第19話 見よ。これが我が必殺『凄い回復』!!
凄いんだぞ!回復は正義だ!
ヴァイスは生前の思い出を掘り返していた。
『パパ、なんで私は土属性を使えないの?』
『魔法にはね、相反し、対となる属性があるんだ。』
『炎は水、風は土、光は闇…というようにこれらの属性の魔法は相反していて、もしもこのふたつの組み合わせを持っていても、体の中で相殺されて発動しないんだ。』
『ふーん…つまんないの』
『でもヴァイスは凄いんだぞ!光と風の属性を持っている。他の人は普通、魔法は1つしか適性が無いもんなんだぞ!』
『…土魔法使いたかったな。』
相反する2つの属性。
爆裂(炎)魔法と水魔法。
なぜ彼は魔法を発現できるのであろうか。
もしかして本当に魔神さまの…(略)
彼女の誤解がまたもや進んでしまったようだ。
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーー
「ね…ねぇユウト…ユウトって今何の魔法の適性があるの?」
『炎水風土光闇』
「えぇ……なんで相対する魔法が使えるの…」
『相対って?』
「炎と水、風と土、光と闇の組み合わせはありえないんだよ。」
『えっ…………』
俺…思うんだ。
なんで異世界の人達は、炎と水両方が使えないって決めてんだろうな。
例え話だが例をあげよう
よくあるのが油火災
天ぷらを焼いてたフライパンに火が!
こうなったらあなたはどうしますか?
ここで水をぶち込む。と答えた貴方そう。そこの貴方。
異世界転生…もしくは大火傷をしていたでしょうね。
実は油火災に水は効果がないんですよ。
まぁ、詳しくは調べてね。
…というより土と風が相反していて使えないって無理やりすぎんだろ。
土魔法とか石礫飛ばしてるやん!あれ風魔法じゃないの!?
…まぁ魔法の話は後にしとこう。
今は進化だ。
ここの峡谷に落ちてた糞
鑑定で出てきた”アデュリオドラゴン”
性格は温厚らしいが、万が一のこともある。
目立たないところで進化したい。
今の俺の大きさは500mlペットボトル程
隠れる場所は沢山あるだろう。
おっ?こことか良さげじゃないか?
成人男性1人が入れる程度の洞穴。
これなら進化して、体が大きくなっても問題なさそうだ。
ここのアデュリオクリスタルは他の鉱物を含んでいるのか、灰色に濁っていた。
これなら外からも見えない。
よし、ここにしよう。
なぜここで洞穴の中を確認しなかったのか、
後悔しても時すでに遅し。
洞穴の奥には、大人二、三人分の大きさの見た目トカゲ…ドラゴンか?が横たえていた。
寝てる…ようでは無いなまだ奥の方で、光が届かないのもあるが、横たえる体勢が不自然だ。睡眠しているような寝方ではないのはここからでも分かる。
好奇心が勝ってしまった。
気になった俺は先に進んだ。
ドラゴンの体は銀色の鱗で包まれている。
表面は鏡のように光を反射して、俺の姿を映し出す。
…俺ってこんな感じの見た目だったんだ…結構かっこいいじゃん?(自画自賛)
ドラゴンは気絶しているのか、寝ているのか。
近くに寄ると分かるが、ドラゴンの息が荒い。
何?興奮してんの?
…ん?水音?
足元を見ると何かの液体が
…うわ!これ血じゃん!
興奮してるとか言ってごめんね!ドラゴン君。
どうやらこの子、怪我をしているみたいだ。
治してあげよう。
こやつに恩を売っておくのもいいかもしれぬ。
ふふふお主も悪よのぉ…
使用可能回復属性魔法
『回復』『バハンデルン』『フンケルン』『凄い回復』『クリーンレン』
…いやいや凄い回復って。
ネーミングセンスが崩壊してやがるぜ。
…まぁ名前的に、これを使うしか無いよな?
『食らえっ!『凄い回復』!!』
ペカー
俺の手からは眩しい光が。
…何気なく使っているけど、光属性=回復ってのもおかしい話だよな。
まぁ、これはファンタジー補正なんだろうな。
ドラゴンの息が、ゆったりとしたものになってきた。
…うん成功したみたいだ。
さっきまで音が聞こえるほど大きかった息も全然しな…あれ?これ死んでないよね?
指を鼻の穴に近づける。
…あぁ良かった。ちゃんと息してる。
ドラゴンの体調が落ち着いて来たようなのでちょっと鑑定してみる。
おそらくこの子はアデュリオドラゴンだろう。
氏名-------
年齢 13歳
種族 アデュリオドラゴン
性別 雌
ーステータスー
LV 62
HP 20062/2730052
MP 514/514
STR 1203
VIT 50160
DEX 460
AGI 3820
INT 760
ー状態ー
感染症 『モルト』
…この子、病気みたいだね。
ってかやべぇ!血触っちゃった。伝染る!
…はっ!ヴァイスちゃんは!?
「これ…血だよね?大丈夫かな…」
…思いっきり触ってるやん。
『ヴァイスちゃん…病気が伝染っちゃうかもだから、血は触っちゃダメだよ。』
「えっ伝染らないよ?そもそも私たち血なんて流れてないし。」
あっ…そうでした
…凄い回復で体調の方は良くなったものの、状態の部分が治らない。
やはり体を回復させるだけではダメだ。細菌を殺す何かが必要だな。
…やっぱり魔法か?
名前的にクリーンに似ている『クリーンレン』を使ってみる。
…鑑定
感染症の表示はまだあるので違うようだ。
よく見ると血糊が取れて綺麗になっている。
…この魔法体洗うのに便利そうだな。
…『バハンデルン』はどうだ?
『バハンデルン』
…鑑定
氏名-------
年齢 13歳
種族 アデュリオドラゴン
性別 雌
ーステータスー
LV 62
HP 20062/2730052
MP 514/514
STR 1203
VIT 50160
DEX 460
AGI 3820
INT 760
やった。
状態異常が消えている!成功だ!
「ねぇユウト…さっき伝染るって言ってたけど、この子病気なの?」
『そうだったけど、もう治した。』
「えっ!?」
感染症『モルト』
麦芽からその名前が付けられた。
この感染症にかかると、粘膜の薄い部分に、麦程の大きさの水泡が現れる。
怠惰感、疲労感がする。
血圧が高くなり、傷口が塞がりにくくなる。
感染症してそのまま放置していると、最悪、水泡が肥大化、そして破裂。
その傷口からの失血死で無くなることが多々ある。




