バビロンまでは何マイル?
バビロンまでは何マイル?
60プラス10マイル
ロウソク灯して(by-candlelight)行けるかな
足が軽くて速ければ
日暮れまでに(by-candlelight)行って帰って来られるさ
(大学時代SF研究会の副会誌に掲載して頂いたものを、教員免許をビリビリに引き裂いて捨てた私に怒ったイーサンがそのページをビリビリに引き裂いて捨てちゃったという経緯から、乏しい記憶力で書き直します。確か副会誌のテーマは「ブームに踊ろう」)
泉の都・フォンテンランドでは今日も住民が身を粉にして働いていた。
スコットは、若い青年で、働き手として第一線だった。
今日もいつもと同じ。だけどやりがいのある仕事を一日できる幸せを感じる。そう思っていたとき。
「おおーい!何か巨大な物が近づいて来るぞ!」
物見台の上で街を監視していた別の若者の声が響き渡った。
巨大な物はフォンテンランドの近くまで来るとその動きを止めた。
数台の艀がこちらへ走ってくる。
街の人々は働く手を止めてそれらを出迎えた。
「はじめまして。私は親善大使のロータリアン。皆様を素晴らしい世界に招きに来ました」
「怪しいなぁ」
「そんなことはございません。移動都市ネオ・バビロニアは自由の都」
「バビロニア?確か、いにしえの悪徳の街じゃなかったっけ?」
スコットがそう言うと、
「確かに旧約聖書ではそこに住む者が全て同じ言語を使っていて神の怒りに触れる塔の名前です」
「なぜそんな名前にしたの?」
「ネオ(新しい)・バビロニア。何もかもが進化してなんの不足もない夢の国です。一目見ていただければ、必ずやその虜になりましょう。キャンドルライト号で迎えに参りました。気の乗らない方には無理強いいたしません。興味のある方だけお乗りください」
「帰りは送ってくれるのかい?」
「夕暮れまでに帰る方はお送りいたします」
「帰らない人がいたら?」
「ネオ・バビロニアの住人になっていただきます」
「あのさぁ、俺ら結構ここの生活気に入ってるんだよ。みんな帰ってくると思うけど」
「それは実際に体験していただかないと」
「じゃあ、行ってみたい人?」
思ったより興味を持った人が多かった。みんなわくわくしている。
スコットは「夕方までに帰りゃいいんだ」とつぶやいて、キャンドルライト号に乗り込んだ。
ネオ・バビロニアではありとあらゆる不満が解消された。進化したテクノロジーでどんな問題だって解決した。
人々はネオ・バビロニアの街に溶け込んでいき、戻らなかった。
「なんてこったい」
スコットは夕暮れにキャンドルライト号の発着場にいたが見知った顔ぶれはもう戻ってこなかった。
「さあ、みなさん!新天地フォンテンランドへ向かいましょう!」
ロータリアンが見知らぬ人々を引き連れてやってきた。
「みんな戻ってこない」
「そうでしょうそうでしょう。科学の虜になったのです」
「その代わりに連れて行くこの人たちは?」
「ネオ・バビロニアに『飽きた』人々です」
「えっ?」
「毎回一定数はこうした人々が出現いたしますので、住民を入れ替えるわけです。はい」
「………」
新しいフォンテンランドの住民たちはわくわくしながらキャンドルライト号に乗り込んだ。