ、平民との差を出すというものじゃ」

「そうなんだけどねぇ、一歩間違えればそういうご職業のご婦人に見えそうで」

「一歩間違わなくてもそう見えた令嬢ならいらっしゃいますわね」

「あれはドレスのデザインに下心の悪意を感じるわ」

「調べたら、やはりそういうご職業のご婦人のドレスを専門に仕立てるお店でしたわ」

「やっぱりかぁ」


 娼婦を悪く言うわけじゃないけど、色気を出しつつ気品も保ち、貴族の淑女としての威厳を保つドレスと、あからさまに男性の情欲をそそるドレスは違うからなぁ。

 マフィンをぱくつきながら話していると、扉がノックされてメイドが対応すると、そのままそっとリアンに近づいて耳打ちをした。

 何かあったのかな? とは思いつつ、リアンが何か反応をするまでは知らないふりをして三人で話を続ける。


「練り香水もわたくし達の分と試作品が完成したし。試作品はアンジュル商会の店頭で早速並べてるわ」

「ポプリとどっちが人気が出そうですの?」

「平民でも簡単に手を出せるってなるとやっぱりポプリの方かな」

「練り香水は器の値段もそれなりにしますからね」

「うーん、結構いい陶磁器使っちゃったからなぁ」


 香りが逃げないようにってちゃんと蓋の出来る陶磁器にしたら、細工が難しくてお値段がね。

 調子に乗ってわたくし達の分には模様とかも拘っちゃったし。

 でも使い切って新しくその器をリサイクルするんだったら、今後は器の費用は掛からないし、初期投資と考えれば、まあ……。


「ポプリは一年ぐらいは香りが持続しますよね」

「うん、練り香水よりもほのかな香りにはなるけど、平民はそれでもおしゃれってなるよね。貴族向けの従来の香水って高いし」

「ツェツィ提案の新しい香水に関しては、今までよりも大分お値段が抑える事が出来るのではありませんこと?」

「物によるなぁ。そもそも、今までの香水の使い方がおかしいんだよ。一回に使う量がね」

「今では、そのように香水を使っているのは学院では一部の上級生のみですわね」

「大人の社交界ではまだまだ従来の物が主流ですよ」


 う~ん。オーデコロン、オードトワレ、オーデパルファム、パルフィムと前世でも香水に種類はあったけど、この国の主流の香水ってパルフィムなんだよね。

 しかも一度にめちゃくちゃ付けるからその分消費が激しい。

 消費が激しければ需要も高くなるわけで、原材料が高騰して香水その物の値段も上がると。

 今でこそ香水の値段は一部を除き安定しているとはいえ、過去はすごかったらしいからなぁ。

 香水が貴族の嗜みになったのはそれが原因だって歴史書にあったよね。ようは、平民には手の出せない高級な物を身に着ける貴族すごい! みたいな考えだってわけ。

 その結果が、白粉べったり厚化粧&香水臭くて夫が浮気をする原因の一端を担っていると。

 なんという悪循環!

 でも、アンジュル商会の商品のおかげで、平民でもお化粧に手を出したり、香物を持ったりするようになってきているんだよね。

 スキンケアを始めた結果なのかは知らないけど、ちらほらと従来の厚化粧じゃなくて、素材を生かした薄化粧を始める貴婦人も出てきたし。

 そういう人に限って社交界に強い影響を持つ貴婦人なんだけど、もしかして王太后様が裏で動いたりしてる?

