表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/29

光と影3

「手持ちの薬草は限られていましたし、あなたの両目の処置のほうが大事でしたから」

 こともなげに言い放つ。

「だからってな、お前!」

 ケーディンはクロフに詰め寄ろうとしたが、白髪の薬師に止められる。

「怪我人同士が喧嘩するでない。そっちのひょろっこいのの怪我は、骨まで溶けていないのが不思議なくらいの重傷だし、筋がいくらか切れているから、多少の不便が出るかもしれぬな」

 薬師は部屋の隅の清潔な白布を持ってきて、それを広げる。

「このでかいのはかなりの重傷だな。両目とも視力を失っておる。わしの持っている薬草や、過去の文献からでは、こいつの両目を治すのは不可能じゃな」

 わかっていたこととは言え、いざ目の前ではっきりと告げられ、ケーディンは肩を落とした。

 治療が終わると、二人は老薬師に礼を言ってその部屋を後にした。

 長い城の石畳の廊下に二人分の靴音が響く。

 城にはほとんど人の気配が無く、薄暗く静まりかえっていた。

 窓の外の城下町の方からは、人々のにぎやかな声が風に乗って聞こえてくる。

「あの貴族のぼっちゃんはまだ城門のところにいるのか? 森の化け物も退治していないのにいい気なもんだ」

 ケーディンはクロフの肩を借り、ゆっくりと薄暗い廊下を歩いていく。

「森の化け物について触れられたら、彼はどう答えるつもりなんでしょう?」

 クロフは苦笑いを浮かべる。

「さあな。貴族どもの考えることは、いまいちよくわからん」

 ケーディンはどうでもいいことばかりにはき捨てる。

 クロフは廊下を進み、曲がり角を曲がる。

 城内の召使いがほとんど出払っているため、領主の部屋までの道のりは、二人の記憶だけが頼りだった。

 しかしクロフは立ち止まったり、長く迷ったりすることはなく、廊下を進んでいった。

「おい」

 三つ目の曲がり角を曲がったところで、ケーディンが声をかける。

「お前、さっき言ったことは本当なんだろうな?」

 クロフは足を止め、わずかに顔を上げる。

「城門の外で言ったことだよ。おれの目が上手くいけば治るとか、何とか。あれは本当なのか?」

 クロフは一瞬だけためらうように、光の差し込む窓の外を眺める。

「ええ、そうです」

 ケーディンの口から喜びの声が漏れる。

「やった、本当か?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