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夢幻泡影 ─むげんほうよう─  作者: まみや ろも
15/17

赤ん坊

今回はややグロ要素ありです。

苦手な方はお気を付けください。

「ほな、先進もか」


 落ち込む流に構わず、三人はさっさと先に進むようです。

 もちろん流も慌てて追いかけます。

 あたりの風景は変わらず、何かに壊されたように荒れ果て崩れ落ち穴が穿たれ押しつぶされています。

 ビルの壁面に付けられた、金融会社の看板が、ゆらゆらと今にも落ちそうに揺れています。

 始め遠くに見えていた、ひしゃげた歩道橋を越え。さらに通りをまっすぐ進むと、やがて大きな十字路に差し掛かりました。

 何気なく右を見た竜之介が


「うっ」


 と、小さく呻きました。

 それにつられて全員がそちらを向きます。

 そこは、

 血塗れでぐちゃぐちゃでドロドロでベタベタの。

 もともと人だった物が。

 地面に

 壁に

 窓ガラスに

 へばりついていました。


 その真ん中にいるのが。

 背中を向け、頭の先がビルの三階までに届きそうなほど巨大な。


「あ、赤ちゃんですの?」


 悲鳴にも近い委員長の声にその赤ん坊が振り向きました。

 口のまわりが赤く汚れています。

 それまでしゃぶっていた、制服を着たナニかを放り投げ、その赤ん坊が四つん這いで向かってきます。

 よちよちと頼りない歩みではありますが、目的が流たち四人ということははっきりしているようです。


「あれも能力に飲み込まれた人だと言うのですか!!」


「恐怖に負けて赤ん坊に戻ったんやろ。本人は無邪気に遊んどるつもりなんやろうけどな」


「その無邪気だかなんだかに、何人殺られたんだよ!!」


 慌てて左右に逃げる流たちの間を轟音を立てて巨体が這い抜けて行きます。

 左に津村と竜之介。

 右には流と委員長。

 見えなくなったおもちゃを探すように、巨大な赤ん坊はどっかりと座り込み、辺りを見渡します。

 そして見つかったのは、左。

 津村と竜之介でした。

 ぷっくりとした巨大な手が二人を捕まえようと迫り、そのままビルの一階付近を破壊します。

 お尻を向けられる形となった流と委員長からは、巨体に邪魔され、竜之介を片手に抱き紐を伸ばし紳士的な狩猟(キャッチ・アンド・リリース)を使おうとする津村を辛うじて見るとこが出来ました。


「ん?」


 何か違和感を感じた流が何か言う前に、赤ん坊がビルの中から手を引き抜きます。

 その手には、あろうことか、津村と竜之介が握られているのです。


「なんてこと!! 避けられない動きではなかっ!!」


 委員長の言葉がが引きつったように止まりました。

 赤ん坊が何のためらいもなく、その手に持った津村と竜之介を口元に持っていくのが見えたからです。

 先ほどの、おしゃぶり代わりにされた学生服を思い出したのでしょう。


「『もうひとりのわたし(ドッペルゲンガー)』!!」


 津村と竜之介を握った赤ん坊の手の上に、委員長(ドッペルゲンガー)が現れました。

 突然目の前に出てきたおもちゃに、赤ん坊の意識が奪われます。

 津村たち二人を放り出し、今度は委員長(ドッペルゲンガー)を追いかけ始めました。

 消えては現れ、消えては現れするそのおもちゃに、赤ん坊は夢中です。

 放り出された二人は一度赤ん坊の腿に落ち、バウンドするように地面に落下しました。


「流くん、今のうちに二人をお願い!! なんだか様子がおかしいの」


 軽く頷いて、流は二人の元へ走りました。

 委員長はその妨害にならないよう、上手く赤ん坊を誘導しています。

 おかげで簡単に、と言う訳にはいきませんが、なんとか苦労して二人を引きずってくる事が出来ました。


「わざわざこっちまで回って来なくて良かったのに」


「ああ、そうなんだけど。なんか変な感じがしたから」


「変な? それより二人は?」


「それが、おかしいんだ。一回あいつの脚に落ちたのがクッションになったのが良かったのか。身体は無事だし頭もぶつけてないようなんだけど、二人とも動かないんだよ。でも意識はあるみたい。こっち見てるし」


「まさか脊髄が損傷してるとかじゃないわよね」


「そんなの分からないけど、でもなんか変だ。多分感覚はあるけど動けないんだと思う」


「それって!!」


「麻痺、か」


「敵はこの赤ん坊だけじゃないってことね」


「多分ね。で、そっちはどんな感じ?」


「逃げ回るので精一杯よ。このまま遠くへ誘導して逃げられないかしら? って、ああ、またっ」


「今度はなんだ、委員長!!」


 二人をなるべく通りから離れた所に寝かせ、流が急いで戻ってきます。


 見れば赤ん坊の動きが止まっています。

 委員長(ドッペルゲンガー)が腕にいるのにも構わず、一点を見つめています。

 赤ん坊のすぐそば。

 手を伸ばせば簡単に届きそうな距離。

 そこに、少年が一人立っているのでした。

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