プロローグ前日
正直よく分かりません
何やってんだ自分
拝啓爺さん
前略)
中略)
後略)
p.s新しい家での生活はやっていける自信がありません。
追伸 お金が尽きたので仕送りお願いします。
ー朝ー
日曜日
翠「あー、こっちか?ったく。このクソ暑い中20キロも歩いて行こうってのは流石にめんどくさ過ぎたか。」
俺の名前は樋渡 翠
女の子っぽい名前だが歴とした男である。
趣味はデパートのトイレで人の入ってる個室を「ヤバいヤバい」と叫びながらノックし数秒後に「あ、もう大丈夫です。」と意気消沈しながら去っていくことだ。
特技は鼻にピーナッツを入れて噴き出して口でキャッチすることかな?
まぁ、他に自慢出来ることもないので紹介はこれで終わろうか。
翠「はぁ、しかし前のアパートの大家も器が小さいぜ。
ペット可とかいうからワニ連れて来たらダメだっていうし、腹減り過ぎて共同花壇に植えてあったチューリップ全部食べただけで怒鳴るし、夜中にヴァイオリンの練習しただけで文句言ってくるし最悪の物件だったな。」
ちなみに追い出されるは今回が初めてではない。
過去にも何回かあったがまぁ些細なことだったと思う。
そんな俺に業を煮やしたジジィが知り合いのツテを頼りに勝手に入居場所を決めてしまったのだ。
どうやらその知り合いは剣道場を営んでいるらしく俺の腐った根性を叩き直してくれるらしいのだが、正直ありがた迷惑である。
翠「しかし、この地図分かりにくいな。なんで手書きなんだ。」
余計な情報を全て省き、住所と一本の線をスタート位置から目的地まで直角に繋いだだけの地図と呼ぶには些か情報が足りな過ぎる雑紙の所為で軽く迷子である。
もちろん描いたのはクソジジィ
正直これなら住所だけで充分な気もするのだがあの爺さんは何を思ったのかスタート位置を俺の似顔絵(似てない)にし、目的地を今自分がハマってるアニメのキャラクターの似顔絵(無茶苦茶似てる)で描いていた。
ぶっちゃけただ描いたイラストを俺に見せたかっただけなんだろう。
ふざけたジジィだ。
これは流石に人に道を聞くしかないか…
そこにセーラー服を着た女子高生と思しき女の子が歩いてきた。
日曜だから部活か何かだろうが駅も遠く、歩いて登校しているとこを見ると家も近いはず
ならばこの近隣のことも分かるはずだ。
決して女子高生とお近づきになりたいからという理由では断じてない。
翠「すいません。この場所に行きたいんですが分かりますかね?」
今こいつ絶対普通に聞くわけないと思った奴!ザマァ!俺だって普通に可愛い女の子とは仲良くなりたいに決まってんだろ!
女子高生「はい?ああ、この住所ですね。凄いイラストが描いてあるから何かと思っちゃいましたよ。」
翠「ああ、これねうちのクソジジィが描いた何の意味もないやつだから気にしないで」
クソジジィの所為で女子高生に不審な目で見られちゃったじゃねぇか
後でジジィに不幸のスパムメールを50件送ってやる。
女子高生「このイラスト『神風天使フミル』ですよね?私好きなんですよ。このアニメ」
翠「君も?いやぁ俺も好きでさ、つい描いちゃったんだよね。」
女子高生「え?そうなんですか?でもさっきお爺様が描いたって…」
翠「ああ、すいません僕一人称がクソジジィなんですよね。クソジジィが描きました。このクソジジィがね。」
ちょっと無理矢理くさい軌道修正だった気がしないでもないがまぁ結果オーライだ。
後でジジィに出会い系サイトのスパムメール送ってやろ。
あれたまにくだらな過ぎて面白い文のときあるからな。
ジジィも喜ぶだろ。
女子高生「あ、すいません住所でしたね。…あれ?この住所…」
翠「ん?やっぱり分からないですかね?まぁ、別に急ぎじゃないんでこの後一緒にお茶でも…」
女子高生「この住所…私の家です。」
翠「ブヒ…」
やば、意味わからん声出た。