お茶会
誕生会が終わった後
お互いに婚約者達二人だけでの軽いお茶会が開かれる事になった。
私達は10歳なので、お呼びした方々も年齢が近い方、低い方が多かった。
それ故に、お昼前にお誕生会となり、お茶をする時間が取れたらしい。
このお茶会は、私達は今日初めて会ったから
次に会うまでにもっとお互いを知っておきなさい的な感じかね。
まぁ、理由はどうでもいいや。
お茶なら私の腕の見せ所だもの!
お茶請けには私の作った生クリームのケーキとドライフルーツが入ったブランデーケーキと温めたキッシュやラザニアを小さく一口大にカットして、自由に取れる様に並べておく。
甘いものが苦手な人は、他家で出された物でも お断りを入れて食べない。
なので、これで甘味をどの程度食べるかで、その人の《甘味マニア度》が分かるのだ。
もし、エンライ様が甘味好きなお方なら、私の株は鰻上り間違いなしだ。
また、本来ならお茶会ではサンドイッチを出すのが基本なのだが、この世界は料理の幅が狭く味付けが薄いので、私たちが考えるサンドイッチとは違う。
この世界のサンドイッチは大変質素である。
正直、不味い。
誰もが声をそろえる。
不味い。マズイ。まずい。
ハムとレタスを挟んだ物。
焼いた卵を挟んだ物。
アスパラと白身魚を挟んだ物。
この三種類しかない。
何故、焼いた肉なんかを挟んでみないのか。
何故、全て塩味なのか。
何故、こんなに噛み切れないパンを使うのか。
食べる度に謎が増える一品だ。
シチューにしても具は鶏肉に決まっているし、トマトスープの具は豆と玉ねぎだけ。
誰もオリジナル料理を作ろうとしない。
なぜなのかは分からないが、この世界の料理人は向上心がないらしい。
なので、私の作る現代版サンドイッチは、お父様やオッサン達には
この世界のサンドイッチとは別物と認識されている。
《サンドイッチ様》と呼ばれているのだ。
本当に。
【今日は鶏肉の照り焼きで《サンドイッチ様》が食べたい。】
【今日は白身魚のカレー風味で《サンドイッチ様》が食べたい。】
が、お父様からの おねだりの言葉である。
なので、何も知らない人にこの《サンドイッチ様》を出すときには、かなりの労力を使って説明しなければならない。
全然別な料理なのに、何故、サンドイッチと呼んでいるのか。
という疑問を返されるからである。
これが非常にメンドクサイ。
なので、他家の人間には《サンドイッチ様》は出さないことにしている。
本来ならば、重いものは避け、口に張り付くようなねっとりとした甘さの甘味や、サンドイッチの様に味の薄い、お茶を楽しむものをお出しするのが礼儀なのだが、今回は避ける。
エンライ様が先程の誕生会で何も食べていらっしゃらなかったからだ。
少し味の濃い、温かい軽食にしておく。
調べさせた話によると、エンライ様はパーティー等の大勢の人が集まる場所で並べられる料理には手を付けないらしい。
突然の襲撃に備えて、人数が多い場所では手を塞がない様に気をつけているのだとか。
すぐに武器を手に取れるように。
なんたる戦闘野郎!
戦いのために空腹にも耐えるなんて!
流石、そこまで身体を鍛えあげた筋肉男!
全ての基準が戦いに向かっている!
と言うわけで、温かく、比較的お腹に溜まりやすい軽食系をご用意してみました。
エンライ様はお茶の味より食事!ってイメージだし、大丈夫でしょう。
よし!気合を入れていこう!
さてさて、
エンライ様がお部屋にいらっしゃったので、早速、お茶会の開始です。
「本来ならご挨拶を先にさせていただくべきなのは重々承知しております。ですが、こちらの品々はうちの名産品ですの。お好きなものをお好きなだけお取りくださいませ。暖かいうちにお召し上がり下さい。」
本来なら有り得ない、私の言葉に目を見開き、テーブルを見つめるエンライ様。
食べたいよね?お腹空いてるもんね?んでもって、この世界では珍しい、濃くて良い匂いのする食事だもんね?
