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第四十七章:交差する物語 第四十八章:手紙のない日
店には、それぞれの物語が静かに流れていた。
玲奈と佐野、真理と悠一、みずほと斉藤。
誰もが「伝える」ことの尊さを、手紙を通じて学んできた。
匿名だった想いが名前を持ち、
紙の上の言葉が、声となり、行動へ変わっていく。
みずほはそっとペンを走らせる。
「あなたに出会えて、本当によかった。」
誰宛とも知れないその一行は、
今の店の“すべて”を象徴していた。
ある日、誰も手紙を書かない日があった。
けれど店は静かに暖かく、言葉もなく笑顔が交わされていた。
玲奈と佐野は隣同士で読書をしていた。
真理と悠一は窓辺で、桜を眺めていた。
みずほと斉藤はカウンターの向こうで、言葉少なに過ごしていた。
「ねえ、手紙がなくても大丈夫かもね。」
そう玲奈が呟くと、佐野は頷いて返す。
「うん、でもあの手紙たちがあったから、今がある。」




