勝者と敗者
リタは、能力を解除して地面にぺたりと手をつく。
……何が起きたのか理解できない。
今の一撃は何?
パワーもスピードも桁外れだった。
あれがヘンテコだというの?
たった一撃でストーンリザードを仕留めてしまった。
「ラスト……アタック……」
取れなかった。
取らなければいけなかった。
ああ……これでボクはもう仲間と……
レオンは、膝から崩れ落ちる。
呆然と口を開けて、ただその光景に目を疑う。
ヘンテコが、絶対的弱者が……俺を遥かに上回る速度でストーンリザードを殺した。
俺がまるで太刀打ちできなかったあの装甲を破壊し、すべてを奪い取っていった。
いや、それよりも──
俺は『利用された』。
あの攻撃はおそらく直線的な動きしかできない。
そのために装甲に亀裂の入った『額』部分をあのガキがいる『西側』に向けてやる必要があった。
そして俺たちがラストアタックを狙ってストーンリザードの元に向かうよう計算し、あの電光石火の『下地』を整えたんだ。
この状況は、なるべくしてなっている。
あの金髪女がストーンリザードを殺せるように完璧にシミュレートされている。
「あり……えない……」
俺は……負けたのか?
ヘンテコに……?
そんな2人の背後から足音が聞こえてくる。
リタとレオンが力無く振り返ると、そこにはアインスがいた。
彼女は微笑し、口を開く。
「これでラストアタックは私たちのもの。残念ながら2人とも、B級昇格は次回のお楽しみだね」
リタは唇を震わせる。
違う、次回じゃダメなんだ。
ボクはこの討伐でB級冒険者にならなければいけなかった。
アインスは地面に膝をついたレオンの目の前まで辿り着き、その体を見下ろす。
「落ち込む必要はない。実力どおりの結果が出ただけだ」
そして、その目がより深く、黒く濁っていく。
「さぁ、私たちのおこぼれを持ってお家に帰るといい。討伐達成おめでとう、ハイエナくん」
「────ッ!!」
レオンは下唇を噛みちぎりそうなほど強く噛み、両手の拳を地面に叩きつける。
屈辱に顔を歪ませ、目が血走る。
そこには、地に伏せて体を震わせる2人の敗者と、妖艶に笑う1人の勝者の姿があった。
vs ストーンリザード
『セリアの森』の闘い
「ふふっ。良い顔になったな、レオン」
──ラストアタック、ツヴァイ。




