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第四十五章:季節の隙間  第四十六章:新たな始まり

春が来た。


店の前の桜が一斉に咲き始めたころ、玲奈は佐野と並んでベンチに座っていた。


「…これ、君に渡そうと思って。」


佐野は小さな封筒を取り出す。

中には、かつて玲奈に送った最初の手紙のコピーが入っていた。


「もう一度渡したくなった。あの日、これを書いた自分に、ありがとうって言いたくて。」


玲奈はそっと便箋に触れたあと、彼の肩にもたれかかった。



みずほは、店の片隅で手紙の整理をしていた。

客の数が増え、常連も増えた。


その中には、かつての自分のように傷ついた人もいる。

けれど今の彼女には、優しく背中を押せる力がある。


「手紙って、不思議ですね。」


そう話しかけてきた若い女性に、みずほは微笑みながら言う。


「うん、きっと“言えなかった言葉”が、未来を作ってくれるから。」

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