でも怒られるかしら?とドキドキしていたのだが、
「有り難うございます。温かい方が美味しい物も多いでしょう。お言葉に甘えて先にいただきます。」
と言ったかと思えば、すぐにキッシュやラザニア等の温かい軽食に手が伸びた。
口に入れた瞬間、どんどんと食べる手が進んでいく。
もの凄い早さでテーブル上の食べ物が消えていく。
足りる?これ?
そんなにお腹減ってたの!?
お昼は食べてこなかったの!?
って勢いなんですが。
私はエンライ様が暫くお食事に集中出来るように、ゆっくりとケーキを1つ選んで盛り、ゆっくりと紅茶にお砂糖を溶かし、ゆっくりと紅茶とケーキに手をつけていく。
私が声を発したら、格下の爵位であるエンライ様はこちらを見て私の言葉を聞き、反応を返さなければならないから。
もくもくと食べるエンライ様を微笑ましく、さりげなく見つつ、
出会ってからのエンライ様の様子を考える。
周囲はエンライ様を【脳筋・戦闘狂】って言ってたけど、
脳筋=脳まで筋肉の完璧な馬鹿
ではなく、
脳筋=戦いを基準にしている戦闘大好き野郎
のようだ。
一応、貴族としての最低限の礼儀はある。
ただ、表情に出やすいみたいだけど。
【戦闘に特化した貴族の次男】ってのが正しい評価じゃなかろうか?
まあ、直接話をしてみないとなんとも言えないのですがね。
兎に角、暫くは話しかけずに話が出来るタイミングを待つ事にした。
用意した軽食の9割が無くなった所でやっと食事のスピードが落ちてきた。
残っているのはブランデーケーキだけだ。
初めて見るはずの生クリームのケーキを含め、ほぼ表情を変えずに黙々と平らげていた。
おそらく、無心でただひたすら食事をなさる方なのだと思う。
甘味のお断りも無く、生クリームのケーキは全て完食なさったので、甘いものは得意という事だ。
うむ。甘味が好きな男性ならば胃袋を掴むのも簡単そう。
良かった。私の得意分野で魅了できそうだ。
よし、話しかけるなら そろそろでしょう。
ってか、凄い量食ったな、本当に。
朝から何も食べてなかったのかい?
思っていても言わないけどさ。
取り敢えず、これは言っとかないと
「エンライ様、本日はお忙しい中、来ていただきまして、本当に有り難うございます。」
エンライ様は食べる手を止めてこちらを見て言葉を返す
「いえ、此方こそ、招待いただき有り難うございます。ミーニャ嬢、お誕生日おめでとうございます。」
あら。お祝いの言葉は貰えないと思っていたけど、思ってたより良い反応じゃない?
「有り難うございます。ところでエンライ様。私は魔物のお話等を、エンライ様に【いつも通りの言葉】でお聞かせ願いたいのですが、可能でしょうか?」
エンライ様は一瞬、眉間にシワを寄せ蔑む様な目で私を見た。
そして
「俺は構わないが、女、ましてやガキは嫌なんじゃないか?こんな乱暴な話し方も、魔物をぶった切った話も。ガキでも女ならお茶やらドレスの産地やらを話したいんじゃないのか?」
と少し馬鹿にした風に言われる。
あら。私の株が下がったみたい。
でも、私を他の女と比べるなんて腹が立つ。
だから、お返しを
「あら、その話し方で構いませんよ?
確かに私は10歳になったばかりですが、領地経営も叩き込まれるほどの頭はあるので、ガキだとは思わない方がよろしいかと。
それに、お茶やドレスなら女友達とお話ししますよ。貴方と話しても何の意味もないでしょう?
ヌイール家の領地には魔物が沢山出ますの。
貴方は知らないみたいですけど、私は魔法も剣も扱うし、領地を守るために魔物の討伐に参加しているお父様達を間近で見ておりますの。だからこそ、魔物を倒したお話を聞きたいんです。次に皆が倒せるように。参考にさせていただきたいんですの。ご理解いただけました?」
あ、ポカーンてしてる。
開いてるよ?口、開いてるよ?
ん?何?
「変な女」
おいぃぃぃぃぃ!
普段の話し方で良いとはいえ、変な女はないだろぉぉぉぉ!!
正直すぎるよ!エンライ様!
ん?何?まだ何かあるの?
