第30話 阿鼻叫喚
『どうしてこうなった。』
彼の前方にはどこまでも続く融解した道筋が1本
その周囲は扇状に熱せられて真っ赤になった岩石が広がっている。
中央の融解した道筋に立っていたものはほぼ全てが溶けていた。
巨大な蟻もそうだが、天井を支えていた石柱も、虫に食われたかのように溶けていた。
…あれ?これ放出系魔法だよね?威力の減衰ってどうなってんの?
地平線(?)まで真っ赤に染まっているんですが…
巨大な蟻達はこちらをじっと見ている。
ど…どうだ!!ビビったか!!
…鑑定
氏名--------
年齢 4歳
種族 ソルダートアント
性別 オス
ーステータスー
LV 63
HP 100253/100253
MP 4006/4006
STR 9852
VIT 2405
DEX 310
AGI 3507
INT 61
ー状態ー
『憤怒』
…
MP半分も使うんじゃなかった。(そこじゃない)
先程開けた道は、高熱で通れそうにない。
『フェルス』
3mほどの厚さの壁を天井に届くほどの高さで乱立させる。
…全方向から攻められると一瞬で終わるので、蟻の動きを制限するためだ。
緊張と静寂が3人を包む。
『済まない…失敗したみたいだ…』
「えっと…大丈夫!」
「キュッ!」コクコク
ヤバいやさしい…泣きそう。
(おい)
壁からあの大蟻が入れそうなのは2つのスキマ
『申し訳ないが、2人は後ろの通路を頼む。』
「任せて!」
「キュッ!」
実を言うと通路の製作で、既にMPが3分の1を切っているのだ。
実際ここで扱える魔法も制限されるので、mpが残っていたら魔法を使うのか?と聞かれたらなんとも言えないが…
これを使ってみたかったんだ。
『深淵』
切り裂かれた空間から、死神の大鎌を取り出す。
子供サイズの俺にはアンバランスだが、そこはstr値で何とかしよう。
足音がしない…だが、『タキサイア』がうっすらと発動している。
…2人には重荷だったか?
『タキサイア』の反応が濃くなる。
『来るぞ!』
目の前の通路からは顔を低く下げて俺を噛みつかんとする大蟻が。
この攻撃は簡単に対処出来そうだ。
鎌の刃の部分を蟻に向けて、しっかりと地面に固定する。
蟻の顎が鎌の先っぽのちょうど上を通過した時、
てこの原理を利用し、レバーを下げるようにして、鎌先を突き上げる。
『来た!』
金属が割れるような音と共に、鎌先が蟻の頭上に顔を出す。
蟻は絶命したようだ。
既に動かなくなっている。
動きの阻害になるので、死体は仕舞っておく。
先程の蟻の後ろの道から数匹程来ている。
ここは、流れるように処理をしなくては。
鎌を両手に持ち直し、右後ろに刃を持っていく。
抜刀のような姿勢をとる。
敵の攻撃が来る前に殺す…
次の大蟻が辿り着いたようだ。
奴は自分から見て、右側に逸れた。
右側は力を溜めるために鎌を後ろへ持って行ってる。
降り始めの部分なので、あまりカが入らない範囲だ。
この蟻…よく考えてる。降り始めの右側の方が安全と見たか。
だが、これも想定済みだ。
刃を斜め上に向ける。
ちょうど顔とむねを繋ぐ関節
そこに鎌を滑らせる。
関節は柔らかいのか、あっさりと刃が入った。
そもそも鎌は正面から打ち合いをするような武器ではない。
鎌は、相手の弱点…人で言うならば背中などに攻撃をさせる為のもの。鎌の刃の中に敵を入れる。そしたら鎌を引っ張れば、顔と体がオサラバするのだ。
蟻で言うならば、関節を切ったりするなど…この戦闘には大いに役に立つ武器なのだ。
ただし鎌には弱点がある。
鎌で攻撃をしようとすると、敵と自分との間の障害物が、無くなってしまうのだ。
要するに鎌は弱点特攻の、火力ガン振り武器…という訳だ。
まぁ…この弱点は、有り余ったstrと高めのagiで補助すれば問題無いだろう。
右側の蟻の顔がオサラバした。
この死体も収納しておこう。
体を、壁の隙間の方に向けようとしたらタキサイアが反応する。
既に、int値3万程まで来ると世界が止まって見える程だ。
目だけで周囲を見渡す。
ヴァイス達の方向
ちょうど俺の真後ろ方向
現在俺は顔が左側を向いている状態 首を動かすとロスタイムになるので目だけ動かす。
おっ?結構善戦している感じ?
アビィは、甲殻を噛み砕けず、苦戦している蟻を押さえつける。その蟻の関節部分に、ヴァイスの魔法が炸裂する。
あの感染症の時以来、アビィのステータスは確認していなかったが、その時もかなり高かった彼女の持ち前の防御力が輝いているようだ。
蟻の噛みつきも殆ど傷がつかない。
そしてヴァイス
彼女は、円錐状の突き特化の光のランスを数本発現させてはぶん投げている様子だ。
意外と精密で、ほとんどが弱点の関節を狙っているようだ。
…こっちは大丈夫だな。
今度は入口側に目を向ける。
1匹の蟻が、顎を大きく開けてこちらへ向かってきている。
距離はそこまで近くない。
この距離なら、そこまでタキサイアは発動しないはず。
後ろか!!
先程の蟻を切り裂いた鎌を、そのまま、勢いを殺さず上へ振り上げる。
スピードはそのままで、体制や鎌の持ち手を変える。
首が後ろを向くと、そこにはギリギリの距離まで近づいた蟻が
高く上げた鎌の位置エネルギーと、先程までの運動エネルギーを乗せて、思いっきり振り下ろす。
ハンマーの要領で、下ろされた鎌は、蟻の胸を貫通した。
そのまま、流れるように切り裂き、右へ、鎌を振り抜く。
入口側にいた蟻の頬を貫き、『フェルス』で発生させた壁に突き刺さる。
後続の蟻は、まだ来ていないようだ。
こちらの第1波は突破した。
これはまだ先程の集団の、ほんのひと握りだろう。
鎌を壁から引き抜き、次の戦闘に備える。
Mpは結構回復しているようだ。
あの短時間で3分の1の値から半分まで回復したこの魔力に、恐ろしささえ感じる。
…そう言えば、この魔力ってどこから来たんだ?
( ̄q ̄)zzz




