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「旧作」闊歩する禁忌  作者: ふぇるさん
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第53話 裏話 ミノタウロスくんとアイトワラスくん



「ユ……ユウト様、どうされましたか?」


おっと、長考しすぎたようだ。


連絡の取れない聖女のことよりも、今はエデン達のほうを優先して考えよう。


『ああごめん、考え事していたんだ。』


「そうでしたか。申し訳ありませんでした。」


『あっ、いや大丈夫。そこまで重要な事じゃ無いから。』


……とっても重要そうな事なんだが、それを言ってしまうとエデンが可哀想だ。


既に、他の皆はいつでも出発出来る準備が整っており、俺を待っている状態だった。


『ごめんごめん……じゃあ行こうか。』


「えっと、それで、彼らはどうしましょう……」


そこで昏睡している2匹の魔物

ミノタウロスとアイトワラス


エデンは、彼らの処遇について問いてるのだろう。


もちろん彼らは置いていく。(無慈悲)


まぁ、2人なら生き残れるだろ。


『残念だけど置いてくしかないね。2人を運んでいたらこっちが危ないから……』


「そうですね。わかりました。」


俺はアイトワラス。エデンはミノタウロスを。

それぞれ、別の物陰へ隠れるように寝かせた。


『うん、これでええやろ。』


アイトワラスの体は、発泡スチロールのように軽かった。


この軽さが、彼の力の秘密なのだろうか?


俺は、ステータスでゴリ押ししている様なものなのだが、彼らはこの死神の門横穴の下層を生き延びてきたという実績がある。


彼らの体について少しは学識を持った方が今後生き残る上でも良いだろう。


……それにしても軽いな。


鳥のように骨がスカスカなのか?

いや、でもそれだと、この防御力は何処から来るんだ?


もしかしてこの鱗なのか?


ベチンベチン


うん、この鱗で間違い無いみたいだ。


デコピンすると、鱗が上下に浮き沈みした。


かなり硬い鱗の下には、空間があるようだ。

恐らく、衝撃が直に体へ伝わらないようにするクッション的な役目なのだろう。


それにしても面白い形の鱗だなぁ……



ベリッ



あっ……(絶望)





「ユウトー……どうしたの?」






……深淵





『ナ……ナンデモナイヨー……』


「うん? そうなの?」


『ソウナノ……ほら、行こ』


「うん。準備は出来てるよ!」


OKOK

道のりは長い


道草食ってる暇はないぞ。








ーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーーーーーーー

  ーーーーーーーーーーーー







「クッ……」



……いつまで寝ていた?


貧血特有の目眩で、姿勢が崩れそうになる。


「そうだ。彼らは……」


覚醒を始めた脳が、気絶前の記憶を掘り起こしていく。

輪郭のぼやけた映像が、ぽつりぽつりとその頭角を覗かせた。


……黒色の小竜


「お礼……言えなかったな。」


ライズ鉱石も、燚草(ホフヌング)も中層には生えていない


文字通り1寸先は闇

何が潜んでいるのか、全くもって把握出来ない。



「フランメ」


少しMpを消費するが、仕方がない。

今は周囲の状況を把握するのが大切だ。


手元の炎で周囲を照らす


「なっ……!」


反応が遅れた。


数メートル先には、牛頭の魔物

ミノタウロスだ。


間に合うか? 


できるだけ距離を取り、魔法を唱える。

だが、ここは洞窟……残念ながら逃げ場はほとんど無い。


間に合ってくれ!!


ミノタウロスに殺意と呪文を向ける。




だが、向こうの反応は意外なものだった。



「おっと、待て待て。」


「んんん?」



大斧を床に置き、両手を広げこちらへ向けてきた。



「……お前、喋れたんだな。」


「まぁな。」


「突然襲い掛かるから、そこらの魔物と同じかと思ったぞ。」


「う……うぇへ。」


「んで、何の用だ?」


魔法の構築はほぼ終わっている。

ミノタウロスが変な動きをしても、すぐに反応できるのだ。


「あぁ、明かりが無くて困ってたんだ。あの光る石ころも何処かに落としたし……」


「うん。で、明かりはもうついたぞ。この後はどうするんだ? また俺のことを殺そうとするんじゃないだろうな。」


「そうカッカするなよ。落ち着け落ち着け……俺は、あいつらに着いていこうと思っている。」


「あいつら?」


「あれだ。俺らの怪我を治したお人好し共だ。」


「……んで、ついて行って何をするつもりだ?」


「どうもこうも……戦うしか選択肢は無いだろ?」


「はぁ!? なんだよそれ! それが命の恩人に対する態度かよ!? ……ってか、俺を襲ったのもそれが理由か?」


「そうだな。」


……呆れた。


死神の森と称されるこの樹海


そこに出口が繋がる洞窟となると、相対的に周囲の魔物も強くなるのは必然


頭のいい魔物は、できるだけ消耗を抑えようと他の魔物との戦闘をするのは控えているのだが……


どうやら彼は、話せるっちゃ話せるが、頭のいい魔物の定義には入らなかった様だ。


「なんだ? 俺じゃ物足りなかったのか!?」


「ええっと……自分激しいのが好きなんで……」


「はぁ!? なんだよその理由!」


「だって、お前遠くから魔法撃ってるだけじゃん……」


「いや、ちょっと待て。それで、なんであの小竜と戦うに至った!? どう見たって子供だろ!」


「……なんか強そうな雰囲気があったんだよな……もしかして、お前嫉妬してんのか?」


「はぁ!? な、なんでそうなんだよ!」


ダメだ……こいつと話していると、調子が狂う。


話していることは、どうにも理解し難いものばかりなのだが、妙に的を射ているのが頭に来る。


「周囲の地形も頭に入ったから、そろそろ行くわ……じゃあ」


「って、おい!! ……俺が居ないと、暗くて分からなくなるだろ。」


「いや、ここまでの道のりは覚えているから大丈夫」




こいつって、もしかして頭良いのか?

……どっちなのか、よく分からないな。



「待て、俺もついて行く」



こいつは野放しにしてはいけない。

あの小竜を守らなくては……






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