「なるほどな。年は下だが、媚びてもいねえし、頭の回転も速いみてぇだし、普通の女みたいなキーキー声も出さないし、かなりマシだから良しとするか。飯も旨かったし。その礼ぐらいはするべきだろうな。
だが、先に俺からの質問にも答えてくれ。」
やっぱり。
エンライ様にとっての女は、媚る煩い話の合わない生き物なのね。
まあ、どんな質問が来ても素直に答えるべきだよね。
エンライ様の嫌いなペラペラとよく喋る女になりそうだけど、理由も説明しないといけないし、愛され控えめ系女子は諦めよう。
下手に嘘をついたり、取り繕うと後々の関係にヒビが入るし。
エンライ様は嘘は許さないタイプの人間だと思うし、絶対に真摯に答えるべきだと思う。
「こちらも質問をさせていただくのですから、先にご質問いただいて構いません。何でしょうか?」
真剣な表情で言葉を返す。
「まず、婚約者が格下な次男で15歳も年上な事に対するお前の率直な考えは?お前の姉貴の婚約者は同い年の王子様なのにな。」
と私の目を真っ直ぐ見て問うエンライ様。
「有り難いですね。自分で言うのもなんですが、私は早熟ですので。幼い頃からお父様やお父様の年代の方達とお話をしていたので、同い年の方とは話が合いません。年上万歳です。
爵位は元々気にしません。むしろ、格上の相手は気を使うので面倒です。
次男な事は喜ばしいです。私は領地を継ぐつもりでおりますので、婚約者様には婿に来ていただく必要がありますから。」
と素直にのべる。
エンライ様は何度も頷いていた。
そして再度質問される
「んじゃ、次な。旦那が領地経営や貴族の相手なんて出来ねぇ馬鹿で、魔物退治ばっかしたがるやつだったら?」
「問題ありませんね。私は自分で領地経営をしたいので、領地経営に関しては口出し無用でお願いしたいです。お父様に叩き込まれているので、問題もありませんし。
貴族の相手、は、そうですね。貴族が出来るべき最低限のマナーだけ取り繕えれば良いと思います。表面上だけでも。残りはその都度、私が前日にでも指示を出しますし、我が領に関しての質問には【ミーニャに任せている】とさえ言っていただければ、私がお相手しますので、対策ならいくらでも立てられるかと。
後、魔物退治ですが、これは喉から手が出るほど好ましいですね。先程お話しさせていただきましたが、我が領は魔物が多い地域なんです。今は領主が先陣を切って魔物退治の短期遠征や日帰り討伐を行っているのですが、今後、私がそこまで強くなれるかどうかは未知数なんです。なので即戦力、リーダーシップのある方に婿になっていただいて、武力に関しては全権を任せる状態にするのが一番安泰だと思われます。」
私の言うことに
【あー】
【だな】
【ふむふむ】
と頷きながら聞いていたエンライ様。
気がすんだのか次にでた言葉は質問では無かった。
「おい、ミーニャ。
何の魔物の話が聞きたいんだ?」
って
おいいいい!
まさかの呼び捨てですか!?
名前を呼び捨てですか!?
ちょっとキュンてしたよ!
名前の呼び捨て!
本当に取り繕うのの辞めたんですね!?
だがチャンスだ!
「先日、エンライ様が倒したと噂になっていた《ワイバーン》についてお伺いしたいです。」
《ワイバーン》の単語にエンライ様の目付きが変わった。
「随分と情報が早いな。まあ、いい。
お前がちゃんと質問に答えたんだ。俺も嘘偽りなく答えてやる。よく聞いとけ。
ワイバーンな。あいつらは強かった。空を飛ぶのは知ってんだろ?ドラゴンよりは弱いが、体が小せぇからな。飛ぶのも速いし小回りがきく。だから魔法や弓矢で攻撃して地上に引きずり下ろしてから、剣や槍で攻撃した。
が、翼を動かして強い風を起こそうとするし、毒の尾を振り回すからな。近寄れねぇ。中々厳しい戦いだった。」
思い出すように語るエンライ様。
本当に戦闘脳なのね。
流れるようにスラスラと言葉が出てくる。
んー。
グイグイ聞くと引かれるかもだけど、私もちゃんと質問したいし良いかな?
