第42話 過貫通
投稿ペースが落ちてしまい申し訳ないです。
最近スランプに陥ってしまって、内容が渋滞してしまいました…
できるだけ早めの投稿を心がけようと思いますのですが、これからもよろしくお願いします。m(_ _)m
…結構余裕あるんだな。
今俺は、俺だった物の中にいる。
アビュの変形を見てインスピレーションを受けたのだ。
この場を何とかやりくりする方法…
俺は先程『変形』を用いて1つ進化前の『ストラーフ』に変化したのだ。
脱ぎ捨てられた抜け殻は、意外と柔らかく、あっさりと刃が入った。
実を言うと、あのどす黒い剣……俺の体は危険と判断しなかったようで、『タキサイア』は発動しなかった。
あのまま俺が、あの剣を受けていたらどうなっていたのだろうか?
答えは簡単だ。
あの魔法じゃ俺には傷一つ付けられない。
俺は変形を用いて、現在”死んだふり”をしている。
なぜなら、あそこで戦闘が起きたら他の患者が危険に晒されてしまうからだ。
あー…早くエデン来ないかなー…
剣は、普通の剣に魔力を這わせたもののようで、効果時間が経過したのか既にどす黒い靄は消えかけており、金属の反射で退化した自分の姿が写っているのが分かる。
この剣どこから取り出したのだろうか?
ーー「〜〜〜!!!!」
外から怒号が聞こえる。
俺だった抜け殻に遮られ、細かい話は聞こえないが、恐らくこの声はエデンだろう。
あれ?エデン怒ってる?
何となく理由は察せるが…
外が騒がしくなってきた。
恐らく、患者の人達が目を覚まし始めたのだろう。
アビュの時と違い、患者の人達は出血をできるだけ抑えるような処置が為されていた。
回復が速いのも納得出来る。
現在、俺の抜け殻の外では、体格のいい男の人が、エデンに説明をしている
ちょっとだけ抜け殻の皮を破って外を確認する。
ベットを挟んだ先にエデンと、体格のいい男の人がいた。
あの治療班みたいな人達はエデンからの話を聞いたようで、重い表情をしている。
患者の人達は、彼らの会話を聞いて俺の状態を伺っている。
外から見りゃ頭に剣をぶっ刺した死体に見えるだろう。
『こりゃやっちまったな』
みたいな表情を浮かべているのが分かる。
そろそろかなぁ…
もう一度『変形』をする準備をする。
もちろんだが、『変形』は進化前の姿に変形するできるし、進化前の姿から元の姿に戻ることも出来る。
この姿のまま復活するのもいいが、トラブルになってしまったら目も当てられない。元の姿で再登場した方が良いだろう。
『変形』を発動する。
今度は大きくなるので、抜け殻が残る訳もなく、元の体を脱皮するかのようにしてエイビスの体が出てきた。
この剣邪魔だな…
大きくなる過程で、頭部分を貫通した剣が邪魔になる。
1番初めに変形した時残ったエイビスの腕部分に腕を通す。
「お…おい、みんな…あれ…」
やっと気づいたか。
頑張って抜け殻の肩部分から腕を通そうと、もがいているのが目に入ったのだろう。
頭を剣で貫かれ、死んだはずの遺体が、さも生きているかのように不自然な動きをしている…明らかにホラー映画のゾンビです…はい。
「嘘だろ!?」
「もしかして…生きてる?」
「いや、アンデット化した可能性がある!皆、離れた方がいい!!」
外ではたくさんの足音が鳴るのが分かる。
アンデット化かぁ…やっぱりこの世界にもゾンビとかいるんかなぁ…
ゆっくりとした手つきで剣を抜きながら、『変形』のプロセスを進めていく。
マト〇リックスの逆再生のようなポーズで立ち上がる。
『アンデット化した化け物』と捉えられた場合は、ちゃんと意思疎通出来ることを表明し、誤解をとこうと思う。
すると、俺の事を『いくら剣で突き刺しても死なない化け物』と捉えるであろう。
まぁ、実際それでいいのかもしれない。
立ち向かっても歯が立たない相手として、彼らは捉えるはずだ…するとどうだろう。
…この集落での俺の立場は、うなぎ登りだ。
相手から襲われる心配も無くなるし、この集落での優遇も期待できる。
そもそもこの集落を感染症から救ったんだ。それくらいは期待してもいいはず。
剣を抜き終わるのと、立ち上がるのは同時であった。
変形しても、完全に体型が変わる訳ではないようだ。
抜け殻がパツパツで苦しい。
外の会話が完全に停止する。
緊張で空気が張り詰めているのが分かる。
皆を警戒させたままにしておくのもなんなので、安心させてあげることにする。
『待て待て、俺は死んでないし、アンデットでもないぞ。』
口元の殻を破りながらそう言う。
「な…!!」
『なんだよ生きてちゃ悪いかよ。』
「い、いえ!違います!お気を悪くさせてしまいましたら、申し訳ありませんでした!」
頭が地面に着くほど深く土下座して来た…やりすぎた?
「今回、皆を治療して頂いたのにもかかわらず、襲ってしまい誠に申し訳ありませんでした。これは私の責任です…貴方様の望むことなら何でも致しますので、どうか…どうか皆の命は…」
…やりすぎたな!!
『ちょぉ…待って…救っておきながら殺すなんて真似はしないぞ…何でそんなことしないとあかんのよ…そもそも今回の事は、なんも言わず勝手に治療し始めた俺の所為でもあるし、君だけが悪い訳じゃないよ。』
「で…ですが…」
なんかぐだぐだしそうなので、2人を呼んで話を逸らすことにする。
『ヴァイス、アビュおいで。』
「キュ!」
「……ユウト…何があったのか、後でちゃんと説明してよね?」
『おう。』
いつの間に、ヴァイスは起きたのか、困惑した表情でこちらへやって来た。
この後どうしようかなぁ…




