ラストアタック
レオンはもう間もなくストーンリザードの元へと辿り着く。
リタはその右斜め後ろで徐々に高度を上げて、レオンと魔物との攻防の隙を狙うべく、ストーンリザードの視界の外へと移動していく。
確実に倒せる。あとは自分たちのどちらが『ラストアタック』を獲得するかの闘いだ。
それが2人の共通認識だった。
レオンは鉤爪を、リタは剣を構える。
そのときだった。
「────邪魔よ」
2人の間を、紫の稲妻が駆け抜ける。
リタとレオンは思わず声を漏らす。
「えっ……」
「なっ!?」
その様子を遠目に眺めていたアインスが口を開く。
「ふふっ。誰が『ラストアタックは譲る』なんて言った?」
すべて計算通りだった。
条件さえ満たせば、パワーもスピードもこちらの方が圧倒的に上だ。
「リタ、そしてレオン。残念ながら、この作戦に君たちの出番は『皆無』だ」
ヘンテコ『絶対捕手』、チートスキル《紫電一閃》。
フィアのヘンテコの発動条件は『落ちていくスマホをフィアが視認していること』だ。
魔物の巨体に邪魔されずこの電光石火を発動するには『角度』が必要になってくる。
フィアは視認できる『ドライの落としたスマホ』へと真っ直ぐに駆ける。しかしこれではストーンリザードの体を『掠める』ことしかできず、亀裂の入った『額』へと攻撃を当てることはできない。
それなら──額へと届く『何か』を一緒に連れていけばいい。
ヘンテコ『絶対捕手』は必ず『右手』でスマホをキャッチする。つまり、空いた『左手』でこうして誰かを引っ張ってやれば、その人物もフィアと一緒に加速できるのだ。
そしてそんな危険を冒せるのは、同じ『単発型』の『絶対防御』を使えるツヴァイしかいない。
繋いだ手を強く握る。
このチートスキルをブラウとの闘いで使用した際は『10m』しか離れていなかったが、今回はそれよりもずっと距離があり、速度は更に上昇する。
一瞬でリタとレオンを追い抜き、ストーンリザードの目の前へと辿り着く。
そして、ツヴァイは大剣を握る左手を大きく伸ばし、その剣先を獲物の額に向けて──
「はぁぁぁああっ!!」
──突き刺した。
装甲の破片を勢いよく吹き飛ばし、それでもスピードが落ちることはなく、大剣はツヴァイの左手ごとストーンリザードの内部の肉を突き抜けていく。大量の返り血がツヴァイの金髪を真っ赤に染め上げる。
やがて耐えきれずフィアの手を離してしまったツヴァイだが、その加速が完全に止まるころには、大剣はストーンリザードの体のおよそ3分の2を貫いた後だった。
フィアはドライの目の前でスマホをキャッチする。
ツヴァイはストーンリザードの体から大剣と左腕を抜き、空を一刀して血を払う。
──5秒。その左手から放出された紫の電気とともに、大剣はツヴァイのヘンテコによって収納されていった。
ストーンリザードは力を失ったようにゆっくりと巨体を傾かせ、地響きを鳴らしながら倒れる。
その音に冒険者たちは振り返る。
安堵の表情を浮かべる者、驚愕する者、歓喜の叫び声をあげる者。
やがてストーンリザードの主の赤い目から光が消え去り、その体はもうピクリとも動くことはなくなった。
完全に息絶えたのだ。
ドライは足元にいるフィアを見下ろし、呟く。
「……お疲れ様、みんな」
ツヴァイは「ふぅ」と息をつき、ドライとフィアに視線を向ける。
2人ともこちらを振り返っており、安心したように笑みをこぼしている。
ツヴァイは申し訳なさそうに目を伏せて言う。
「巻き込んでごめんなさい……ありがとう」




