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夢幻泡影 ─むげんほうよう─  作者: まみや ろも
16/17

二人の後輩

今回もグロいシーンあります。

苦手な方はお気をつけください。

「おいおいおいおい、また変なヤツが出てきたぞ」


「何を考えているの!! あんなところに立つなんて」


 やや小柄で、気の小さそうな雰囲気さえするその少年は、それでもしっかりと赤ん坊を見据えていました。


「ちょっとアナタ!! 私が気を引いているうちに早くそこから離れなさい!!」


 あまり余裕のない委員長が、少し怒り気味に叫びます。

 その声に、少年はチラリと流たちに視線をよこし、ゆっくりと、しかししっかりと首を横に振りました。

 その隙を突いた訳ではないのでしょうが、彼が目線を外したタイミングで赤ん坊の両腕が突き出されます。

 先程までさんざん委員長(ドッペルゲンガー)に振り回されたからでしょうか。ふっくらとした両手がいきなり、力いっぱい彼の体を握ります。

 その後に起こる風景を想像し、委員長は思わず目を背けました。

 ですが。


 つるり


 と、彼の体が巨大な手から抜け出しました。

 そのあとを追って、赤ん坊は次々に彼の体を掴みにかかりますが、その度につるりつるりと抜け出してしまいます。


「なんだろう、なんか見覚えがあるんだけど」


 流は少し考え。


「ああ、ウナギみたいだ」




「ウナギって、アイツはそんなぬるぬるしてないっすよ」


 突然、今度は上から声がしました。

 見ると倒れかかったビルの二階から、女生徒が飛び降りてきます。

 かなりの高さがあるにもかかわらず、そしてスカートが捲れるのも構わず少女は綺麗に着地しました。


「あ、スパッツ履いてるから大丈夫っすよ」


 誰に言うでもなく、ただおそらくは流に向けてなのでしょうが。

 健康的に日に焼けた、ショートカットの少女はそう言ってにっこりと笑ったのでした。


 そして。


「お二人とも先輩っすよね? 私、一年の夏梅(なつめ)っす。で、あっちが航平(こうへい)


 親指で指した先は先程からぬるりぬるりと赤ん坊の手から逃れ続ける少年でした。


「ちょっと待っててくださいね。ぱぱっと片付けてくるっすから」


 そう言うと。


「航平、こっちきて!!」


 呼ばれた航平は赤ん坊の手から抜けた反動でその腕にいったん立つと、軽く飛び上がり頭の上に移動しました。

 それを追いかけ赤ん坊が大きく腕を伸ばし、その反動でひっくり返ります。

 航平はその倒れていく体をするすると降りると、そのまま流たちの元へと滑ってきました。


「なんか、スケートでもしてるみたいだな」


「ああ、航平は水流を使えるっす」


「水流? 水じゃなくて?」


「そうっす、水流っす。だからさっきみたいに捕まらなかったり、他にも色々できるっすよ」


「他にも? なにが出来るのかしら?」


「見ればわかるっすよ。航平、道を作って!!」


 そう言われた航平の足元にじわりと水が滲みます。


「『薄膜の道標(ウォータースライダー)


 その水が薄い膜となり、複雑な軌道を描きながら宙を走りました。


「じゃ、行ってくるっす」


 身軽な動作でその薄膜に乗ると、夏梅の身体が凄い勢いで滑り出しました。

 複雑にそして大きくカーブを描きながら進むその水の道を、夏梅は微塵も体制を崩すことなく両足でバランスを取っています。

 仰向けに倒れた赤ん坊がゆっくりと起き上がる頃には、夏梅はその頭上高くにまで滑り上がっていました。

 そして、その薄膜からカタパルトのように飛び出すと。


「『貴方がくれた魔法の靴(シンデレラ)』」


 彼女の両足が一瞬光ったかと思うと、膝下まであるガラスの靴が現れたのです。

 夏梅はその両足を揃え、勢いよく赤ん坊の頭を蹴りつけます。

 再び仰向けに倒れ込むその巨体の後ろに着地した夏梅は、迫る後頭部に向けて右足を高く上げ。


 とん。


 と、ガラスの靴で後頭部を支えるように突き出しました。

 次の瞬間、ただ触れただけに見えたと言うのに、赤ん坊の頭が、破裂しました。

 血と肉と脳と脳漿、そしてバラバラになった骨が雨のように降り注ぎます。

 夏梅はというと、しっかりと航平の薄膜の道標(ウォータースライダー)に包まれて、肉片も何もかもが滑り落ち、汚れ一つついていません。

 そして彼女は血だまりをぴょんぴょんと避けながら皆の元へ戻ってくると。


「お待たせしたっす、先輩がた」


 と、健康的な笑みを浮かべるのです。


「あのエグい風景の後でよくその顔が出来るな」


 流が、おそらく全員が思っているだろう事を口にしました。


「持ち前の明るさってやつっすよ」


 夏梅はその意味が分かっているのかいないのか、後頭部に手を当て、照れたように笑うのでした。

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