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第二十九章:玲奈、揺れる心 第三十章:交差する物語
数日後、玲奈の手元に一通の返事が届いた。
初めて見る筆跡に、心が高鳴る。
手紙を開くと、そこには自分の言葉に対する丁寧な“感謝”が綴られていた。
玲奈は手紙を胸に抱きながら、ゆっくりと目を閉じた。
「誰かが、私の言葉を受け取ってくれたんだ…」
目の奥がじんわりと熱くなった。
過去の孤独、声を殺して泣いた夜、誰にも言えなかった後悔。
そのすべてが、少しだけ報われたような気がした。
その日、カフェでは珍しく4人の常連客が揃っていた。
真理と悠一は笑いながら会話をし、みずほは紅茶を注ぎ、玲奈と沙織は静かに手紙を書いていた。
みずほがふと語る。
「この店があることで、私も昔の自分とちゃんと向き合えるようになったんです。」
沙織が優しく微笑んで頷いた。
「わたしも。人の気持ちを信じてみようと思えるようになったのは、ここに来てからです。」
その言葉に、玲奈と雅人も黙って耳を傾けていた。
それぞれが違う過去を持ち、違う傷を抱えながらも、
“ここ”で出会ったことで、少しずつ新しい自分を育てていた。




