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vsゲオルク『世界法則』


……



……



 襲撃作戦の前日、夕暮れ時。

 ツヴァイとドライが情報収集に向かった後、アインスはフィアに話し始めた。


「単発型のメリットについて話しておこうか」

「単発型のメリット?」

「そう。さっきツヴァイが言っていた『ヘンテコは単発型というだけで当たり能力』というやつだ」


 アインスは人差し指を立てて説明する。


「ゲームとかでよく『無敵状態』というのがあるだろう。たとえば特定のアイテムを使ったり、必殺技を発動させたときとか」

「ぼ、僕ゲームやったことないので……」

「そうなのか? まぁ、いい。先ほど世界法則について話したけど、覚えてる?」

「はい」


 アインスは口端をあげてニヤリと笑った。


「こういう世界法則があるんだ。『単発型は発動時、5秒間の無敵状態がある』」

「む、無敵状態……」

「そう。単発型の能力は5秒しか発動できなかったり、発動自体に5秒かかったりするからね。君のヘンテコの場合だと『スマホをキャッチした時点で能力は解除される』わけだから更に短くなるけど、それでも発動時点から5秒間は無敵状態になるんだ。たとえそれがスマホをキャッチした後でもね」

「無敵状態ってどんな感じですか?」

「本当に言葉の通りだよ。どんな攻撃も効かない。剣でも、弓でも、毒でも、あらゆる攻撃を跳ね除けてしまう。ヘンテコは能力自体が大したことないから、『無敵状態の恩恵(おんけい)を受けられる』というだけで単発型は当たり能力なのさ。さいわい、君のヘンテコは発動条件は緩いからすぐに使える技だ」



……



……



 身体能力の低いフィアが国王像とともに落下してきても傷ひとつ負わなかったのは、この無敵状態のおかげだった。

 鈍い音とともに、大剣が弾かれる。

 渾身の力で剣をふるったゲオルクの腕に衝撃が走り、それは胴体まで伝わっていく。


「なっ!?」


 見ると、少年の右手からは紫の電気が発生している。

 単発型の能力を利用した絶対防御──それは冒険者にとっては常識。

 ゲオルクは咄嗟に身構える。

 この少年は何か能力を発動させた。

 脳裏に、最初の落石攻撃が浮かんでしまう。

 あのとき、岩が(まと)っていた電気は紫色だった。

 あれはこの少年の能力である可能性も否めないのだ。

 一体、何が起きる?

 何かがこれから起きるはずだ。

 目の前の少年はまだ『落としそうになったスマホをキャッチした』だけなのだから。

 攻撃の反動による体の痺れ、そして最初に仕込んでおいた能力の拡大解釈。

 ゲオルクの意識のすべてがフィアに向けられたその隙を、ツヴァイは見逃さなかった。


「はぁぁああ!」


 一閃。

 ツヴァイの剣が振り抜かれる。

 すんでのところで反応してかわそうとしたゲオルクだが、その剣は彼の脇腹を深く切り裂く。


「がっ──!?」


 傷口を手で抑えるが、その隙間からドバドバと血が溢れる。

 血。

 血だ。


「バ……バカな」

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