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08 金の女王と銀の女神

評価・ブクマしてくださった方、本当にありがとうございます。

 

 何故だ、なんでこうなったんだ? ───今僕は最大のピンチに立たされている。何とかしてこの窮地を脱出しなくてはいけない。これは僕の命に係わる問題かもしれないぞ。


 ◆◇◆◇


「うん、リリアさんに似合ってるよ」

 僕が渡したブルーオニキスの髪飾りはリリアさんの美しい銀髪によく映える。リリアさんもオリヴィアに負けないくらいの美人だ。おっと、これは内緒だよ。


「ごめんなさい、アルムさん。これはオリヴィアさんに贈る物だったのに」

「いや、いいんだ。オリヴィアには後で違う物を送るよ。事情を知ればきっとわかってくれるさ。オリヴィアには内緒だけどね」

「でも、そこにいらっしゃるのは? アルムさんとオリヴィアさんなのですよね?」

『そうよ、と言っても私たちはこの世界より900年後の世界からやって来たのだけどね』

「900年? えっと、900年? え?」


 リリアさんが混乱するのは無理もない。今の光景を見ていなかったら絶対に信じられない話だろう。


『おっと、もう時間がないぞアルム。あれはギルドの連中だろう? 教会が燃えたからな。調査にきたんだろう』

「う、まずい。見つかったら拘束されるかもしれないぞ。それにどうあれ噂になるのはごめんだ」

「あのですね、教会の焼け跡からも調べたりするのでしょうか? 私はどうしたら」

『今は見つからない方がいいんじゃない? 少なくともその服装で誰かに見られたらアルムは間違いなくその場で拘束、最悪の場合は王都グランエバスの監獄に収容されるわね』

「「!!」」


 たしかにそうだ、リリアさんの手足は傷だらけだし修道服は色々な所が裂けている。酷いことをしやがって。

 よく確認すると胸の周りが破れているから目のやり場に困る。

 でもこれはヤバい、この状態はヤバすぎる。


 誰かが見たらここにいるのは僕とリリアさんだけと思うだろう。死神の僕とオリヴィアは魂のような存在だから他の人には気づかれない。つまり、僕がリリアさんを襲ったと勘違いされてしまう!


 しかも教会の焼け跡からあの司祭服の男たちの死体とべリアルの死体でも発見されたらそれこそ弁解の余地なんてないかもしれない。一刻も早く逃げよう。それしかない。


「じゃあ、僕達はもう行くよ。リリアさんも僕と行こう、見つかると面倒だ」

「は、はい。そうですね、そうします」

「じゃあ、さよならだね。これからは二人はずっと一緒なんだ、本当によかった。さようなら、900年後の僕とオリヴィア」


『ああ、お前が力を貸してくれたからだよ。ありがとうな、アルム』


 僕達の目には涙が溢れている。少しの間だったけど、自分と一緒だなんて経験は誰もできないことなんだ。

 それにこの奇跡が起こったのは、起こせるほどの努力を君がやり遂げたからだよ。

 本当に君は凄い奴だ。僕も君のようにきっとなってみせるから。

 さようなら二人とも。


『二人とも何を言っているの? まだ私達はこの世界に残るわよ』

『え?』

「ええ!? どういうこと??」


 オリヴィアから信じられない言葉が飛び出した。これには死神の僕も驚いてるぞ、僕は見逃さなかった。


『当たり前でしょう? せっかくアルムに会えたのに。それにこの世界でもう少しアルムとあの頃の続きを楽しんでみたいし。解放されたからって直ぐに天に帰ると思ったら大間違いよ』

