ナイトプールは性欲の化身。
初春。4月6日
窓からさす光が俺、我修院秀を心地よく覚醒させる。起き上がると、蒼く透き通っている空にある一本の飛行機雲、ブロック塀に乗っている猫とじゃれる雀、少し大きめの学ランを羽織った青年が窓から見える。
青年は少し緊張した印象を身にまといながらも、表情は新しい環境への好奇心に満ち溢れていた。
そんな彼をこちらも見ていると、不思議と今日という一日が素晴らしい日になるのではないかと思えてきた。
否、待っていても始まらない。素晴らしい日となるよう自分が行動するのだ。まず素晴らしい朝は充実した朝食からだ。
俺はコーヒーから取り掛かろうとコーヒーメーカーに豆を入れ、焙煎を始めた。
豆を削る音。
和やかな朝へと導くような低音だ。
この音さえも俺を豊かにしてくれている気分になる。
そうだ。今日の朝食はパンにしよう。そして上に半熟でトロっとした目玉焼きを乗せよう。間にベーコンになんか挟んだら間違いなく幸せな日の始まりをきれるだろう。
俺は材料を求め、冷蔵庫を開いて中を覗いた。そして閉める。また開く。閉める。開く。閉める。開くと見せかけて叩いて開く。
しかし、何度確かめようと雪見大福一個と練りわさびしかはいっていなかった。
窓からさす光が強くうざい。あの飛行機ナイトプールに墜落しねぇかな。猫、雀食わねかなぁ。
あの学ランのやつ、高校デビューとか言ってようきゃのグループ入ったけど、夏休みぐらいにあんまりかかわらなくなっていって、周りのやつときまずくならねぇかな。
・・・コーヒーメーカーうるせぇえ!
コーヒーメーカーに向かって広辞苑を投げようとしたその時だった。
「あの・・・ここって探偵事務所ですよね。
仕事を依頼したいんですけど。」
「キェェェェェェェエエエエエ」
俺はフル無視して広辞苑を投げた。