第31話 気化爆弾
後ろの2人も第1波は無事、越えたみたいだ。
『2人とも大丈夫か?』
「うん。こんなにレベルが上がったの久しぶり。」
「キュッキュウゥン!」
アビィの言ってることはよく分かんないが、レベルが上がって喜んでいるのだろう。(適当)
俺は経験値50倍と経験値10倍があるから…
これって60倍になるの?それとも500倍?
後でアナウンサーさん辺りに聞いておこう。
ーータキサイアがうっすらと発動する。
俺の本能が危機を感じたのだろう。
『気をつけてくれ。第2波来るぞ!』
入口前に鎌を構える。
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私の好きなゲームが開かない…
どうやら公式の発表では、サーバーへの断続的な過剰接続が行われています…
現時点ではサーバーへの進入は防御しています…ということらしい。
ふぅん…運営さんやるじゃん。
断続的な過剰接続ねぇ…
波状攻撃
部隊ごとで、攻略する時間をずらすことにより、敵に休ませる暇を与えない。
上手く時間を調整すれば、味方はコンディションが完璧なのに対して相手は、ボロボロの疲労困憊な状態まで持ち込める。
そして、強弱の波を付ける事によって、継続的な攻撃をするよりも、瞬間火力が上回ることがある。
これらが成功するのは他の戦術でも言えるのだが、瞬間的な判断力や戦況を見極める力が必要である。
素人が作戦の指示を行った暁には一斉攻撃を仕掛けた方がマシな結果になるであろう。
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『フェルス』
壁の隙間を一時的に埋める。
…まずいな。
第10波の攻撃を受けた辺りから、こちら側に疲労が現れてきた。相手はかなり的確なタイミングで、部隊を送り付けてくる。
そしてついにアビィの甲殻が破られた。
これは破られたって言っていいのか?
正確には関節部を攻撃されたんだが…まぁこのくらいならね。治るから…
『Great recovery!!』
凄い回復…ただ英訳しただけだ。
まぁ、これで格好がつくだろう。
誰だよ、あんなくっそダサいネーミング付けたの。
今の時代は英語なんだよ!
ファイアーボールとかヒールとか…
これ…あんましかっこよくねぇな。
アビィの肩の出血が止まった。
彼女は腕をブンブン振り回してまだ戦えるアピールをしている。
いや、このまま戦っても、また関節部を噛まれるだけじゃないか?
なんでもいいから突破口を探さなくては。
そもそもあの大蟻が色々とおかしいのだ。
INt50-60でこんな判断が出来るのだろうか?
一気に攻めてくると想像していたのだが…
現在の戦況を見ていると、一気に攻めて来られても不味かったのかもしれない。
だが、こうも長時間に渡って攻められると、だるくなって来る。
恐らくだが、これはこの蟻個人で考えての行動ではないのだろう。
司令塔やらが指示している可能性がある。
口頭で作戦を伝えているとは考え難い。考えられるのは、女王蟻辺りが何らかの形で指示をしているということだろうか。
初めはこの包囲網を脱出することを第1に考えよう。
一度郊外にて体制を整えてから反撃をするような感じで…
蟻の数は種類によって変化していくが、大体で言うと、数万~数千程
地道につついて行けば、レベリングにもなってちょうどいい。
司令塔を潰せば、この大蟻達の統制も崩れる筈
そこを叩けば…
『…』
緑のドラゴンの死骸を見やる。
どこかの蟻駆除で、エサに毒を盛るってのがあったな。
…
毒は持ってないんだよなあ…
魔力を上手い具合に変形させる。
炎属性放出魔法のフェアブレンネンを…
『フェアブレンネ…』
…途中で止める。
うぇ…気持ちわりぃ…あの残尿感が全身を走っているみたいだ。むずかゆいのを我慢して、魔力をまとめていく。
『フェアブレン…うっ…』
やべぇ気持ち悪すぎる…
2回分の魔法が途中で止められた。
力の行き先を失い身体中を変質した魔力が巡るのを感じる。
その変質した魔力全てを右手に纏める。
ゾクゾクゾクゾク
『縺o豌玲戟縺。謔ェ蜷舌縺ヲ繧ゅ縺吶°!!!!!!』
「「!!?!?!」」
まずい!!右手が残尿になる!!(イミフ)
あまりにも気持ち悪すぎて変な声が出てしまった。
2人は心配そうにこちらを見てくる。
…早くこの細工を終わらせないと。
纏めた魔力を球状にして、緑色の竜の所に持っていく。
右手を竜の死骸に当てて、変質した魔力を送り込む。
竜の顔が歪むのが分かる。
ふふふ…気持ち悪いじゃろう?
あれ?生きてないよね?
死亡はちゃんと確認したはず。
…まぁいい。
これでドラゴン型気化爆弾の完成だ。
これを意図して魔力を通した瞬間、大量の変質した魔力が広がる…
そこを予め仕組んでおいた1つ目のフェアブレンネンで着火…
広範囲が燃焼するって仕組みだ。
逃げる時に役に立であろう。
あとは2人にこの作戦を…
『フェルス』で埋めた壁が、削られる音がする
早めにこの作戦会議を終わらせなくては。