『・・・・・・っふ。流石だね、オリヴィア。君はあの頃と少しも変わっていないよ』


「まあ、たしかにそれは言えてるけどさ。じゃない、もう行くよ。それじゃあね、行こうリリアさん」

「あ、はい。お二方、命を救っていただきありがとうございました。言葉では表せないほど感謝しています。これからのデート、楽しんでください。羨ましいです、私」


『ありがとう、リリア。またね』

『アルム、命がけで守れよ! さっきのこと忘れるな!』


 そういうと二人は天高く舞い上がり見えなくなってしまった。また会えるよね。


「さあ、行こうリリアさん」

「はい」


 僕はリリアさんの手を引いて走り出す。ギルドからこの教会に来るには僕が来た道とは違う。

 ギルドはこの教会の南だ。だから大丈夫、今、僕が来た北の道を行けば見つかりっこない。

 まずは僕の家に行ってリリアさんに回復魔法(ヒール)をかけてあげないと。


「・・・・ありがとうございます、アルムさん。あなたは私の命の恩人です」

「え? 何? ごめん、考え事してたから聞いてなかった」

「いえ、なんでもありませんわ」

「もう少しだから頑張って。僕の家に着いたら回復魔法でその傷を治すから」

「はい、ありがとうアルムさん」


 石畳でできた整理された歩道を走り抜け、やっと住宅街までたどり着いた。あと、少し、あそこの角を曲がれば僕の家だ。もう深夜だ、こっそり入れば誰にも気づかれない。


 僕はリリアさんの手を引き角を曲がる。そしてそこには数人の人影が・・・・え??


「あっ、お兄ちゃん! 帰ってきた、無事だったのね!?」

「アルム、心配したのよ。教会のある東区でなにかあったらしいの。でも、よかったわ。あら? その方は?」


 エルサに母さんだ、なんでこんな遅くに家の前にいるんだよ!

 マズイ、最悪だ。どうすればいいんだ。


「あ、いやこれには分けが・・」


「手を繋いでご自宅に深夜のお帰りとはやるねえ、凄い美人を連れてさあ。ね、オリヴィア」

「ディアナ、君もいたのか。? オリヴィア??」

「どうしたの、アルム。その女性、怪我してるじゃない。それに彼女のその服もどうしたの?」

「「!! オ、オリヴィア、違うんだ。これは、違うんだよ!」」


 なんだって、待ってよ、なんでオリヴィアもいるんだ。誤解だ、違うんだよ!

 マズイ、マズイ、マズイマズイ、マズイぞ!! お喋りのクラスメイトのディアナまでいるし最悪だ!

 オリヴィア、これは違うんだ。でもなんて言えばいい!? 本当のことは絶対に言えない。


「夜分に申し訳ありません。私はサン・エルマリア教会の修道女(シスター)のリリア・マグリアスと言います。アルムさんには先ほど暴漢に襲われたところを助けていただいたのです」

「え? お兄ちゃん、やるじゃん! 見直したよ!」


 おお、リリアありがとう! これは皆納得するぞ。それにエルサ、ナイスだ。よく言ってくれたぞ、あとで抱きしめてあげようか。


「それは怖い目にあったわね。怪我をしている、回復魔法(ヒール)を掛けてあげなくてわ。私がやりましょう。私の家へいらして」

「ええ?? だ、大丈夫だよ、オリヴィア。僕がやるからさ、もう遅いし」


 ダメなんだ、オリヴィア。リリアさんには生贄の呪いが掛けられていてまだ消えていないんだ。

 今夜も何があるかわからない。これ以上君を危険な目には合わせられない。


「何言ってるのアルム? そのリリアさんの服を見た? 尚更私がやらなくてはいけないでしょう?」

「う、うう。でもっ」

 まずい、その通りなんだけど。どうしよう、どうする?


「くっくっ。これは面白いぞォ。『金の女王オリヴィア』と『銀の女神リリア』。二人とも有名人だからねえ。その二人にこの冴えない少年アルムくんはどうするのかねぇ?」

「その呼び方止めて、ディアナ。リリアさん、久しぶりね。あなたには一度、教会で会ったことがあるわ」

「私も覚えていますよ、オリヴィアさん。」

「さあ、どうするのアルム?」

 うわあ、どうすればいいんだあァァァ。ここで黙っていた母さんが一歩前に出てきた。


「ちょっといいかしら。おばさんが口を挟むのは場違いなことは分ってるけど許してね。アルム、何か言いたいことがあるかも知れないけどオリヴィアちゃんの言うことはもっともだわ」

「そ、それはわかってるよ」

「こうしたらどうかしら、リリアさんに今日は家に泊まってもらうの。今からじゃもう帰れないし。それにオリヴィアちゃんにも傷の手当の為に家に泊まってもらう。これならどう?」

「おおっ! いいじゃん! 最高の展開じゃん!」

「あなたは帰ってね、ディアナ。おばさま、ありがとうございます。そうさせていただきます」

「ご、ご迷惑ばかりおかけして申し訳ありません。ではお言葉に甘えさせていただきお世話になります」


「すごぉーい、お兄ちゃん! ちょっと一生分の幸せ使い切ったんじゃないの??」


 エルサ、それどころじゃないよ。この状況はどうなるんだ? 正直最大のピンチです。どうやってこの窮地を乗り切ればいい? でも、さすが母さん、まずは助かったよ、ありがとう。



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