理論構築 〜破壊と創造〜
リタとレオン、そしてツヴァイからも遠く離れた安全圏でアインスは思考を続ける。
装甲を破壊せずともストーンリザードに攻撃を与える方法は存在する。
しかしその方法だけは絶対に取れない。
囚われるな。思考を切り替えろ。それならやはり──
「……装甲を破壊するしかない」
アレを破壊できるとしたら、リタの攻撃を何度も浴びせるか、あるいはフィアの電光石火しかない。
電光石火には『角度』が必要だが、その問題については既にクリアしている。欲しいのは『絶対に壊せる』という保証だ。
偶然勝つな。必ず勝て──先ほど自分がフィアにかけた言葉を思い返す。
「……ダメだ」
せめて……せめて亀裂の1つでも入れられたならフィアの能力で倒せるはずだ。
しかしその方法が導き出せない。
そのとき──
それはフィアが何の気もなしに発した言葉だった。
「あんな頑強な装甲……物理的に壊せるのかな……」
その瞬間。
アインスは目を見開く。
今まで得た情報が頭の中を反復し、高速で処理を行う。
常識を破壊し、創造を繰り返す。
新たな理論を構築していく。
そして──
「……完璧だ」
アインスは呟く。
「この方法なら『絶対』に勝てる」
フィアは驚き、アインスに視線を向ける。
「ア、アインス……?」
「でかしたフィア。君のおかげで完成したぞ、勝利の理論」
「ほ、本当に!?」
「ああ。答えは案外シンプルだった。物理的に壊せないなら──物理法則を無視してやればいい」
アインスは口端を吊り上げて笑う。
「さぁ、討伐開始だ。ふふっ。もう勝利は『確定』しているけどね」




