光あれ
指をさした先。
そこもまた、倒壊しかかったビルでした。
それほど高くもないその屋上に、学生服を着た生徒が立っています。
立っているというか、斜めになった屋上から落ちないように手すりをしっかり掴んでいるようです。
「なんか随分ちっこいやっちゃなー」
「うちの生徒なのは間違いないですね。顔までは見えませんが」
「ま、取り敢えず助けとっか」
津村が紐を伸ばし、手すりに巻き付けます。
直接行って生徒を抱えてこようとしているのでしょう。
ですが、彼の足が地面から離れる前に。ビルの下から再び巨人が現れ、男子生徒を手の中に握ってしまいました。
小柄な生徒はほとんど手の中に隠れてしまい、辛うじて出ている顔が出ている程度です。
巨人はゆっくりとした動作で振り返ると、1歩、また1歩と津村たちに近寄ってきます。
地面を揺らしながら動く度に生徒の顔が苦痛に歪みます。
ですが、巨人はそんな様子にも構うことなく、大きく腕を振りかぶり掴んだ生徒ごと津村たちに拳を打ち込んできました。
「あら、あの子クラスメイトだわ」
「んな事言うてる場合かい!!」
津村の『紳士的な狩猟』が巨人の腕に絡まり腕の動きを鈍らせます。
ですが、完全に封じるまではいきません。
「痛い……痛いよ……誰か助けて」
拳の中からそんな弱々しい声が聞こえます。
「……お願い……誰か」
彼の捉えられている拳の中。
そこも当然ガレキで出来ているのです。
その、あちこちから飛び出た破片や角が、彼の体を抉っているのでしょう。
「ああ……神様……どうか」
徐々に小さくなっていく声を聞きながら。津村も、委員長も、そして流も、どうすることも出来ませんでした。
下手に刺激をして、巨人が拳に力を入れたら。それだけで彼の体はすり潰されてしまいます。
……そして。
さらに、小さな声で。
「『神のご加護を』」
その瞬間、巨人の拳が腕ごと蒸発しました。
バランスを崩した巨体がぐらりと揺れ、ビルの壁にその体をめり込ませます。
その巨体に向かって、幾筋もの光が降り注ぎました。
当たった先からガレキは蒸発し、その巨体にボコボコと穴が空いていきます。
肩から飛び出た脚も、腰からはみ出した腕も、胸から覗く後頭部も。
そしておそらくは、その巨体の中に存在していただろう生徒。
己の能力に飲み込まれた生徒ごと、一片の跡形もなく消し去ってしまいました。
あとに残ったのは、握りつぶされようとしていた少年。
今は光に包まれ、背中から羽を生やした小柄な生徒が空中に浮いているのでした。




