光と影27
その上を細い道が蛇行し、流れる川のように続いている。
クロフはふらふらと重い足を引きずるように、白い道を進み始めた。
――どこか行くべきところがあったような気がする。
ぼんやりとした頭で考えた。
――あの丘の向こうへ行けば、思い出すだろうか?
クロフは白く霞む頭でそう考え、黙々と歩き続けた。
一つ目の丘を越え、二つ目、三つ目の丘の頂に立ったとき、クロフは崖の下に白いリンボクの林が広がっていることに気が付いた。
リンボクの白い枝には鋭い刺があり、クロフの行く手を阻むように密集して崖の下に生えている。
クロフは崖を滑り降り、リンボクの林の前にやってきた。
林に近づくと、鋭い枝がまるで意志を持ったかのように道を開いた。
クロフは暗い空を見上げた。
空には青い月がクロフを見下ろすように浮かんでいる。
気のせいか、最初に見上げたときよりも青い月が大きくなっているように思える。
――どこか、戻るべき場所があったような気がする。
クロフは林に入るのをためらった。
どうしてかわからないが、その林に入ってはいけないような気がしたのだ。
青白いリンボクの枝が風もないのに揺れている。
枝のこすれ合う音が、人のささやき声のように冷たく響く。
クロフは急に空恐ろしくなった。
黒い梢にかかった月は、静かに青い光を投げかけている。
クロフは背筋が凍り付くような気がして、せわしなく辺りを見回した。
クロフの不安をあおるように、リンボクの林は物音一つ立てず、ひっそりと静まりかえっている。
耳が痛いほどの静寂が青い世界を支配する。
クロフが不安に駆られ後ろを振り返ると、何人かの男女が足音もなく歩いてくるのが見えた。
クロフはわずかに安堵した。
その人々は、ある者は美しい服を着て、ある者はぼろをまとい、それぞれリンボクの林の方へ歩いてくる。
顔かたちがはっきりと区別出来るところまでその一団が近づいてくると、クロフはあっと息をのんだ。
美しい服を着た者も、ぼろをまとった者も、腕や足、肩や頭にひどい怪我を負っていたのだ。
彼らの背後からは、また別の一団がやってくる。