いつ私の領地にワイバーンが来るか分からないんだもの。
ちゃんと聞いて対策をたてないと。
「やはり強いんですね。魔法はどの程度のものならダメージをあたえましたか?飛ぶ速さは?馬と比べてどれ程の差が?弓は何割が当たりましたか?体が小さく素早いとなると中々当たらなかったでしょう?尾は魔法でどうにかなりませんでしたか?飛行の高さに限度はあるようでしたか?羽根の狙い目は?最終的に倒した時はどこを斬りました?首ですか?胸ですか?」
目を見開いてるエンライ様。
一度に聞きすぎた?
引いてる?
顔色をうかがう様にエンライ様を見ていた私に対して
「お前、本当に変な女だな。」
ってそれはなくない?
ねぇ、私は侯爵令嬢なんだよ?
一応だけどさ。
確かに、普段の話し方で良いとは言ったけどさ、【変な女】は止めてもらえないかな?
出来ればさっきの名前の呼び捨てを所望します!
もしくはお嬢ちゃんとか!
言わなそうだけど!
「お前、本当に変な女なんだな。でもそうか。成る程な。じじいが、女嫌いの俺に無理矢理押し付けるだけはあるな。」
って!
ちょっと待て!
エンライ様、今、【無理矢理押し付ける】って言った!?
こっちの台詞だから!!
こっちもウチの爺が勝手に決めてきた事だから!
ウチの爺とそっちの爺が酒飲んで、ほろ酔いで決めた婚約だから!
タイプだけどね!!
ものスッゴいタイプど真ん中の男だけどね!エンライ様!
その失礼な感じも、戦闘脳な所も、なんだか可愛く見えてきてるしね!
前世も含めて精神年齢が30歳越えの私からすれば、少しやんちゃな青年程度だからね!
可愛いに決まってるわ!
見た目はドストライク、内面も可愛いなんて!
くそう!負けた!
ねぇ、その顎を片手で擦りながら、
【そうかそうか。こいつが俺のか。そうか。成る程な。】
って頷くの、可愛いんで止めてもらって良いですか?
「ミーニャ、一つ一つ答えてやるよ。
まずは魔法だったか?魔法はそこそこ当たるって感じだったな。中級以上じゃないとダメージは与えられねぇ。だが、中級以上になると詠唱時間が長くてな。詠唱している魔法使いを守る人間を用意しねぇと、真っ先に攻撃される。それに中級でも足だけだったり、手だけだったり、攻撃の範囲自体が広くねぇだろう?だから空中で避けられる事も多いし、当たったのは5割程度だ。
弓矢は2割。鉄の矢先でもだ。羽根で風を起こされて飛ばされる、届かねぇのが多かった。矢は改造が必要だな。」
真剣な顔で説明をしてくれるエンライ様。
やはり、戦闘の事なら真面目に、真摯に受け答えしてくれるらしい。
そして喉が乾いたのか紅茶を一気に飲み干し
「ミーニャ、茶。それと腹が減ったんだが、パスタとかサンドイッチとかもう少し腹に溜まりそうな物は無いか?」
おわぁー。
軽食をほぼ1人で食べたのに、更に要求してくるとか、図太いな。
己の欲求に素直すぎないかい?エンライ様?
流石の戦闘脳。
でもまあ、良いかな。
ワイバーンの情報を貰えるんだし。
当然の報酬だよね。
「分かりました。少し時間がかかりますけど、宜しいですよね?
私が用意しますか?侍女に用意させますか?」
「待つのは構わん。さっきの飯は?」
「私が」
「じゃあ、ミーニャだ。」
即答かい。まぁ、気に入ってくれたんなら万々歳だけどね。
「ヌイール家の飯は格別に旨いと聞いていたが、ここまでだとは思わなかった。それに、昨日の昼からここに来る直前までダンジョンに潜ってたからな。腹が減って死にそうだったんだ。助かる。」
と残っていたブランデーケーキと、今、私が新しく入れた紅茶を口にしてるエンライ様。
は?
婚約発表の前日の昼から
婚約発表のお誕生会直前までダンジョンに潜ってたの?
え?
馬鹿なの?
脳ミソ筋肉もあり得るんじゃない?
どんだけ戦闘大好きなのよ。
と呆れていると
《グウー》
「・・・・俺は大食いで燃費が悪いんだ。すまん。」
少し下を向きながら、そう告げてくるエンライ様に
胸が高鳴った!
あんなに食べたのにお腹が鳴っちゃうなんて!
カワイイ!
下を向いてブランデーケーキをもぐもぐしてるエンライ様に
キュンとした!
