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大食い一族。

お父様とご当主お爺ちゃんの二人が真っ青な顔で駆け込んできました。


そして、私たちの姿を見たお父様は


「は、はぁぁっぁぁ!私の可愛いミーニャが!こんな密室で!自ら男に抱擁をぉぉぉぉぉ!!!!」

と膝から崩れ落ち、ご当主お爺ちゃんは


「もぐもぐ、んぐんぐ、ゴックン。いかん!エンライ!落ち着きなさい!ミーニャ嬢はまだ10歳じゃ!あと3、いや、5年は待ちなさい!頼むから!そういう事は私たちのいない時に!!」

と口に料理を詰め込んだまま走ってきたらしく、飲み込みむのに苦労しながら喋る。


2人とも大げさだなぁ。

今日一日で何回、抱っこされてると思ってるのさ。

今更、抱擁ぐらいで・・・。

って、あれ?

これ、普通のご令嬢様の感覚では無いよね?

普通のご令嬢様はこんなところを見られたら、パニックになるし、恥ずかしがるものね。

あれ?

可笑しいな。

私、恥ずかしくないぞ。

朝からずっと恥ずかしいの連続だったから、羞恥心が麻痺してきたのかも。

なんて考えていると頭上から舌打ちが聞こえた。


「チッ!うるせぇよ。っつーか、ミーニャは俺のだ。もう親父さんのミーニャじゃねぇ。俺の、お・れ・のミーニャだ。俺の嫁のミーニャだ。その辺、ちゃんと理解してくれ。後、じじい。まだ何にもしてねぇよ。言われなくても、するんなら誰にも邪魔されねぇとこに連れ込むっつーの。・・・・5年?マジか・・・。」

と完全にアウトな発言のあとに項垂れたエンライ様。


ねえ、それさ、10歳の女の子の前でして良い会話なの?

どう考えてもアウトだよね?

ってか、エンライ様、お父様に威嚇するの止めてちょうだい。

お父様、親バカだから。

娘の私を可愛がっちゃってるから。

トドメ刺すみたいな事言わないで。

落ち込んじゃって後が大変だから。

それに、今、若干、身の危険を感じたよ。

エンライ様、目がマジじゃない?

本気で落ち込んでない?

ちょ、ちょっと離れとこうかな・・・?


エンライ様の発言で全員が沈黙し、私が脳内会議をしていると

【ぐぅぅぅ~】

とエンライ様のお腹が鳴った。


なので、これはチャンスだ!

とばかりにエンライ様の首元から手を離した。


「すみません!忘れてました!エンライ様、お食事がまだですよね?!早く、皆様とのお食事にご参加ください!私の喉も回復しましたから!《私がエンライ様の為に作った》ご飯、是非、お召し上がりください!」

と一気に畳みかけるようにオススメする。


心の中では

【これしか逃げる道は無い!さあ!食べたいでしょう?お腹空いてるでしょう?食いつけ!エンライ様!】

である。


エンライ様は

《私がエンライ様の為に作った》

という単語に凄い反応を示してくれた。


「マジか?今日もお前の手作りか?それならそう言ってくれ。温けぇうちに食いたかったぜ、クソ。あっちだな?行くぞ。」

と目をギラつかせながら、私を抱えて隣の部屋に移動を始めた。


当然、お父様もご当主お爺ちゃんも放置である。

流石エンライ様。

ブレない男である。


しかも、当然の様に私を抱えて歩くらしい。

流石エンライ様。

ブレない男だ。



そして到着したのは隣の部屋。

と言っても廊下を一本間に挟んでのお部屋だけどね。

エンライ様はノックも無しに入っていった。


まあ、お父様はあちらの部屋に置いてきたし、私も抱えられたままだし、この部屋には自分の家族しかいないから良いけど、他人のお家だからね?

少し自重しようね?


なんて考えつつ、他の方のリアクションを見ようと思ったんだけど・・・

誰一人として、こっちを見てないんですけど?

皆、お皿しか見てなくない?

人が入ってきたんだよ?

お父様やご当主お爺ちゃんの可能性もあるでしょ?

