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14.二人は幸せに暮らしました。
昔昔、あるところ、海辺に小さな国がありました。
ある日、国の浜に、それは美しい男と、赤い髪の女が流れ着きました。
男は失われたはずの神秘の使い手でしたが、けしてそれにおごることはありませんでした。
彼の側に常に付き従う赤い髪の女は普通の人間でしたが、いつも歯を見せて笑っていて、彼女がいるとどこでも真昼の日が顔を出したように感じさせるのでした。
男は他の者には物静かでしたが、娘が相手の時だけは口うるさく、不機嫌で、ガミガミと小言を欠かしません。
けれど、男がただ一人気を許している相手だからこそあれこれ言うのだと、皆すぐにわかりました。
何より、当事者の娘が嬉しそうにニコニコしているものですから、邪魔をするような輩は馬に蹴られてしまえというものです。
彼らが仲睦まじい夫婦であることは、誰も疑いませんでした。
二人は寄り添って、大勢の人に感謝されながら、幸せに長く暮らしました。
めでたし、めでたし。