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「旧作」闊歩する禁忌  作者: ふぇるさん
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第33話 全身がトカゲの尻尾の様なもの




半径10mの敵が吹っ飛んだ。



全体の魔力の3割で、これとは寂しくないか?



いいや、まだこの魔法は終わっていない。


遠距離用のがまだ発射されていないのだ。





アビィが前進すると同時に遠距離専用の魔法も放たれた。



数十個、数百個の魔力塊が、大蟻の大軍を襲い掛かる。



弧を描く弾道は、隙の多い頭上から、爆風やら熱線やらを撒き散らしながら破裂する


敵にダメージを与えることだけを重視した攻撃。

重装甲の敵にはほとんど効かないであろう。

だが、トイレットペーパー装甲のアリさんには効果は抜群だろう。

(vit値約2000~3000…鉄板にすると大体2cmから3cm程の厚さ…新事実!!!!北上は3cm鉄板でケツを拭いていた!!これはスクープだ!!)







ーー進むべき道は開けた。







前に居座るのは、死骸と、辛うじて生き残った蟻



勿論蟻たちもタダで俺たちを通してくれる訳では無い。


周囲の無事な蟻共が仲間の屍を踏み潰し、道を埋める。



もう一度、近距離用の爆発を起こす。

まだ、俺の”3割”は尽きていないようだ。


予定では、『プラッツェン』と『ツェアシュラーゲン』で突破するつもりだったのだが、この軍隊を見ていると、術を分ける暇がほとんどないということが分かった。


『プラッツェン』と『ツェアシュラーゲン』で分けて発動させると、2回分術を唱えるのに時間がかかってしまうのだ。それなら、ひとつの遠距離と近距離両用の魔法を1回の術で同時展開した方が速いだろう…と。



もう一度、爆発属性遠距離魔法の『シュプレンゲン』が発動される。


こちらを噛み殺さんと飛びかかる蟻共を、爆風でバラバラにする。



この魔法に変換した魔力は、まだたっぷりとある。




爆発の展開が追いつかなくて、度々蟻の攻撃がこちらに来ることがある。

アビィの重装甲のお陰で、弾くことが出来ているが、張り付かれると厄介だ。動きの阻害になる。


張り付かれたら、その都度爆発を起こして剥がしているのだが、たまにそれが追いつかなくなることがある。


もっと同時展開したい所ではあるが、如何せん、並行思考のレベルが足りない。これ以上魔法を展開すると、試験に出てくるような数学の難題を解いている気分になる。これ以上の展開は難しそうだ。


実を言うと今の展開数でもかなりギリギリなのだ。

たまに、並行思考同士が混乱してしまいそうになる。魔法を使う前より、かなり思考が曇っているのだ。




蟻は噛みつきだけで遠距離攻撃がない。それが幸いした。


どっかの防衛軍みたいに酸とか投げられたらかなり不味かった。


この爆発で、道を開くのと、酸から身を守る

その2つを同時にこなさなくてはならなかったからだ。



そんな関係ないことを考える暇もなく、ただ爆発を起こし、道を開く。


かなり先なのだが、地面が見えてきた。




…が、ここでトラブルが。










ーー「ッッ!!」



『大丈夫かアビィ!』




彼女の後ろ足の関節部が噛み切られたのだ。


直ぐに足に張り付いていた蟻は剥がしたのだが、怪我が酷い。ギリギリくっついている感じだ。





『Great recovery』






凄い回復 様々だ。

迅速に筋繊維やら皮膚やらを接続する。


だが、回復に1つ分思考を割いてしまったせいか。

大蟻の包囲網が、すぐそこまで縮まって来ていた。



アビィはまだ倒れたままだ。




くそっ




アビィの首元の甲殻の隙間…集まって来た大蟻に噛まれそうになっていた。

死んでしまったら流石の俺でも治せそうにない。


全力で走り込む。

近距離用の魔法は現在、撃ち終わった後の硬直時間の真っ只中だ。

噛みつかれるまでに魔法の発動は難しい…このまま力を入れられると首と体がおさらばしてしまう。押したり引っ張ったりなんてしたら目も当てられないような結果になりかねない。











…この手しかないか。




左腕を蟻の顎と首の間に滑らせる。


俺のvit値と蟻のstr値の差は約10倍

だが、このまま噛みつきをキャンセル、もしくは、ずらすこと位はできるだろう

最終的には俺の腕が吹き飛ぶ未来しか見えないがな。



だが、考えて欲しい。


人命と…いや…竜命だな。



…けほん…失礼。

竜命と腕一本どっちが大切か?そう聞かれたらあなたはどちらを選びますか?





もちろん竜命だよな?(異論は認めぬ)








全力で、奥歯を噛み締める。






『~~~~ッ………ん?』



腕をちょんぎられるのは2回目…なんだが、なんか違和感しかない。


あっ…そう言えば痛みが全然感じない…


…あれ?



そんなことを考えながらも並行思考はちゃんとお仕事をしてくれたみたいだ。


遠距離用の魔法を用意していた思考も全て総動員して、近接に回した。


クールタイムが終わったようだ。


周囲を爆風が包む






『アビィ…行けるか?』


「ク…クェェェェェ…」

こくこくこく


めっちゃ顔を縦に振っている。




アビィが立ち直り、俺の並行思考も先程の作戦通りに編成し直す。


「ユウト!腕が」


『それのことはまた後だ。今はここから脱出するのを目標にしてくれ。』


「ク…キュッ!」


『大丈夫だ。多分生えてくるから!』


「多分…」



…多分は要らなかったな。すまね2人とも。



噛みちぎられた腕なのだが、爆風で、どっか吹っ飛んで行ってしまったようだ…悲しい…


元々このエイビスって種族は、血が流れていないのだろう。断面は、不思議な質感で、流血はしていないようだ。


もう一度近距離に爆風を吹かせる。



『行くぞ!!』



2人とも、気を取り直したようだ。

また、前進を始める。



左腕がないとバランスが取りにくい。



フラフラになりながらもアビィの背中にしがみつく。

俺の頭の上に乗っているヴァイスには申し訳ない。


酔ってなければいいんだが…







大軍を近距離の爆発により1度は押し返したが、現在は勢いがついてきたようだ。

逆に押されて来ている。









群れの外までの距離はあと十数メートルだ。




トカゲの尻尾の塊

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