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直面している問題

「──でね、あたしはその漫画を読んで怒ったのよ。『性別不詳(ふしょう)キャラを出すなら最後まで性別を明かすな!』って」

「……それ、ただのツヴァイの好み」


 ツヴァイとドライの2人は楽しそうに雑談しながら歩く。

 そこから数メートル後方を歩くフィアは、隣のアインスに話しかける。


「あの2人、すごく元気だね」

「……体力があり過ぎるんだ」

「アインスもそうだと思ってたけど」

「……私は体を動かすのが苦手だ」

「そ、そんな冒険者いるんだ」

「……うるさいな」


 サンブルクを出て、10日。ナンバーズは王都・メルヴィンを目指している。

 ツヴァイが振り返り、アインスに声をかける。


「ほら、もうすぐ着くから頑張りなさい。フィアでも平気な顔してるのにだらしないわね」

「……見えてきた」


 ドライは、左頬の焼き印を隠すようにマントのフードを目深にかぶる。

 王都・メルヴィン。通称、冒険者の街。

 多くの冒険者たちがここに拠点を置き、魔物討伐の依頼に(のぞ)む。戦闘向きのギフト保持者だらけの街をヘンテコが歩くには危険が伴うため、こうして焼き印を隠す必要があるのだ。


 フィアが疑問を口にする。


「どうしてアインスたちはそんな街に拠点を置いてるの?」

「情報を集めるのにもってこいだからだ。どこの国でも、情報というのは首都を中心に拡散されていくものだよ」

「な、なるほど……?」


 いまいちピンと来ていないフィア。

 アインスは続ける。


「私たちの目的は、世界を変えること。まずはこの国のヘンテコを救う必要がある。そのための条件は大きく分けて2つ。1つ……国王の暗殺」

「暗殺……」

「私たちがまともに国とやり合って勝てるはずがない。戦闘すら行うことなく、この国の実権を握る者を秘密裏に始末しなければいけない。そしてもう1つの条件……代替えの王を用意すること」

「代替えの王?」

「シュバルツ王国は王政。王が死ねば、王子たちの中から次の国王が選ばれる。そこで私たちの息のかかった者を王に選ばせて、この国を操るんだ」

「い、息のかかった王子なんているの?」

「いるわけないよ」

「ならどうやって……」

「だから私たちは『洗脳系能力』を持つヘンテコ使いを探しているんだ。代替えの王を能力で操り、シュバルツ王国の実権を握る。これが私たちが世界を変える現実的な手段だよ」

「それでサンブルクで仲間を探していたんだね」

「それだけではないよ。小さな目的はたくさんある」

「小さな目的?」

「治癒系能力を持つ仲間も欲しいし、可能であれば拳銃も欲しい」

「拳銃!?」

「私たちが主に相手するのは魔物じゃない。近代兵器は魔物には通用しないが、ギフト保持者には通用する。彼らの最大の弱点は奇襲……先日のエーデルブラウも拳銃があればもっと簡単に倒せていたはずだよ」

「げ、現実的だね」

「ファンタジーじゃないからね。合理的に、現実的に目的を遂行しなければいけない。たとえ1つ1つは小さな目的であっても」

「お、覚えておくね」

「そして……私たちが直面しているもっと現実的な問題を教えようか」

「な、なに……?」


 アインスは真面目な表情で、フィアに顔を近づける。


「金がない」

「は、はい?」

「……サンブルクを往復するのに必要な食料を揃えるために、貯金が底をついた」

「今までどうやってお金を稼いでいたの?」

「それは……メルヴィンに着いたら話す……うぷっ……」

「あっ、ごめん」


 アインスは口元を押さえて、喋るのも苦しそうにしている。怪我の影響ではなく、本当に体力の限界が近づいているらしい。

 先日とは別人みたいだ、とフィアは驚く。

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