もう少し、周りを見ようよ。

どんだけお腹空いてんのさ。

ご飯に集中し過ぎよー。

と呆れていると顔を上げた長男さんと目が合った。


「もぐ?もぐぐ?・・・ゴクン、あれ?エンライ?ミーニャ嬢も?もう御身体は大丈夫なんですか?あれ?お爺様は?」

と、長男さんに聞かれたんだけど、

その言葉に振り向いた全員が、口いっぱいに詰め込んで咀嚼してるってどーゆーこと?

ご当主お爺ちゃんに続き、お前らもかーい!

頼むから飲み込んでから喋ろうね?

ってか、お貴族様が他人のお家でのお食事会で口いっぱいに物を頬張るのは止めましょう!

これ、今後のツヴェイン家でのお約束にしましょう!そうしましょう!

なんて言えるはずもなく、口元を引き攣らせる事しか出来ない私とは違って、エンライ様は普通の態度だ。

もしかして、コレがツヴェイン家でのお食事風景なの?

いや、エンライ様はお茶会ではこんなに詰め込んでなかったはず。

じゃあ、なぜこんなことに?


エンライ様は私を抱えたまま、開いている席に座り、私をさっきと同じ、横抱きの状態で膝に乗せた。

いや、食事中は降ろしましょう、お行儀悪いから。

流石にそれは許しませんよ。

私が注意しようとした時、先にエンライ様が口を開いた。


「おい、俺の分の食事も持ってきてくれ。冷めてるだろうが、さっきので構わない。ミーニャが作ったのを持ってきてくれ。それと、喉に良い茶を頼む。それと、ミーニャ用の椅子はあるか?この椅子じゃ目線が合わねぇんだ。もう少し、足の長い椅子は無いか?お!あんのか!持ってきてくれ、頼む。

・・・。んで、お前らよ、なんでんなに詰め込んでんだよ。みっともねぇな。」

とメイドに様々な注文をした後に、呆れたように《みっともない》と言葉にした。


あ、流石のエンライ様でも私を膝に乗せたまま食事するつもりは無いのね?

隣に座らせる気は満々の様だけど、他の人に注意するくらいには食事のマナーへの関心があるってことだし、良かった!

私には言えなかったことをサラッと注意出来るエンライ様、カッコイイ!

荒々しい男らしさだけじゃない!

マナーを気にする、意外な面も持ち合わせているなんて!

と、私の中でのエンライ様の株が更に上昇した瞬間だった。



ふと気付けば、お父様とご当主お爺ちゃんが部屋に入っていた。

いつの間にか来ていたらしい。

エンライ様の言葉に苦笑いしながら、ご当主お爺ちゃんが


「しょうがなかろう。お前と違って、わしらは今後ヌイール家の食事を食べる機会なんぞほぼ無いんじゃからな。今のうちに食べとかんとなぁ。」

と遠い目をし、更には首を縦に激しく振るツヴェイン家の皆様。


あー。

大食漢な上に《食べることが大好き》な一族ってこと?

量もだけど味も重要って事かな。

それにしても、勢い的には

【最後の晩餐】

みたいな感じなんですけど。

若干、引くくらい、召し上がってますよね?

まあ、人数も多いですし?

食べ盛り?な方たちもいますし?

しょうがない気もするけどさ。


これ、よく見ると、後で使用人のみんなと食べようと思ってた料理まで出されてませんか?

