プロローグ
「うわわ! 僕どうしたんだ!? どこなんだここ??」
うるさい。
「何だ、ここどこなんだよ!?」
少しは静かにしろ。
「これからレストランでオリヴィアとディナーを楽しむはずだったのに!」
ああ、それは本当に残念だった。
「くっそう、なんで僕はこんな迷宮みたいな所にいるんだ? これは夢なのか?」
いや、夢じゃない。お前は召喚されたんだよ、俺にな。
「やっとお金がが貯まって初めてオリヴィアをデートに誘ったのに!!」
残念だ。それは実らない恋なんだ、諦めろ。お前にはやらなければならない事がある。
── お前が未来を変えるんだ。
俺はこの小僧の傍らで様子を伺っている。まったくもって騒がしい小僧だ。
さて此処が何処なのか教えておこうか。
ここは誰も知ることができない隠れた迷宮その名も『地獄の迷宮』だ。もちろん地獄に繋がっている。
そうだな、目の前で騒ぎまくってる小僧に話しかける前に俺が誰なのかも説明しておくか。
おお? こいつ今にも泣きそうだな。くっくっく、本当に情けない奴だな。
「うわああぁぁぁ、誰か助けてようぉおおお!!」
お、遂に泣き出したようだ。まさか15歳にもなって大声で泣き叫ぶとは本当に情けない奴だ。
おいおい、それにあんまり騒ぐと周りの奴らに気付かれるぞ?
ここにいる化物共は性質が悪いんだ。見つかったら生きたまま食われるぞ。
死なれては困る、仕方ない、今は気絶して貰うとしよう。
ソウルの使用を最小限に抑えてと、
「「デス・リーパー・アイ」」
そう叫ぶと俺の眼からはうっすらと紫がかった暗黒の光線が迸り目の前の小僧に直撃した。
光線を真面に受けた小僧はそのままバタリと倒れ動かなくなる。
ふん、これで一安心だ。まあ、この方が俺も都合がいいしな。
やっと落ち着いた所で俺が誰なのか説明しよう。
簡単に言えば俺は死神だ。
そう、死神。今も眼から不気味な光線を出しただろう? 本当さ。漆黒のローブを纏い顔までフードで覆ってる。死神の鎌ももちろん持っている。
そして俺の名前はアルム・エイスト。もう900歳になるな。
信じられないだろうが本当さ。
そしてこの目の前で気絶している小僧の名前はアルム・エイスト、15歳だ。
驚いたかい? 小僧と死神の俺が同じ名前だからな。しかし偶然ではない。
ここまでくれば俺が誰なのかはもうお分かりだろう? そう俺はコイツだ。
正確に言っておくと俺は916年は生きている。
ただ生きているって言い方は正確ではないかもな。しかし、俺はこの小僧がこれから死んで死神になったなれの果てだ。
900年もの間死神として生きてきた。
そう、これからこの小僧は死ぬ。
そして俺は900年間死神として命を刈り取り続け、最強の死神となった。
ステータスはもちろんカンストさ。
そしてそれでも俺は自分を鍛え続けた。俺には目的があったんだ。誰も手にしたことの無い物を手に入れる為に。
死神が最後に辿り着くことで与えられる最強の証『エクストラスキル』を手に入れる為に。
俺はそのスキルの為に900年もの間死神で居続けた。900年鍛え続けたんだ。
そして遂にそのスキルを遂に手に入れた俺は900年前の今日、この忘れることのできない日に舞い戻ってきた。
俺はこれから起こる運命を変えるためにやってきたんだ。
900年の時を越えて。
あの悲劇を止める為に。
エクストラスキル【遡りし者】の力を使い、愛しのオリヴィアを救うために。
─── 今日は俺とオリヴィアが死んだ日、殺された日なんだ。
【遡りし者】
刈り取る者として最強を超えた死神が手にすることができるスキル。
非業の死を遂げ死神になった者のみが時間を遡り生をやり直せると言われているが・・・・。
使用した場合、力の大半を使うことが出来なくなる。
【刈り取る者】
通称:死神。命ある生き物のソウルを刈り取る。神の使いと言われているが、実際は人々に不吉の予兆と思われている。
【ソウル】
生物、魔物、聖霊、天使、悪魔の全てが持つ魂。死神が吸収すると死神の力になる。吸収しない場合はソウルは天に帰る。
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