表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/29

光と影13

「ならば、なんだと言うんだ?」

 娘は低い声で不機嫌に答える。

 奴隷の身につけているぼろをまとい、手足は枯れ枝のように細く、無数の擦り傷や切り傷がいたるところに見られる。

 クロフが口を開くより前に、背後にいた牢番が口を挟む。

「まさか、森の化け物が、こんな小汚い娘だったとは思いませんでした。神官様に退治していただいて、これで一安心です。でも気をつけてくださいよ。下手に近づくと、この娘に呪いをかけられるかもしれません」

 案内してきた牢番は身震いして、逃げ出すように立ち去った。

 牢の前に取り残されたクロフは、食い入るように青い目の娘を見つめている。

「どうした? わたしのこのような姿が、そんなに珍しいのか?」

 娘は疲れたように息を吐き出した。

「いえ」

 クロフは言いかけて口をつぐんだ。

 放心しているような顔を見て、娘は忍び笑いをもらす。

「相手が人間だと思って、少し油断したらこの様だ。わたしを魂ごと滅ぼすことは出来なかったが、神官達の魔法の炎で散々な目にあった」

 疲れたような娘の表情には、どこか諦めの色があった。

 もうこのまま自分がどうなってもいいという、深い絶望の気持ち。

 クロフは炎に照らし出された娘の横顔にその気配を感じ取った。

「あなたは、どうして大蛇の姿をしていたのですか?」

 クロフはためらいながら尋ねる。

「どうして、とは? あの大蛇の姿がわたしの本当の姿かもしれないぞ? 今の姿は人間達を油断させるためにしている姿とは、考えないのか?」

「それは、考えませんでした」

 クロフは照れくさそうに笑う。

 それから娘から視線を外し、早口に話す。

「ええと、実はぼくは西の神殿に下された太陽の女神様の神託で、ここにたどり着いたのです。太陽の女神様の神託では、詳しいことまでは教えられなかったのですが、ぼくにはあなたが人の姿をしていると思ったのです。これはぼくのただの望みかも知れませんが。一度も会ったことのないあなたの姿を知っているというのは、変だと思うかも知れません。でもぼくは太陽の女神様を信じていましたし、神託には」

「待て」

 娘はクロフの言葉を手で遮る。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