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光と影10

 月が中天にかかる頃、クロフは皆が寝静まったのを見計らい、馬に乗って一人村を抜け出した。

 クロフは通り慣れた道を進み、森の湖へ向かう。

 いつもと違っていたのは、クロフが松明さえ持たず、無意識のうちに走っていたことだった。

 茂みをかき分け、クロフは空の開けた湖にたどり着いた。

 辺りに人の気配はなく、月の光を受けて湖は静まり返っていた。

 クロフは安堵の息を吐き出し、おもむろに岸辺に近づいた。

 空にはおぼろ月がかかり、黒い雲がたなびいている。

 クロフが岸辺に近づくと、水面が盛り上がり銀の大蛇の姿を取った。

 青い瞳がクロフの頭上から星のように見下ろしてくる。

「今夜はどうした? 見たところ息も上がっているようだが。何かあったのか?」

「ええ、少し」

 クロフは息を整えながら、近くの石に腰掛けた。

 おぼろ月が黒い雲に隠れ、辺りは一瞬闇に包まれる。

 クロフの心の曇りは晴れず、どんどん不安が募るばかりだった。

「どうした? やはり何か心にかかることがあるのだな? もしわたしに話して楽になるのなら、話してみたらどうだ?」

 予想外に大蛇に優しい言葉をかけられ、クロフは目を丸くした。

 初めて大蛇と出会った時の対応を考えれば、雲泥の差だった。

 それはこの一年の間、クロフがたびたび湖を訪れ、竪琴を弾き詩を詠い、話をしてきたためだった。

 それが大蛇の心の氷を溶かし、安らぎをもたらしたのだ。

 クロフは息を吐き出し、大蛇に事の次第をぽつりぽつりと語り始めた。

 知り合いの神官が、明日にでもこの湖にやって来て、大蛇を殺そうとすること。

 ぬかるんだ土地を奴隷達と共にこの一年間、耕し続けたこと。

 南の王に定められた期限がもうすぐやってくること。

 クロフが話す間、大蛇は黙って聞いていた。

 青い瞳は暗く沈み、何事か考えているようだった。

 話し終えたクロフは岩の上から揺れる水面を眺めていた。

「それで、お前の真意はどこにあるのだ? その知り合いの神官を、わたしに殺されたくないというのが、お前の本心か?」

 クロフは答えなかった。

 赤金色の目を細め、おぼろ月が水面に映っているのをぼんやりと眺めている。

 不意に黒雲がおぼろ月を隠し、湖は再び闇に閉ざされた。


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