 そこまで話している所で、リアンがメイドから用件を聞き終えてため息を吐き出した。


「何かありましたの?」

「愚弟がやらかしおったようじゃ」

「やらかしているのは今に始まった事ではありませんよね? 今度は何をしでかしたんですか?」

「ほれ、あのふざけたドレスを贈られた令嬢がいたじゃろう。あの者が妊娠したそうじゃ」

「「「はあ?」」」

「しかも何が悪いかといえば、その事を兄上よりもルシマード公爵が先に知って、その令嬢を無理やり堕胎させたそうなのじゃ」

「うっわ、最悪」

「と、思うであろう? しかしな、その令嬢の親が一度孕んだのだからまた子供を孕む事が出来る。愚弟の婚約者にして欲しいと騒いでるそうじゃ」

「普通、娘を弄ばれたと怒る所ではありませんか?」

「愚弟のお手付きと有名になった時点で、当時結ばれていた婚約は令嬢の有責により破棄になったそうじゃから、責任を取らせたいという所であろうな」

「避妊はしてなかったって言う事?」

「そうじゃな。今回の事を受けて、兄上が『実際には』何人の令嬢が同じ状態に陥っているか正式に調査をするそうじゃ」


 まあ、そりゃするよね。

 女好きであっちこっちの女に早々に子種ばらまいてるくせに避妊もしないとか、最悪過ぎて言葉も出ないわ。

 っていうか、それでいいのか攻略対象!

 はぁ、もうめちゃくちゃだなぁ。その令嬢と婚約をしてその令嬢が新しい悪役令嬢にとか?

 年上で、えっとあの人って男爵家だったよね? インパクトよっわぁ。


「陛下も苦労なさいますわね。婚約は結局なさいますの?」

「するわけが無かろう。あの愚弟は学院を卒業後しかるべき所に隔離予定なのじゃから」

「それって、ルーカス様とラッセル様も一緒ですよね?」

「『側近』じゃからな」


 三人纏めて隔離されるんだったら、逆ハールートじゃなくてもヒロインはその三人と一緒かぁ。

 貴重な光属性を隔離するんだし、グレイ様もいろいろ手を回しているだろうけど、どんな場所だろう。


「ジュンティル侯爵家では、ご令嬢が親類の家に養女に出されたそうですよ」

「そちらも順調に進んでいますのね」

「兄の不始末にせめて娘を巻き込みたくないっていう所なんだろうね」


 会ったことはないけど、リーチェ曰くまともな子らしいからなぁ。

 騎士団長だって可愛い娘だけでも救いたいと思うか。


「学院でも、あの三人は腫れ物扱いなのじゃが、それを特別だからと勘違いしている馬鹿じゃしな」

「未だに近づく馬鹿なご令嬢がいるのも悪いんじゃない?」

「社交辞令、お世辞、家の事情というのもあるでしょうが、王族とルシマード公爵家と縁続きになって甘い汁を吸いたいのだと思いますわ」

「だからって簡単に足を開くのはねぇ」

「んんっ、ツェツィ!」

「はいはい、お口にチャックしまーす」

「チャック? まあ、よく分かりませんけれども、一部の方のせいで学院の風紀が乱れるのはよくありませんわね」

「しかし、今までの事もあり、常識が欠片でも残っている令嬢は愚か者達から距離を取っているであろう? 常識が無い者に何を言っても無駄じゃぞ」

「そうですよ。自己防衛が出来る方は既にちゃんと適切な対応をしていますよ」


 うーん、乙女ゲームではメイジュル様の周りには取り巻きのような令嬢が居たけど、この状態だと質が変わるだけで乙女ゲームのスチルの状態と変わりはないのかな?

 そんでもって、ヒロインとの好感度が上がって行くたびにその取り巻きが減ったり、ヒロインが取り巻きから嫌がらせを受けたり、最終的に取り巻きよりヒロインを選んで、悪役令嬢を断罪。って、悪役令嬢になる婚約者がいないんだったわ。

 まぁ、わたくしの目的はリアン達の解放だし問題はないわね。世界の強制力だって、婚約者でもない相手には効かないでしょ。

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― 新着の感想 ―
[一言] すっかり乙女ゲームの中ってのを忘れそうですね!(笑) …シナリオ崩れ過ぎてて(笑)
[一言] たくましい親のようですが泥船に乗ろうとするのは先が見えてない証拠かな。散蒔いた種、仮にも王家の血を引く者になるのですから把握しないといけませんね。ヒロインの親や周りがしっかりヒロインに三バカ…
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