普段の食事で食べる様なメニューで、コック長に作っておくように指示を出しておいた奴。

しかも、使用人のみんなへの労いの意味を込めて作った、冷蔵庫に仕舞っておいた特大ケーキも出されてる。

おそらく、この食の大魔神達のお腹を満たすために、

コック長が当主補佐のオッサンに、これらの品々を用意していたことを話して、許可を得て出したんだと思うんだけど・・・。


ちらりと顔を横に動かして、お父様の補佐をしてくれてるオッサンを見てみると

手を握りしめて、下を向いて何かに必死に耐えている様だった。


・・・・・・・。

そうだよねぇ・・・。

このオッサン、見かけによらず甘い物が大好きだから。

私が作った

【本来なら自分が食べれるはずの《大好きな大好きな生クリームのケーキ》を出す。】

判断をしたのは断腸の思いだったんだろうなぁ。

しかも、このオッサン。

見た目は強面のオッサンなんだけど、なんだか憎めないお茶目な所がいっぱいあって、

何か重大なトラブル処理をこなしたり、お父様に無理やり押し付けられた仕事をこなした後は

【オッサン疲れちゃったな~。お茶とか飲みたいかもな~。あ~。甘い物でもあれば、いう事なしの天国なんだけどな~。オッサン、もっと頑張っちゃうんだけどなぁ~。】

とか言って、こっちをチラチラ見ながら、

《期待してます!お嬢様!》って目でアピールしてくる可愛いオッサンだったりする。

他にも、仕事では厳し過ぎるお父様をたしなめてくれたり、必死になりすぎている私に息抜きを提案してくれたり、どこかへ出かければお土産を買ってきてくれるような、優しい、《第二のお父さん》の様なオッサンなのだ。


そのオッサンが耐えている。

ケーキを食べれないことに。

うん。

可愛いな、おい。

あ、オッサンが顔を上げた。

あ、目が合った。

あー、うん。

目で必死に

【お客様を優先しました。俺は大丈夫です。耐えます。頑張ります。】

って訴えてきてる気がする。

なので、私もアイコンタクトを試みようと思う。

【良くやった!オッサンの判断のおかげで、今、ツヴェイン家の皆さんが満足してくださってる!後で新しいの作ってあげるから!みんなの分のご飯もケーキも作るから!時間がかかっても全員分、作るから!もう少し頑張って!】

と強く念を飛ばし、頷く。


すると、長い間、共に過ごしてきたオッサンには私の考えが通じたのか、

顔色が《パアァッ》と明るくなり、直ぐに《キリッ》とした表情に戻して頷いた。


私は知らなかった。

そのオッサンとのやり取りを、頭上でエンライ様が厳しい目で見ていたなんて。













「おい。てめぇ、なに、俺のミーニャと、見つめあってんだ? あ゛? おい、オッサン、俺のミーニャと、なに、アイコンタクトしてんだ?答えろよ、なあ?」


腹部の手にぐっと力を入れて、限界まで引き寄せられ、頭上から聞こえたのは

血の気の引く様な、背筋が凍る様な冷たい声だった。

一言一言、区切るように、ゆっくりと落ち着いて話しているのに全体に響き渡り、

怒号よりも怒りが伝わってくる。


やらかした!

忘れてたよ!

私、エンライ様に抱っこされたままだった!

ヤバイ!馬鹿な事した!

エンライ様は実の父親のお父様にも嫉妬するくらいなのに、エンライ様の知らないオッサンとアイコンタクトしちゃうとか、馬鹿だろ私!

エンライ様の怒りは全てオッサンに向いちゃってるから今すぐにフォローしないと!


「エンライ様、彼はお父様の昔からの友人で、私の第二の父親の様な人なんです。さっきのアイコンタクトも、皆様のお食事をお出しした事への労いの合図の様なものなんです。私にはエンライ様だけです。」

と、出来るだけ平常心を心がけて言葉を口にする。


正直、今のエンライ様は怖い。

私に怒気が向いてなくても、怒ってるのが分かる。

うぅ、ちびりそう。




エンライ様は、私の頭を二回、撫でた。



でも、私の方を見てはくれなかった。



話しかけてもこちらを見てくれないなんて、思わなかった。

目も合わせず、こちらを向きもしない。

目線はオッサンに固定されている。

どうしよう。

私、本気で怒らせたんだ。

そうだよね。

旦那さんに抱えてもらってるのに、オッサンとはいえ、他の男の人と見つめあってるなんて。

腹が立つよね。

裏切りだよね。

もし、エンライ様が他の女とそんなことしてたら、私も嫌だ。

泣きわめきたくなるくらい、嫌だ。

自分がされて嫌な事を大好きな人にしちゃうなんて

私、最低だ。



「ミーニャ、俺はあのオッサンに聞いてんだ。大人しくしてろ。」

エンライ様は未だにこちらを見てはくれない。


「待ってくれ!エンライ殿!そいつは私の部下であり、友人だ。ミーニャにとっては親戚のオッサン程度の認識だ。さっきのは労いの合図だし、怒る事では・・・」

お父様が焦って声をかけるが、途中でエンライ様に遮られる。


「俺はそのオッサンに聞いてんだ。黙っててくれ。おい、オッサン、答えろ。俺のミーニャと、アイコンタクトした、真意を、【お前の口で】、俺が納得するように、詳しく、説明しろ」

