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記憶の覚醒。

お友達のリクエストをわんさかと盛り込んだ作品です。

クサい台詞がダメな人は読まない方が良いです。


本日、

私、ミーニャ・ヌイールは

双子の姉のリュール・ヌイールと共に

3歳の誕生日を迎えました。


私達は侯爵の爵位を持つヌイール家の長女と次女としてこの世に生を受け、両親から愛されて育ちました。

我が侯爵家は、広く豊かな領地を持つ代わりに、沢山の魔物が住む森と隣接している部分があり

常に武装した小隊が森と領地の境目に配備されています。

自給自足率も高く、領民からの信頼も厚く、お父様の領地への采配もお見事。

魔物を狩って得る豊かな資金、作物や家畜などの豊富な食料、魔物を相手に出来る武力

と他の領地よりも中々、豊かな領地です。


まあ、今はその話は置いておいて。


つい先程、二人合同の3歳の誕生会が無事に終わり、眠りにつこうとベッドに潜り込んだんですが・・・・。

どうやら私達姉妹は二人同時に

《前世の記憶》が戻ったみたいです。


私は驚きで呆然としました。

何しろ20年以上生きた、前世の膨大な量の知識が一度に脳内に流れ込んだんです。

脳みそが焼き切れてないか心配になるほどだったんですから。

驚きのあまり、ボーッとしている私に

隣でベッドに入った筈の姉、リュールが起き上がってこちらに向かって話しかけてきました。


「思い出したわ!何で私がリュールなのよ!一体どうなってるの!?本来なら私がミーニャであるべきでしょう!?そうよ!

あのゲームで描かれていた様に第3王子と結婚して王妃になるのも、エレーナ学園で逆ハーレムを作るのも私であるべきよ!

なのに、何で私がリュールなの!嫌よ、私は嫌!

爺共の勝手な約束でツヴェイン伯爵家の馬鹿な脳筋の四男に嫁ぐなんて!絶対に嫌!」


と、何やら訳の分からんことを、勢いよく語り始めました。

大丈夫か?

あねさま。

主に頭の方が。

記憶が戻って脳ミソ焼き切れたんじゃないかい?

ってか、ツヴェイン伯爵家の四男ってまだ生まれてなくないっけか?

長男が20歳で次男が18歳で三男が10歳だったよね?


おおう、まだ喋るのね。


「そうよ!何で私がお前を虐めて追放されなきゃならないのよ!

お前が王子様と婚約して、エレーナ学園で逆ハーを作るなんて、許せないわ!

何で私が馬鹿を相手にして、お前が王子様達イケメンを侍らせるのよ!


ああ、ああ!そうだわ!反対になれば良いのよ!私がお前の行動をそのまま実行すれば良いんじゃない!私が明日から賢くて儚げで控えめな、花や自然を愛する、純粋な良い子になれば良いのよ!

王妃としての教育も熱心に取り組めば更に良いわね!私って天才ね♪

あの馬鹿はお前にあげるから安心して。

それじゃあ、おやすみ~♪」


って一通りマシンガントークをかましたと思ったら寝るのね?

もういいのね?気は済んだ?

よく分からんが、子供のふりをしておこう。


「おねえさまのおことば、むずかしいです。

ねるの?おねえさま。おやすみなさい。」


「あら、子供には難しかったかもね。安心なさい。私はお前が理解出来なくても気にしてないから。おやすみ。お馬鹿なミーニャ。」


おいおい。

3歳の子供を、可愛い妹をお馬鹿扱いかい。

まあ良い。

私も記憶が戻って20歳以上の頭脳があるのがバレたら面倒そうだし、この対応で正解だろう。



うむ。

先程のリュールの話をまとめると。

此処はゲームで描かれた世界。

リュールはこの世界について、ある程度の知識がある。

私、ミーニャは王子様と婚約する。

そして、後に王妃になる。

更にエレーナ学園で逆ハーレムを築く。

そして、リュールはツヴェイン伯爵家の馬鹿な脳筋四男の嫁になる。


とな。

こんな感じかね。


うーん。

面倒くせぇーーー!!

そもそも、王子様の婚約者なんて大金支払われてもやりたかないよ!

だってさ、王妃様になるための教育とか周囲からの目とか凄く大変そう。

プライベートなさそうじゃん!

気を抜く瞬間も無さそうだし!

暗殺者とか確実に命を狙われるじゃない!


それに何より、

《王子を狙う肉食系の女共、別名狩人》を相手にしなきゃいけない日々の始まりでしょう?

嫌でしょう!そんなの!

女友達も出来なそうだし!


