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「旧作」闊歩する禁忌  作者: ふぇるさん
49/58

第45話 黒髪の女性







真っ白な地面


真っ白な空


真っ白な俺……

あ、いや……俺真っ黒だったわ。(心が)






懐かしみが溢れる。


懐かしいなぁ……俺が転生する時も、こんな所に転移させられたっけ……



……ん?

ってことは俺死んじゃった感じ?



だが、肝心の出入り口が無い


本来なら、冥界への門と平行世界への門があるはず……


周囲を見渡す。

あれれ?


体は人間の姿ではなく、魔物のままだった。

その異様に黒い甲殻は、周囲の白色と相まって異物感が醸し出されていた。



よく見ると足元は、お墓に敷いてあるような真っ白な石ころで埋め尽くされていた。


ここで違和感に気がついた。


()()()()()()()()()()()()()()()()()?()


不安がつのる。




『誰かいませんかーーーー?』




返事が帰って来るわけも無いのにこう叫んでしまう。


一種の不可抗力のような物なのだろうか?


もちろん帰って来たのは静寂のみ




口頭が無理ならテレパシーじゃ。


頑張ってアナウンサーさんに連絡を取ってみることにする。


おーい!!アナウンサーやーい!!






ーーーーーーーーーーーーーー






大雑把な状況を伝え、電話を切る。


何故かうちの社内電話は旧式の黒電話で、繋げるのに時間がかかる。


いちいちヘッドホンを外すのは面倒なので、早くヘッドホンのマイクでも通話ができるようにして欲しいものだ。


ついでに仮眠室にも繋いでおこうかと考えたが、睡眠の邪魔をしたら流石に可哀想なので、止めておくことにした。




ーーガチャ


扉の隙間から、外の熱気が吹き込むのが分かる。



「すまない、待たせたな。」



モニター室に入ってきたのは真っ黒な礼服に身を包んだ社長だった。

……え?社長!?



「んぼはっ!!」


「んうぉあ!!大丈夫か!?」


不味い……思わず吹き出してしまった。


今回のトラブルは平行世界について詳しい人が来るのは分かっていたが、まさか社長が来るとは思わなかった。


そういえば社長って元研究者だったよな……


「お……お見苦しいところをお見せして申し訳ありませんでした。」


「あ……あぁ……それで今どんな状況だ?」


「それが……こんな状態で……」


目の前のモニターを指差す。

真っ白な空間の中央に、ぽつんと1人寂しく佇む北上優斗の姿が映っていた。


「恐らく接続域のどこかだと思うのですが……」


それを聞いた彼女は、モニターを凝視し始めた。

これがプロの風格なのだろうか、その真剣な表情は、優れた技能と豊富な知識を持っていることを示していた。


殆ど素人の私には分からない事を知っているのだろう。





「なるほどわからん」







………おっ?







ーーそう言い放った彼女は、ポケットから手乗りサイズの端末を取り出した。


「ここは接続域じゃない。ほら、これを見てくれ。」


端末の画面には、よく分からない記号と言語がびっしり並んでいた。


なるほどわからん


「これは……どういう意味でしょうか……」


「あぁ、ここの単語だ。これは、平行世界『シュヴェルト』に北上の魂が存在していることを示している。

この端末はそこのモニターのカメラと連動していて常に位置情報を送ってくれるんだ。

……現在じゃ通信阻害の所為で詳しいことは殆どわからんけどな。」


……シュヴェルトってなんだ?


ま……まぁ、社長の説明から、まだ北上優斗がその平行世界に存在することはわかったな。



「それで、今後どうしましょうか……」


「やっぱり連絡しなければならない……繋げられるか?」


「はい、やってみます。」


ヘッドホンを装着し、卓上の機器を弄る。





ーーーーーーーーーーーーーー





ゔゔ↓ゑ↑ゑぇえゑえん゛ん゛ん゛ん゛ん゛

アナウンサーさあああぁぁぁあん!!


『は!はい!お待たせして申し訳ありません!!』


なかなか対応が来なかった。

圏外なのだろうと高を括って、暇つぶしに念力で発声練習をしていると返信が帰ってきてしまった。


……泣いてなんかいないぞ?

高校生になって泣きべそかきながら弱音を吐くなんて恥ずかしいったらありゃしない。(ブーメラン)


声が違うので、先程の超無礼アナウンサーとは別人だろう。


恐らくだが、人員交代で対応が出来なかったと思われる。



『あー……周囲の状況を報告して頂いてもよろしいでしょうか……』




おっと、そうだった……現在は、頼れる宛が、アナウンサーさん達しかいない。


周囲をもう一度見渡して詳細を掴む。



えっと……見渡す限り、俺が初めに転送されて来た所に似てますかね……ただ人工的じゃないっていうか……出入口は無いし、地面も真っ白な礫の集まりって感じで……後は何もないですね。


それを聞いたアナウンサーは、他の人と話しているようだ。多分だが、こういうのに詳しい人と話しているのだろう。


このイミフな空間から脱出できるかは、彼女達にかかっている。



おや?




周囲を見渡して気づいたのだが、何やら人影が見える。


髪が長いので、恐らく女性だろう。


意外と結構近い場所にいた。


黒髪なので、この景色によって、映えると思うんだけど……



アナウンサーさーん


『あっ、はい。どしましたか?』


黒髪の女の人がいる……ほら、そこ。

話しかけようと思うんだけど大丈夫だよね?


『はい、気をつけてください。恐らく彼女が、あなたをここに連れてきた真犯人の可能性がありますから。』








ーー歩を進める。


近づくと分かるのだが、視線が俺に向いている。


周囲の景色や、伸びに伸びた黒髪のせいでむっちゃ怖い。




……結構近くまで来たぞ?


彼女は、真剣な眼差しでこちらを見つめている。

どうやら彼女は、俺を見定めしているようだ。










エリス視点




社内電話の黒電話が、小気味良い音を鳴らす


「もしもし、どちら様ですか?」


受話器越しの、少しばかりノイズの入った声が返答する。


「あっ、もしもし母さん…俺だよ俺。」


「もしかして優斗君?」


「そうそう、実は会社でトラブルがあって、今働いている会社が倒産しそうなんだよ……それで賠償金を払えって……」


「それは大変だったわね……大体500万ぐらいあれば足りるかしら?」


「うん……そのぐらいあれば十分だよ。ありがとう母さん。」


「じゃあ会社に直接払いに行ってくるわね。」


「えっちょ…」(チン)


「……あれ?これ社内電話だよな?」



彼女はの額から冷や汗が流れ落ちた。



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