エンライ様はオッサンから視線を外さないままで問う。



それに対して、オッサンは

すべてを諦めたような、観念したような表情で

エンライ様を真っすぐ見つめて、こう告げた。


「エンライ様、俺はミーニャお嬢様に対して、特別な、邪な感情を抱いたことは一度もありません。悪友の娘であり、私自身が《実の娘》の様に思・・・・」


「そうじゃねぇだろ?俺が聞きたいのは、そこじゃねぇ。【俺のミーニャとアイコンタクトをした理由を述べろ】っつってんだ。」

エンライ様は苛々してきたみたいで、先ほどよりも語尾がキツイ。

オッサンは、それにもめげず、言葉を続ける。


「はい。分かっています。・・・・・・、私が、ミーニャお嬢様とアイコンタクトを取ったのは・・・・・・。ケーキが食べたかったからです・・・・。」

オッサンの顔は熟れたトマトの様に赤かった。


甘味が好きだなんて言えない、15歳をとっくに過ぎた大の男が、ケーキが食べたかったとみんなの前で告白する。

恥ずかしいだろう。辛いだろう。

本当に申し訳ない!ごめんなさい!


周りの皆さんは、オッサンの言葉にポカーンってしてるし、

エンライ様も目を見開いて、黙っちゃってる。

ここからは私が説明しよう。

一番隠しておきたい部分を、オッサン自ら話してくれたのだ。

後は私が話せばいい。


「エンライ様、私から説明させていただきます。実は、ここに並んでいるケーキは私が使用人のみんなに作ったものなんです。2日連続のパーティーで疲れている、皆のお茶用に作ったんです。でも、ツヴェイン家の皆さんに作った食事とデザートが足りなくて急遽出してもらう事になったんです。ケーキを振る舞うと期待させたのに、食べさせてあげられないのが申し訳なくて、アイコンタクトで【後で作る】と知らせたつもりだったんです。何も深く考えず、エンライ様が嫌な気分になる事にも考えが及ばず、本当にすみませんでした。それもこれも、私が作った食事の量が足りなかったのが原因なんです。ごめんなさい。」

説明と心からの謝罪をする。


お願いだから、こちらを見てほしい。

兎に角こちらを、私を見てほしい。

目を合わせてもらえないのが凄く悲しい。


エンライ様はゆったりとした動きでこちらを見てくれた。

そしてオッサンに視線を戻し、


「マジか。・・・そりゃ、うちの奴らが食い過ぎたのが原因じゃねぇか。

・・・・・あー、その、ミーニャの第二の親父さん?すまない。ミーニャを取られるかと思ってカッとなっちまって。すまん。申し訳なかった。どう考えてもうちの奴らが調子に乗って食いやがったのが悪い。申し訳ない。落ち度は俺にある。恥をかかせて申し訳ない。あんた達の楽しみまで出させて申し訳ない。」

エンライ様は何度も頭を下げた。


それに対して焦ったのはオッサンだ。

相手は元伯爵次男、現侯爵家の婿。

いくら領地で二番目に偉いオッサンでも、そんなお貴族様に頭を下げさせたなんて大変な事である。


「い、いえ!そんな!大丈夫ですから気になさらないでください!全然、だ、大丈夫なので。お嬢様も後で作って下さると言ってくださいましたし、大丈夫なんで!本当に!」

叫ぶオッサンだが、一瞬、大丈夫の言葉が弱まったのは気のせいじゃないだろう。


でも、エンライ様は


「じじい、うちの奴ら全員に謝罪させろ。調子に乗り過ぎだ。全員、てめぇがどんだけ食う大食いか分かってんだろうが。初めて会う他家で出てくる飯が、招待された人数より多く用意されてるわけねぇだろうが。かといって出さねぇ訳にはいかねぇ事くらい分かるだろう。考えて食え。みっともねぇ。」

