表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/29

光と影18

「貴様!」

 ロキウスは手に持っていた杖で床を叩く。

 すると杖の先からは赤い炎が吹き出した。

 ディリーアは炎を見据えたまま、鼻を鳴らす。

「所詮、神官でも力でものを言わせるか」

 神官達の炎は森で何度となく浴びせられたため、そのときの憎しみが心に舞い戻ってくる。

「もう一度、この炎で全身を焼かれたいか?」

「ふん、やれるものならやってみるがいい。ただし、頭の固い神官共が、クロフを救うことが出来るならな」

「何を!」

 ロキウスは杖の先の炎を鉄格子の間から差し入れた。

 燃えさかる炎が、ディリーアの顔を赤く染める。

「確かに、お前ならば今のわたしを殺せるかも知れない。だが、クロフのそばに月の神の使者が来ている。お前のような神殿の若僧に、月の神の使者を追い払うほどの力はあるまい」

「月の神の使者、だと? 伝聞にある月の神の使者が、あいつのすぐ側に来ているというのか? お前にはそれがわかるというのか?」

 ロキウスの顔色が一変する。

「だったら何だというのだ? 仮にわたしが地下の神々を崇める魔女であるのならば、それも当然ではないか。ああ、そう言えば。天上の神々の声を聞き、その使者の姿を見ることが出来るのは、最近では神殿の神官の中でもごくまれだと聞いたことがあったな。お前ほどの神官ならば、さぞかしはっきりとその姿が見えるのだろうな?」

 ロキウスは鉄格子の間に差し入れた杖を引き、牢の鍵を懐へ戻す。

「魔女の力など借りなくとも、あいつの命は我々の力で助けてみせる!」

 歯ぎしりさえ聞こえてきそうな顔つきで、ロキウスはディリーアをにらみつける。

 白い裾を振り乱し、靴を響かせロキウスは牢屋から遠ざかっていく。

 二人のやり取りを眺めていた奴隷達は、ロキウスが去っていった先を眺め、顔を見合わせた。

「……だそうだ。あいつの命は、お優しい神官様方が助けてくれるそうだ」

 石床に両手をついたままでいた男は、ディリーアの顔を見上げた。

 ゆっくりと立ち上がり、ぼんやりした目差しで辺りを見回している。

「クロフ様は、助かるのか?」

 体格のいい男は、同意を求めるようにつぶやく。

 腰の曲がった老人がうなずく。

「よかった」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