11 英雄セシル
「「ドン ドン」」
扉をノックする音が聞こえる。
誰だろう? 誰かが訪ねてきたようだ。父さんも母さんも今はいない。学院をサボってる僕が出て行くのもおかしいけど行くしかないか。自分の部屋から一階まで急いで下りる。
「はい、今開けます。どちらさまですか?」
僕は誰が来たのか確認もせずに扉を開けた。そこには見知った顔ぶれ数人が僕を待ち構えていた。
「おい、遅いぞアルム。居るならさっさと出てこいよ」
近所に住んでいるダッドリー・オズ。僕より一つ年上で英雄学院に通っている力自慢だ。
英雄学院とは主に冒険者ギルドや王都グランエバスで騎士として活躍する為の必要なスキルを学んだり、更には実戦も行う育成学校だ。ここに通っている生徒の大半は戦闘能力が極めて高い。エリートって奴かな。
「やあ、ダッドリー。どうしたんだい? 君が僕の家に来るなんて珍しいね」
「おいおい。アルムお前ってやつはやってくれたな」
「まったくだ。まったくもって信じられない奴だよ」
ダッドリーの隣りにいるのはサムス・ウィローだ。サムスも一つ年上でやはり英雄学院に通っている。
「? どうしたのさ。それにこんなに大勢でさ」
ダッドリーとサムス、その他に知らない三人の若い男。この三人もおそらく英雄学院の生徒だろう。
「どうしただと? お前こそ昨日どこで何をしていたんだ? 聞けばお前、昨日の夜にオリヴィアさんといたらしいじゃないか。 まさかと思うがデートじゃないよな?」
嘘だろ? まさかその為に家に来たのか? たしかにダッドリーはオリヴィアに並々ならぬ好意を持っていることは知っていたけど。しかも何度も振られていることも知ってる。まさかそれを言いにくるなんて。
ここでそうだと言えばきっと逆上するんだろうな。
まったく迷惑もいいとこだ。オリヴィアに付きまとってるようならなんとかしないと。
と言っても、ダッドリーは英雄学院では名の知れた優秀な剣士らしいから僕がどうこうできるわけでもないか。
「おい、アルム聞いてるだろ。どうなんだ!?」
まったく騒々しい奴。実績がある分好戦的だから・・・・!!??
すると今度はダッドリーの頭上に半透明なガラスが表れる。そしてそこにはダッドリーの情報が記載されていた。
【名前】ダッドリー=オズ
【年齢】16
【種族】ヒューマン
【職業】英雄学院生徒
【称号】ソードファイター
【レベル】18
【体力】C
【魔力】D
【攻撃】B
【防御】C
【敏捷】C
【スキル】
長剣:B 斧:C 盾:B
【魔法】
【固有】
自己強化:C
「「!?」」
え? これはダッドリーのステータスか? まさか自分以外のステータス情報も知ることができるなんてどうなってるんだ!?
これはもう間違いないよ、死神の力が僕にも使えるってことだ。
それにステータス上だとダッドリーよりも僕の方が強いんじゃないのか? でもダッドリーは英雄学院でもトップクラスの生徒なんだけどな。
ダッドリーのスキルはやはり剣士が使っている武器が得意なんだな。
「おいっ、アルム。どこ見てるんだ? とにかくお前、オリヴィアさんとデートとかふざけんなよ。お前、オリヴィアさんを脅しでもしたんじゃないよな!?」
「そうだそうだ。でなきゃお前のような冴えない奴をオリヴィア様が相手にする訳がない。デートしてくれないと僕はもう生きて行けないとか言って頼んだんだろ」
うわあ、勝手なことばっかり言ってくれてるなあ。今は君達にかまってる暇はないんだけど。それに君達、学院はどうしたの?
まさかその為に僕を探したのかな?
「いや、そういうことじゃないんだけどね」
「じゃあどういう理由があってオリヴィアさんはお前なんかを相手にするんだよ!」
ダッドリーとサムス、他の彼らもかなり僕にムカついているようだな。特にダッドリーは鬼気迫るものがある。
もうここは正直に言ってしまうか? きっと怒り爆発! だろうけどね。
「おーい、お前等何やってんの? こんな白昼堂々とむさっ苦しいのが集まってよ。それにオリヴィアがなんだって?」
「ああ? 誰だ? ふざけ──!?」
「あんたは英雄セシル!! セシル・ガーネット!」
「!? あの冒険者ギルド『ドラゴンクロウ』のリーダーでAランクの!?」
ダッドリー達が慌てたように叫んだ。
「す、すげぇ。本物? 英雄セシルってあの『王都襲撃事件』を単独で防いだっていう?」
「しかも第一王女クリスティーナの求愛をすら断ったという生きた伝説。剣にのみ生きる剣士達の憧れ、英雄セシル!」
「それにセシルってオリヴィア様の・・・・」
そこには僕がよく知っている人が立っていた。
金髪の髪と整った顔立ち、そして細身の長身で有りながらその張り詰めるような筋肉。爽やかに、そして陽気な笑顔を見せながらも少しの隙もない。
カッコいい、僕の憧れの英雄。
「オリヴィア様って。まったくアイツ、どんな生活してるんだ? それにお前等、その変な噂は事実とは違うからな!」
そこにはオリヴィアのお兄さんで英雄のセシル・ガーネットが立っていた。
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