テキストを書くこと
テキストを書くこと
書かれたテキスト=エクリチュールは、声とは異なる特徴を持つ
1.エクリチュールは取り消せない
2.エクリチュールは残り続ける
3.エクリチュールは権力を脅かす
声は取り消すことができるし、後になって誤魔化すこともできる。
エクリチュールは、取り消すことができない。一度公開してしまったら、
作者が取り消そうとしても魚拓が残り続ける。
エクリチュールは、保存媒体が生き残っている限り永久に生き残り続ける。
一方で、声はその場限りのものでしかなく、また声の約束は時間が経つにつれ劣化する。
1年前の声の約束が守られるかは非常に危ういものだけれど、
それが書かれたテキストとして残っていたら、守らなかった相手を断罪するだけの力を持つ。
結果として、エクリチュールは常に権力を脅かす。
声による批判は、権力によって容易に揉み消すことができるが、
書かれたテキストによる批判は、揉み消しができない。
テキストが書かれてしまえば、どんな権力者であっても、
テキストが則る何らかのルールに基づいて、テキストのフィールドで戦うしかない。
テキストのフィールドは権力や感情には従わない。人間社会とは別のところにある。
決して人とは相容れない。だから人を統治する力をもつ。
人ではなく、テキストによる統治。
規範も法も道徳さえも、すべてはここから生まれた。