06 死神アルムvs最強悪魔
「ちきしょう、あいつ等!! なんて酷い奴らなんだ。孤児院の子供たちを使ってリリアさんを脅しているぞ」
(落ち着けと言っただろうアルム。ここで焦ると取り返しのつかないことになるぞ)
「う、うん。わかった、ごめん。冷静になるよ」
そうだ、僕が取り乱してどうするんだ。死神の僕はこの時の為に900年間も戦い続けたのに。もしここで奴らが悪魔を呼び出さなかったらオリヴィアの魂も救えないんだ。
しっかりしろ、この力があれば全てを救えるんだ。ここは様子をみるしかない。
「お父様、正気に戻って。お願い、お母様もこんなこと望んでないわ」
「すまないリリア。私はローズにもう一度会いたいのだ。その為にはお前に犠牲になって貰わねばならないのだ」
「!? いったい何を言っているのですか!? お母様はもう亡くなったではありませんか!」
「それが違うのだよリリア。ローズは生き返れるのだ! お前という生贄を捧げることでな。邪神教団の教祖ルシファー様は約束してくれたのだ! 悪魔三大柱べリアルにお前を捧げることでな。ルシファー様は私達の望を叶えてくれると約束してくれた!!」
「そんなことが出来る分けがない!! 死者は生き返ったりしないのです! お父様は騙されているのです、目を覚まして下さい!!」
「リリアよ、お前は美しい。悪魔の生贄となる乙女は誰よりも美しくなくてはならん。お前のお陰だリリア。そして必ずべリアルは現れる。私はもう一度ローズに会えるのだ!!」
「お、お父様はお母様を愛しすぎるあまり悪魔に取り付かれてしまったのですね」
「さあ、時間だ。始めよう。地獄の門より来たれ三大柱べリアルよ。我、極上の生贄を用意せり。アブ・ドール・グラセム・ブ・チャーム・・・・・・・」
「これで俺も永遠の命が手に入るぞ」
「俺は一生遊んで暮らせる財が手に入るんだ!」
「これでクライセルに復讐できるぜ!」
紫の司祭服の男たちが騒ぐ。
「貴方たちには必ず神の裁きがくだるわ! 私は絶対に悪には屈しない!」
── リリアさんもう少しだけ待って下さい、必ず助けます! それにしてもなんなんだあいつ等。なんて勝手な奴らなんだ。それに呼び出してるのはべリアルって悪魔のようだぞ。
(三大柱べリアルか。おそらくデーモン族の最強の悪魔だな。あの神父、呪詛の呪いで召喚するようだ。そろそろ来るぞ)
「きゃ、きゃあああ。な、なんなの!? あぁ神よ」
!!! リリアさんが縛られている石の台座の周りが炎に包まれた。あの青い炎は悪魔の証らしいな。来たぞ!
始めはぼんやりと輪郭だけが浮かび上がり、次第に禍々しいその体躯が浮き上がり始めるた。
その巨大なる悪魔は一般の大人の2倍以上の大きさだ。頭には左右に巨大な角が生えている。そしてその体ははち切れるような筋肉だ。背中には蝙蝠のような羽と鋭く尖る尻尾まである。
その顔は残忍な本性を少しも隠していない。全てが自分の思い道理になると思っている予想道理の悪魔顔だ。遂に悪魔が姿を現す!!
「きたぞ!!」
(嬉しいぜ。やっとだ。目の前に現れたならこっちのものだ。さあ、あんな奴は俺の敵じゃない。行くぞ!)
