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「旧作」闊歩する禁忌  作者: ふぇるさん
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第49話 漁夫の利…なのか?

先日ブックマークして頂いた嬉しさのあまり、紅茶を頭からかぶってしまいました。


既に私の部屋は紅茶の匂いで充満しています。


私のベットは紅茶をこぼしてしまった所為で、美しい茶色に着色されています。


私がお家で飼っている猫ちゃんは、飼い初め真っ白だったのに対して、最近は生え変わったのか、灰色みがかかっています。


まるでいぶし銀の様でかっこいいですね。






肩から血が流れ出す。

だが、悠長に止血している暇も無いようだ。



熱によるタンパク質の凝固を利用した止血法

お手軽で素早い止血が可能だが、その代償に激しい痛みを伴う。



目の前のミノタウロスとの戦闘はかなりの接戦だ。

この傷口を治療した痛みで、隙が出来てしまうのは致命的


この程度の出血を止めるよりは先に相手の対処をした方がリスクが低いと考えたのだろう。


だが、そのように考えてから1時間


戦闘はまだ継続していた。

予断の許されないこの状況

彼の集中力やら精神力が削れていくのが分かった。


ミノタウロスは彼の予想よりも遥かに強かった。

ここまで生き残れたのも奇跡に近い程である。


致命傷レベルの魔法をいくら撃ち込んでも倒れないそのタフさ

その隆起した筋肉から繰り出される高火力な攻撃の数々……


既に彼、アイトワラスの心は折れかけていた。


突破口は無い……と思われていたが、考えると意外とあるもんだ。


彼は最終手段に移った。


超高火力、広範囲の炎属性魔法を唱え始める。


このような屋外で使う魔法を屋内で用いると、威力が倍増する代わりに自信にも魔法のダメージが返って来る恐れがある。


だが彼自身、熱耐性をある程度所持しているのか、そこら辺は大丈夫なようであった。


ミノタウロスの攻撃を紙一重でかわしながら呪文を唱える。

ギャンブルに近いもを感じるが、それは仕方のない事なのかもしれない。




そもそも、戦闘を始めた時点でギャンブルは始まっているのだから。






「ーーーニーダー・ブレンネン!!」


『フェルス』



彼の魔法が唱え終わるのと同時に何処からか、カタコトな発音の呪文が発せられる。


だが、その発動した本人を確認することは出来なかった。


既に火の手が周囲を囲ってしまい、視界が通らなくなってしまったのだ。






ーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーーーーーーー

  ーーーーーーーーーーーー





『あ……危ねぇ……』


両サイドにいたエデンとカミラを抱き寄せ、土属性魔法『フェルス』で周囲を何重にも囲った。


外と強固な壁で隔絶された空間にも関わらず、かなりの熱が伝わって来た。


まるでサウナのようだ。


『霜ォ!』


二度と扱うことの無いと思われていた魔法『霜』だが、こんな時に使えるとは思わなかった。


霜が降りた瞬時に溶け、その下からまた霜が伸び……


一件意味の無いような繰り返しの工程だが、着実に周囲の温度を下げているようだ。



『アイス・ツァプフェン』



高速で打ち出された氷柱は土壁を突き破り、指1本通るぐらいの穴を開けた。

流石はあの緑色の竜の体表を貫いただけはある。



様子を見るに、外の熱はすぐに引いたようだ。

あれほどの高火力の魔法だ。

すぐに魔力が尽きて倒れてしまったのだろう。



「うう……ユウト……暑苦しぃ……」


「キュゥ……」


「誰ですか!?ユウト様……ではありませんね……初めて聞く声です……」


「あっ、どうもヴァイスです。よろしくお願いします。」


「よ、よろしくお願いします。えっとそれで……」



むむむ



霜が融解・気化した所為で湿気が酷いことになっている。

それにかなりの高温だ。


ヴァイスやアビュが苦痛の声を出した。

おまけに、カミラと自己紹介まで始めている。


もう外の安全は確保した。

これ以上暇な時間を過ごさせるのも酷だ。


早くこの壁を取っ払おう。



『クレイ』



粒子間の結合力が失われ、土壁は呆気なく崩れる。


うわっ、ペッ!! 口の中に土が入った!!



不幸中の幸いか、目には土が入らなかった。


心配だったミノタウロスとアイトワラスの様子を伺う。

ここで倒れていなかったら不味かったからな。


もちろんと言うべきか、2匹……2人か?


……2人は、あの大技の影響で倒れていた。



火傷で瀕死状態のミノタウロスと、魔力切れ(プラス)出血多量で倒れているアイトワラスを引っ張って1箇所に集める。


「ユウト様……彼らをどうするおつもりで?」


周囲の安全を確保し、青色の鉱石を再び取り出したエデンがそう尋ねてきた。


もちろんこうするのじゃ



『回復』



白乳色の光が2人を癒す。


ミノタウロスは全身の火傷を

アイトワラスは出血箇所を


『ごめん、エデン包帯持ってない?』


「ま、まさか彼らを助けると言うのですか!?……なんと慈悲深い……」


跪き、お祈りを俺に捧げているエデンから包帯を受け取る。


「ユウト、この人たちを助けるならGreat recoveryの方がいいんじゃない?」


疑問に思ったのだろう。

ヴァイスちゃんがそう耳打ちで聞いてきた


そうなんだけど、Greatrecoveryで完全に治療してしまったらアウトなのだ。


『ほら、完全回復して暴れられると厄介だからね。』


ヴァイスちゃんにはそう答えた。


だが、実際は違う。


腹黒な考えかもしれないが、致命傷を回避できる程度の治療を施し、それ以上はしない。

それにより彼らに恩を売るのだ。


……ほら、形に残った方がいいでしょ?


『エデン、包帯の在庫はまだある?』


「はい、まだ30巻程あります。」


そう言って彼は肩に下げたバックを開ける。


『え゛っ゛っ゛!?』


想像以上の準備の良さに驚いてしまった。






ーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーーーーーーー

  ーーーーーーーーーーーー







朦朧とする意識の中で彼を見た。



魔力不足特有の一時的な意識障害が迫り来る。私は必死に意識を繋ぎ止め、彼の容姿を記憶する。



くそっ!!ピントが合わない!!



目の前の人物……魔物なのか、はたまた亜人なのか


壁にもたれかかった私と同じ大きさなのだ。まだ産まれて数年程度の幼子だろう。


彼は包帯で私を介抱しているようだ。

慣れていないのか、まだ荒さが見られる。


だがその温もりは、既に死別した母親を彷彿させるものがあった。



……暖かい



もう少しこのぬるま湯に浸かることにしよう。







私は意識を手放した。






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