それだったら私、ツヴェイン伯爵家の馬鹿な脳筋四男の嫁になるわ。


伯爵家とはいえ、四男で馬鹿な脳筋なら

周りの肉食系の狩人(ご令嬢様)からの競争率も低いはず。

それに、姉が王家に嫁ぐんなら、侯爵家の子供は私一人になる。

だから私が伯爵家に嫁ぐんじゃなくて、脳筋が婿に来るんだろう。


ならば、尚更よろしい条件ではないか。

私は自由に侯爵家で領地を運営しながら過ごし、脳筋は領地の魔物狩りや、自警団の稽古にでも行かせてればよろしかろう。


よし。

ならば、私のやることは決まった。

明日にでも、今までの様に子供のふりをしながら性格だけ変えることにしよう。

子供の様子のままで、どうにかして性格が変わったと医者や周囲に判断されれば、リュールも私が記憶を思い出したなんて思わないだろう。


記憶が戻る以前は、控えめで儚げで、純粋でおっとりした良い子ちゃんだった。

明日からは本を愛し、お父様の領地運営に興味を持ち、魔法や剣も学び、領民の生活も学ぶ事にしよう。


それと、これが一番重要。

料理の勘を取り戻そう。

この世界、不味い訳じゃないんだけど、料理の幅が狭い上に味が凄く薄い。

なので、脳筋野郎の為に料理の腕をあげましょう。

男を捕まえるには胃袋を掴むのが一番でしょうから。



_________________


次の日、ヌイール侯爵家では大変な騒ぎに見舞われた。


「きゃーあーあーあーあーあ」

というなんとも不思議な叫び声と共に、ガッタン、ゴットンという音が屋敷内に響き渡り、使用人が様子を見に走って目に映ったのは、階段下の床に倒れる侯爵家の次女、ミーニャだった。

屋敷は大混乱。

直ぐに医者が呼ばれ、診断を仰いだが、頭のたんこぶ以外には外傷は見当たらない。

起きていても可笑しくないのに、目を覚まさない。

医者も首を傾げるばかりだった。

誰もミーニャが自分で頭を軽く床に打ちつけてタンコブを作り、床をガッタン、ゴットンと踏み鳴らした上で倒れていたのには気づかなかった。

勿論、ミーニャの意識はあった。

が、ミーニャ自身の性格が変わったのを印象付ける為に、いまだに気絶したふりをしていたのである。


そして、両親が必死に看病をした次の日。

ミーニャは目を覚ました。

だが、その日から3日間、ミーニャは反応が薄く、どこかぼんやりとしている様子だった。

記憶にも知能にも何の問題も無い。

医者がそう診断した。

しかし、そのぼんやりとした3日間の後、ミーニャは変わった。



ミーニャは本を沢山読むようになった。

理由を問うと

「おとうさまのような、すばらしい にんげんになりたいの」

と言う。


魔法に興味を持つようになった。

理由を問うと

「おとうさまのような、すごいまほうをつかえる にんげんになりたいの」


剣に興味を・・・・。

「おとうさまのような、つよい・・・・」


領地の運営に興味を・・・・。

「おとうさまのような、りっぱなりょうしゅに・・・・」


様々な事に興味を・・・・。

「おとうさまの・・・・」


と、この繰り返しである。

更には

料理を覚えたいとコックに教えを請うた。

理由を問うと

「だいすきな おとうさまに たべていただきたいの」

と言う。

ミーニャの父親である、ヌイール侯爵家の当主はすっかり次女のミーニャにメロメロになった。


この頃のミーニャの口癖は

「おとうさまは すばらしいの」

「おとうさまは わたしのほこりなの」

「おとうさまは おつよいの」

「おとうさまのような つよい、つよいおかたと こんいんするの」

であり、

メイドを始め、執事、コック、領地運営の人間、領地の魔獣討伐隊のメンバー達、領地の平民達、挙句の果てに遊びに来ていた他のお家の方々にまで、目をキラキラと輝かせ、父親を褒め称えるミーニャを皆、微笑ましく見ていた。

まるで

【お父さんと結婚するの!】

という女の子を見るような目で。


そして、そんな風に慕われ、自慢され、自分の誇りだ!

とまで言う娘に、当主である父親は様々なことを教えた。

ミーニャが問うことには大人に対応しているときと同じ様に真摯に答えた。

時々、父親の方から問題を出してやり、ミーニャのもの覚えの良さと視野の広さに驚かされていた。

何一つ文句を言わず、真剣に領地の経営を覚え、民の事を考え、剣を振るい、魔法を覚え、父親のために料理を覚える。

そんなミーニャの姿に父親は

【ミーニャは嫁に出さず、俺の手元で俺が死ぬまで育てる。そして俺の様に強い男を婿を取らせ、領地の経営はミーニャにさせる。そうすればヌイールの領地は安泰だ】

と考えるようになっていった。


まさに親バカが誕生した瞬間だった。

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