「うん!! 今こそ君の力でオリヴィアを助けよう!」
「「「ドガン!!!」」」
僕は思いっきり正面の扉を開ける。さあ、やってやる。出し惜しみはなしだ。
「!!?」
「なんだ!? 貴様は!!」
手前にいた紫の司祭服の男が叫ぶ。そして目の前には巨大な魔力を秘めている悪魔が召喚される。
(俺はこの時を900年待ってたぞ、お前を殺すこの時をな)
「「はっはっは。久しぶりに現世に来てみればなんと面白い。死神とはな」」
この悪魔、べリアルは余裕の笑みで僕の方を見ている。今すぐどうなるかわからせてやるよ。
「さ、三大柱べリアルよ! 我が望を叶えてくだされ!」
「「ふん、うるさい。うぬらに用は無い。死ね」」
そういうとあっという間に司祭服を着た五人が青い炎で燃え上がった。
「ぎゃあああああああ」
「うわああ、そんなああ、いやだああああ」
「助けてくれええええ!!」
「なぜだあああ」
「お、お父様!!」
「りりあ・・・私は・・・ゆるし・・・」
「おとうさまあああぁぁ!!」
青い炎に包まれ燃え上がった五人は瞬く間に消し炭になった。自業自得だ同情の余地もない。僕がやってやるつもりだったくらいだ。リリアさんはショックで気が動転してるが今はその方がいい。
目の前には最強の悪魔べリアルがいる。オリヴィアの魂は返してもらうぞ。
「「くっくっく。死神ふぜいが笑わせる。その殺気、我を殺すつもりか? 死神の分際で」」
『ただの死神じゃないぜ? お前を殺すのは世界最強の死神だ、この雑魚が!!』
「「雑魚? 面白い、久しぶりに楽しめそうだな。この女の魂を奪う前に貴様だ。さあ殺してやろう」」
『この時を900年待ち望んだぜ』
「「楽しみだ、死神」」
べリアルの鋭く尖る鉤爪が獲物を引き裂くために刃のように形を変えた。戦闘態勢に入ったのだろう。
そしてその巨躯がさらに一段階膨れ上がる。流動する筋肉と禍々しい魔力が最強の悪魔であることを証明している。
しかし、このまま死神の鎌で攻撃するとリリアさんまで巻き込んでしまう。今は守りを固めて奴を引き付けるしかない。
「デス・リーパー・ランス!! 行くぞ、べリアル!!」
「「はっはっは!! 死ね」」
僕は死神の紫槍をソウルで生成しべリアルを挑発しこちらに誘導する。
べリアルは地面を蹴りあげるとその巨体とは裏腹に恐ろしいスピードで僕に迫ってきた。
その巨大な指から突き出している刃のような鉤爪はまるで空間まで引き裂くようだ。右腕を大きく振り上げた攻撃を僕は紫槍を盾代わりにして防ぐ。
『ぐっ!!』
防いだにも関わらず壁際まで吹き飛ばされる。その隙をつきべリアルは炎剣を召喚し、僕目掛けて無数に叩き込んでくる。
「デス・リーパー・シールド!!」
更に僕は死神の紫盾を生成し、これを全て防ぐ。防戦一方だがこれでいい。
よし、リリアさんからは十分に離れた。後は奴が僕に止めを刺しに来る時がチャンスだ。
「「たわいない、終わりだ死神」
悪魔べリアルの顔が残忍な笑みを浮かべている。そして悪魔は僕に止めを刺しに空中に飛び上がり鉤爪に青い炎を纏わせ急降下してきた。さあ、やるぞ!!
『死神の鎌よ、こいっ!!』
僕の意識は死神の僕が強く表れていた。さぁ、その時がきた、一緒にやろう。僕の体を使ってくれ。僕達は右手に意識を集中し死神の鎌を天界より呼び寄せる。
紫の霧に辺りは包まれ一瞬でその鎌は僕の右手に収まっていた。
持っているだけでその強大な力が伝わってくる。鋭く輝く刃は予想に反して美しく波紋すら残していない。真っ白の柄は握りやすく僕の背丈より長いが重さは全く感じない。これが死神の鎌か。そして──。
そう、全てはこの瞬間この時の為に鍛え上げた力なんだ。
死神の力の限界さえ超えた最強の僕、死神の僕は残像すら残さずに消えた。消える程に速かった。
『おい、悪魔。言っただろう? お前なんて雑魚だってな』
「「な、なんだとぉお!?」」
悪魔は見せ場の一端さえ許されず消えた死神を捜す、何が起きたのかさえ気が付かない。そして、そして頭の真上から一線。ゆっくりと身体は二つに別れた。
最強の悪魔、三大柱のべリアルは僕に死神の鎌で真っ二つに切り裂かれたのだ。「「なにが──」」その場に崩れ落ちるべリアル。
『じゃあな、最強悪魔』
900年鍛えた死神の僕はどうやら本当に敵なしの世界最強らしい。
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