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第二十四章:新しい風
春の柔らかな風が、秘密の手紙コンカフェのカーテンを静かに揺らした。
その日、新たな来訪者が店の扉を開けた。
山口玲奈。長い髪を無造作に束ねた彼女の表情はどこか影を落としていた。
店内に一歩足を踏み入れると、みずほが穏やかな声で迎える。
「ようこそ、秘密の手紙コンカフェへ。焦らなくて大丈夫ですよ。心の声を、少しだけ書いてみませんか?」
玲奈は軽く頷き、用意された便箋とペンを前に静かに座った。
そして、誰にも伝えられなかった思いを、初めて紙の上に書き綴った。
「家族とも、友達とも、うまく話せないまま、時間だけが過ぎていきました。
でも、誰かに届いてほしいと思ってしまう自分もいます。」
書き終えた手紙を箱に入れた玲奈は、深く息を吐き出した。
ほんの少し、心の中に新しい風が吹いた気がした。