光と影
二章 光と影
城下町では三人の馬が遠くの荒野に見えると、民衆は三人の英雄が化け物を倒し、無事返ってきたと思いこんだ。
そしてその姿を一目見ようと門に詰めかけた。
そのため彼ら三人が城門に着く頃には、屋台や露店が軒を連ね、大通りに人があふれ、城下町はお祭り騒ぎだった。
南の国の民は森の化け物が退治された喜びに沸き、街は明るい雰囲気に包まれていた。
フィエルナ姫は、城壁の前で未来の夫となる若者を不安と期待の入り交じった面持ちで出迎えた。
戸惑ったのは三人の方だった。
城壁の前で姫や街の人々に出迎えられ、どう応えていいのかわからなかった。
フィエルナ姫が安心したように、馬上のクロフを見上げ尋ねた。
「皆様がご無事で何よりです。森の化け物はさぞ手強かったでしょう? お怪我などされませんでしたか?」
クロフが困ったように頭をかき、馬から下りようかと迷っていると、ヒーネが馬から飛び降り、フィエルナ姫に駆け寄った。
「ええ、そうなのですよ、姫。わたしは二人を従え、あの恐ろしい森へと入っていったのです。しかし化け物めはわたしが来ることが前もってわかっていたのか、恐れをなして森中に罠を張り巡らせたのです」
フィエルナ姫は不安そうに胸の前で両手を組んだ。
ヒーネはその白い手を取って握りしめる。
「しかしわたしは勇敢に進み、数々の罠をかいくぐり、数多の難題を解決し、森の奥へと進んでいったのです。すべては姫と南の王様のため。わたしはそれだけを思い、戦い抜いたのです」
馬上のクロフはヒーネの話に聞き入っているフィエルナ姫や街の人々を見回し、隣の馬に乗っているケーディンを肘でつついた。
「今のうちに王の館に戻りましょう。あなたの目の怪我もありますし、領主様とも急遽相談したいことがあります」
クロフは城門の前の人々に気づかれないように、こっそりと馬を進め、城壁を回り込んだ。
城壁の石壁にそって歩き、クロフは裏門を目指す。
クロフは目が見えないながらも不機嫌な顔で後ろを付いてくるケーディンに話しかける。
「もしも、すべて本当に上手くいったら、この土地も元に戻り、あなたの目も治るかもしれません」