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01 俺から僕へ


「おい、起きろ。アルム、時間が無いぞ」


自分で気絶させといて言うのもなんだがな。実際このままでいるのはマズい。直ぐ近くにケルベロスとアークデーモン2体が彷徨(うろつ)いているからな。奴らのLVは700前後だ。

こいつなら睨まれただけであの世行きだ。


「まあ、俺なら勝てるけどな。おいっ! いい加減起きろ!」

「う、うーん。ここは? 僕どうしたのかな?」

「おいっ、騒ぐんじゃないぞ、アルム」

「うわっ! びっくりした、だ、誰だよ君は!?」


「よく聞け。俺は死神だ。これからお前の命を刈り取らせてもらうぞ」

「「!!!」」


「おっと、騒ぐんじゃない。話は最後まで聞け」

俺は目の前の小僧、アルムが大声で叫ばないように口を押さえつけた。


「わかったな? 騒げば今この場で殺すぞ」

ガタガタと震えるアルムはなんとか唇を噛み締めこくりと頷いた。


「よし。まずは手を放す。絶対に叫ぶな、ぞして逃げるな。いいな?」

俺は手を放しアルムの出方を待つ。コイツは俺なんだ、大体想像はつく。


「・・・・なんで僕を殺すんだ? 僕が何をしたっていうんだよ」

よし、落ち着いたようだな。俺から話せばコイツはきっと逃げ出していただろう。


「まず、俺の顔を見せる。フードを取るから絶対に叫ぶな。いいな? 叫べば殺すぞ」

「わ、わかったよ。さっきから殺す殺すって言うの止めてよ。叫ばないから」


「そうか、なら見せてやる」

そう言って俺はゆっくりフードを上げアルムと向き合った。

「「!!!」」


「な? なんで? 僕と同じ顔じゃないか!? でも真っ白の髪とその紫の眼は??」

「そうだ。俺はお前だアルム」


「?? 僕って双子だったのか? 妹のエルサと2人兄妹だと思ってたのに」

「・・・・そう思うだろうな。だが違うぞ。俺はお前自身だアルム。俺は今から900年後の世界から死神としてやって来た、お前自身なんだアルム」


「??? 900年・・・」

「おい、頭の整理が追いつかないだろうが話を聞け。お前とオリヴィアは今日、サン・エルマリア教会でこれから殺されるんだ」


「!! ディナーの後に教会でオリヴィアにプレゼントを渡そうと思ってたんだ! そのことは誰にも言ってない!」


「そうだ。俺はお前だ、知ってるさ。いいか、今日お前は殺され、オリヴィアは悪魔の生贄にされる」

「「「むぐゥ!!!!」」」


「おい、叫ぶなと言っただろう。いいな、叫ぶな。あそこを見ろ、ケルベロスだ」

「!!??」


「体長20メートル、頭は3つ。凄まじく鋭い爪と牙を持つ地獄の番犬ケルベロスだ。神話の怪物だ、知ってるな? そうだ、叫ぶなよ」


「な、な、なんだ・・・・あれは。僕は頭がおかしく・・・。それにオリヴィアが生贄・・」

「おい、あれなら大丈夫だ。今は奴らに姿が見えないようにしている。だが、叫べば気づかれるからな」

「や、やつら・・・・?」

「ああ。向こうにアークデーモンもいる」


「・・・・」

言葉を失うよな。当然だ。


「・・・・君はオリヴィアを助けてくれるのか?」

「!!!」


おおっと、なんだこいつ。そうきたか。なかなか見どころあるじゃないか。

「君の顔。それにその異常に冷たく感じるその手も生身の体じゃないんだね」

「そうだ」

「ホントに900年後からきた僕なんだね?」

「そうだ」

「・・・・僕は死んで死神になるの?」

「ああ、そうだ。俺はオリヴィアを救う為に死神になった。そして俺は死神として900年鍛え続けた」


アルムは黙ってしばらく考え込んだ。意外に冷静じゃないか。


「ここはどこなの? 君がここに僕を連れてきたのか?」

「そうだ。俺がお前を召喚した。ここは地獄の迷宮の地下999階だ。この先に地獄の門がある。この階の奴らは最強クラスの化物だ」


「そうか、わかった。とんでもない話だけど信じるよ。僕ならオリヴィアの為に死神になる。そしてオリヴィアをどんなことをしても救ってみせる。君は僕だ」


「それを聞いて安心したぜ。俺は必ずオリヴィアを救う。だがその為にはお前の力が必要だ」

「?? 僕を殺すんだろう?」


「いや、お前がオリヴィアの為に命を懸けないようならオリヴィアの命は俺が刈り取るつもりだった。もちろんお前はその前に殺すがな」


「君は僕だろ? わかってたはずだ。僕がオリヴィアの為ならなんでもするって」

「・・・・そうだな。知ってたよ、どんなにお前がダメな奴でもオリヴィアの為なら命すら捨てるってな」


「色々聞きたいけど何をすればいい? 早くしないオリヴィアが危ないんだろ?」

「ふん、いい面じゃないか。さっきまでガタガタ震えて漏らしそうだったのにな」


「さ、さっきから失礼だぞ死神の僕! も、もう大丈夫だ!」

「よし、その意気だ。ソウルを使ってオリヴィアを救いだすぞ!」


「何を使ってだって?」

「ソウルだ。魂だよ。死神の力の源だ。今ここでオリヴィアの命を救っても俺のオリヴィアの魂は救えないんだ」

「??? どういうこと?」


俺はゆっくりとアルムに告げる。


「悪魔の生贄にされた魂は救われることなく苦しみ続ける。900年、オリヴィアの魂は苦しみ続けているんだ。救う方法はたった1つ。この時代のオリヴィアを救い、それからオリヴィアの魂を捕らえている悪魔を殺すことだ」


「なっ!! 900年もって。そんなの! あんまりじゃないか! 酷過ぎる」

「その悪魔は俺の時代にはもう地獄の門(ヘルゲート)の先に行って見つけることができなかった。この時代のオリヴィアの魂を救ってもその悪魔を殺さないと俺のオリヴィアの魂は救われない」

「この時代のオリヴィアを救うだけじゃだめなんだね? でも助けられるんだね!?」


「そうだ。俺はお前に取り憑き俺の力を与えてやる。だが力を使うにはソウルが必要なんだ。わかるな? お前はこれから死神の力でソウルを使い、オリヴィアの魂を捕らえる筈だったこの時代の悪魔を殺さなければならない。やれるか?」


「そんなのもちろんだ。必ずオリヴィアと君のオリヴィアを救ってみせる」

「ああ、頼んだぜ。お前にしか託せない、俺はこの世界に来たことで力が思うように使えないんだ」

「やるよ、当たり前じゃないか。900年も頑張ったんだろう? 僕にもやらせてくれ、絶対に救ってみせるさ、僕が必ずオリヴィアを救ってみせる! 君と僕で必ず!!」




─── こうして、僕、アルム・エイストの死神としての人生が幕を開けた。



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