第二十七章:灯りを抱いて 第二十八章:手紙の向こう側
春が深まり、桜が咲き始めたころ。
玲奈は、自分の思いを込めた新しい手紙を書いた。
「ありがとう。ここでやっと、私は“生きていていい”と思えるようになりました。」
その手紙を入れた手紙箱の上には、小さな桜の花びらが一枚舞い落ちた。
秘密の手紙コンカフェの灯りは、今日も優しく、揺らいでいた。
玲奈の「ありがとう」と綴られた手紙は、またひとりの心を動かしていた。
手に取ったのは、佐野雅人――物静かで人との関わりを避けてきた常連客のひとり。
普段はカウンターの端で読書をして帰るだけだった彼が、その夜は手紙を読み終えても席を立たなかった。
便箋に綴られた言葉が、胸にしみるように残っていた。
「この場所でやっと、私は“生きていていい”と思えるようになりました。」
佐野はポケットからペンを取り出す。
誰かに向けて何かを書くなんて、何年ぶりだろう――そう思いながら、彼はゆっくり文字を綴った。
「あなたの言葉に、救われました。
僕もこの場所で、もう一度生きてみようと思います。
いつか、言葉だけじゃなく、声で“ありがとう”を伝えられる日が来たらいい。」
書き終わった手紙を差出箱に入れると、彼は小さく息を吐いた。
その目には、少しだけ光が宿っていた。