とご当主お爺ちゃんに謝罪を要求した。


ご当主お爺ちゃんは


「勿論じゃ。申し訳ない事をした。わしらの食欲を満たすほどの料理を出させるのがどれほど大変な事なのか、少し考えれば分かる事だったのにのう。もしや、ケーキだけではないんじゃないかの?料理も、使用人たちの分を食らっておったのでは無いのかのう?。・・・・うむ。どちらにしても、謝罪させてもらおう。お前らも分かっておるな?」

とツヴェイン家の皆さんに問うた。


皆さんは顔を青くして、

【はい】

と答えた。


そして、ご当主お爺ちゃんの謝罪を筆頭に、

【皆さんのご飯とケーキ、楽しみを奪ってごめんなさい。】

と全員がオッサン及びその場にいた使用人全員に謝罪を始めた。


驚くお父様や使用人を横目にエンライ様は


「本当に悪かった。楽しみを奪っただけじゃなく、疑ったこと、もう一度謝る。すまなかった。ここにいる奴以外にも伝えておいてくれると助かる。

それと、ミーニャ、うちの奴らがすまん。金は俺が出す。後で同じものを使用人達に用意してやってくれ。頼む。」

と今度は私に頭を下げた。


エンライ様が私を見てくれた!

それだけで胸が躍る!


「もちろんです!働いてくれたみんなの為に、最高のケーキを作るつもりです!」

と拳を握りながら力いっぱい答える。


エンライ様は私のそんな姿に苦笑しながらも、私と目を合わせて頭を撫でてくれた。

そしてそのまま、


「あー、んーと、第二の親父さん?確認のためにもう一度聞いても良いか?あんたは俺からミーニャを取る気はねぇんだな?」

と当主補佐のオッサンに聞いた。


オッサンは


「ありません。私が欲しいのはケーキだけです。」

と即答した。


ねえ、きりっとした顔しながら言ってるけど、内容は間抜けだよ?

しかも、それって私よりケーキが上って事?

さり気無く私の事ディスってるの?


オッサンの返答にエンライ様は満足そうに頷いて

【ああ、ミーニャの作るケーキは最高だからな。そうか。ミーニャに興味がねぇんなら何の問題もねぇや。悪いな。】

そう返して、私を抱きしめ始めたんですが・・・・。

他の方々が誰一人として会話に追いついてないですよ!


オッサンも

【俺はやったぜ!無罪を勝ち取った!俺はやれば出来る男なんだ!】

的な目をお父様に向けているんだけど、お父様は反応しない。


皆が置いてけぼり食らったような、時間が止まった様な感じだった。



そんな空気を壊したのは、エンライ様から頼まれた椅子を持ってきていたメイド長さん。


「そろそろよろしいですか?椅子をお持ちしたので運びますね。エンライ様のお隣で宜しいでしょうか?ああ、宜しいですね。ではここに。ミーニャお嬢様はこちらの椅子にお座り下さい。今すぐに。それと、エンライ様には既にそこにお食事をご用意させていただいておりますので、そちらをお召し上がりください。ああ、勿論、ミーニャお嬢様のお手製のお食事ですのでご安心ください。今の会話の間に多少は冷めてしまいましたが、問題ございませんよね?そうですよね。残さずに、何一つ残さずにお召し上がりくださいませ。それと、ツヴェイン家の皆さま、貴方様方(あなたさまがた)のお食事は現在出ている分で全てですので、それ以上はお求めになりませんようにお願いいたします。もちろん、お残しにはならないようにお願い申し上げます。後はご当主様。しっかりなさってください。以上です。皆さん、分かりましたか?いいですね?」

と一息に全てを述べた後、目は笑わない状態でニッコリと微笑んだ。


『はい。』


全員の声が揃い、全員が即座に行動に移した。

魔獣をも恐れぬエンライ様が素直に従っている。

流石です!

ヌイールの領地でウン十年勤務しているメイドは最強でした。

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