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第1話 魔物ランキング

 


「は〜〜い!! みんな元気に殺ってるか〜〜い?? それじゃあ、今日も魔物ランキング逝ってみよぅ!!」



 ここは魔物ギルドと呼ばれる施設。その部屋の片隅で赤ん坊を抱えながら、俺は半透明で出来た摩訶不思議な巨大スクリーンを眺めていた。


 今日も変わらず司会を務めるのは、悪魔と呼ばれる種族のリリィさん。


 ゆるふわな桃色のショートヘアの隙間からは、クルクルと伸びる巻き角が二本あり、美人と言うより可愛い系の幼い顔に反し、ナイスボディである彼女は魔物達の中では非常に人気が高い……らしい。


 スクリーン越しに映る彼女は活発的で、それに合わせブルンブルン動く双丘に、沢山のスライム達が飛び跳ねて反応しているところを見れば、あながち噂も間違いではなさそうだ。


 この世界は魔物達が住むソドムと呼ばれ、人間達の暮らす世界とは違うもう一つの世界。人々は魔界と呼び、恐れられる魔物達の住処だ。


 なんでそんなところにいるかと聞かれれば、それは俺もその仲間の一匹・・になっていたから、としか言えない。


「まずは日間人間討伐ランキング!! 第100位からまとめてドーーン!!」


 興奮気味に机を激しく叩きつける彼女は、毎度毎度説明するのが面倒なのかいつもまとめてドンと発表する。


 まぁ魔物達の中ではもはや日常の一部として組み込まれ、今更文句を言う者などはいないようだけど。


 この魔物ギルドと呼ばれる施設では、様々な仕事の斡旋、人間達から剥奪した物品の買い取りに加え、毎日同じ時間にこうしたランキングの発表も行われている。


 日間、週間、月間、年間とそれぞれの項目が有り、討伐数やダンジョンポイント数(通称DP)等の各項目がランキング付けされている訳だが、その中で最も注目されているのが総合DPランキングだ。



『総合DPポイント1億』



 それを達成した者は、ありとあらゆる望みが叶う。


 なんと、これは単なるお伽話などではなく、実際に到達した魔物が数える程度実在し、この世界に住む殆どの魔物達が目指す到達点の1つとなっている。


 耳を傾けながら視線を落とすと、ようやく指を吸い終わったのかご機嫌な様子が見て取れる。体勢を変え彼女を抱っこし直した後は、背中をポンポンと優しく叩く。


「ゲプッ」


「良い子だな。アビス」


 こうして暖かくて柔らかい背中を優しく撫でているだけで、今までの壮絶な苦労が報われる想いだ。


 そんな貴重なほっこりタイムを、周りの魔物共がギャアギャア騒いで邪魔をする。


「ーーは?? な、なんで!? え、あ……ゴホン!! すいません。DP日間ランキング98位に、まさかのFランクの魔物が入って来たぁ!! 名前は……えぇっとヘルさんであってるのかな?? と言うかなんでこんな魔物に名前があるの!? 何かの間違いじゃない?? え……時間押してるからさっさと次に行け?? ちょっと説明しなさいよ!! うん、うん……えぇ……システムの統計を疑う行為は、やばい事になるって何!? あ、あははは!! と、とても気にはなりますが、お給料カットなんてのは嫌なのでぇ……気を取り直して次に逝ってみよぅ!!」


 必要な事を聞き終え、船を漕ぎ出したアビスを見詰めスクリーンに映っていたDPを思い返す。


「こんなんじゃ全然足りない……」


 はぁ、と弱気になりそうな気持ちを吐き出し、頭を1つ振って今一度自分の成すべき事を脳裏に浮かべる。


 俺が人間・・だった時、全てを擲って渇望したもの。


 ヘルと呼ばれたこの体の持ち主だった者が、死ぬまで思い続けた夢。


 それら全てを叶える為に、俺は1億DPを稼ぐ。


 たとえこの世界が魔物達の世界であろうが、最低最弱と罵られる魔物になったとしてもだ。


 そうーー








 俺はゴブリンに転生した。

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