沢山食べなきゃいけないのね?
お腹がすいてるのね?
分かったわ!
よし、私に任せて!
普段はお客様には作らない特別なサンドイッチ様も用意するから!
私が貴方のお腹を満たしてあげるから!
とキュンキュンしながら
「分かりました。すぐにご用意させていただきます。」
と丁寧にお辞儀をしてから部屋の外に出て、厨房まで走る。
「私の厨房使うわよ!誰か私の手伝いをしてちょうだい!」
厨房の扉を開けて告げると、コック達が即座に動き出した。
「ミーニャお嬢様!メニューは?!今、手が空いているのは3人です!指示を!」
「ミートボールのスパゲッティとエビのサラダ、サーモン、ターキーのサンドイッチ様!スープはオニオングラタンスープ!」
エプロンを着けて
「冷蔵庫から材料を出して!野菜は既にカットされてるのを細かくして使ってちょうだい!焼き、茹で、味付けは私がやるからそれ以外の用意をお願い!パンは切って切り口を焼く用意!それから・・・・」
と、指示を出しながらパスタ鍋に魔法で熱湯を出し、私が作った乾燥パスタを茹でる。
この厨房は私が改造してるので、魔石で動く冷蔵庫や冷凍庫がある。
時間停止の保存庫もあるので、細かく切った食材や下準備を済ませた食品が大量に保管されている。
なので、あっという間に出来上がり。
ちなみに、急ぎの際の味付けはコックには任せられない。
無味無臭に近い物体Xへと変貌を遂げるからだ。
全ての料理を侍女達に運んでもらい、エンライ様が待っている部屋に入る。
扉を開けた瞬間
「出来たか!」
って。エンライ様にお出迎えされた。
ドアの前で立って待ってたの?
それとも、勢い余ってドアの前まで来ちゃったの?
侍女が驚いてるよ?
「おお!こんなん見たことねぇ!!パスタに肉団子が乗ってる!これは?パン?・・・サンドイッチか?しかもサラダにスープまで!
なあ!食っていいか!?」
おおー!
目がキラキラしてるよ!
食べ物が絡むと可愛いな!この人!
よし、掴みはオッケーだね!
今、まさにエンライ様のハートを鷲掴みにしてるはず!
「エンライ様の為に作ったのですから、勿論です。ただし、お座りになってお召し上がりくださいね?」
エンライ様、立ったまま食べそうな勢いだからさ。
「おう!そうか、外では歩きながら食べることも多いからついな。すまん。」
あー。
あれですか?
戦闘期間中は歩きながら食べたりするってことかな?
でも、ここは人様のお家だからやめようね?
早速、座って食事を始めるエンライ様。
特に旨いとか、感想を言う訳じゃないんだけど、顔を見れば分かるよね。
言うなれば、普段、怖くて厳つい上司が会社の飲み会で好物のホッケを酒も飲まずに、ひたすら1人でモグモグしてる感じ。
あれ?分かりにくい?
これは誰にも譲らない。
俺が1人で食べる。
今は話をする気はない。
冷める前に食わせろ。
邪魔をするな。
みたいな感じ。
酒にさえ邪魔されたくない!
みたいな。
エンライ様も紅茶や水を一切飲んでないし。
にしても、見てるこっちが気持ちがいいくらいどんどん綺麗に食べていく。
食べ方も汚くないし、下品でもない。
テーブルマナーとしては微妙なところもあるけど、全然問題ない。
ふむふむ。
エンライ様、私の婚約者として考えると、かなりの好条件なお方だ。
この人となら、楽しく夫婦になれると思う。
ってか、好みドンピシャだしね。
ドストライクだしね。
エンライ様としても魔物退治を喜ぶ嫁なんて早々いないから、私が好物件だと思う。
よし。
15歳には学園に入らなきゃいけなくなるから、それまでにエンライ様の心を射止めて夫婦になってもらおう。
そうすれば学園には行かなくて済むし、私は理想の旦那様をゲット出来るし、人生薔薇色である。
と、二人の未来について考えていると脳内お花畑な私に、食事が終わったエンライ様が言葉を発した。
「は~、食った。旨かった。ごちそうさん。........よし!婚約は今日で終わりだ!」
と突然立ち上がるエンライ様。
って
はあ?!
ちょ、ま、え?!
なんでそうなるなのよおおあおおおおお!!