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vsゲオルク『ギフト発動』


 一方、ゲオルクはツヴァイの剣技を(さば)きながら眉をひそめる。

 さっきの落石攻撃は明らかに能力によるものだが、あれほど強力なヘンテコなど聞いたことがない。何かカラクリがあるはずだ。

 降りてきた3人のうちの誰か……目の前のツヴァイの能力である可能性もある。

 剣の腕といい、こいつは危険だ。


 奇襲作戦は、ゲオルクにそう警戒心を与えるに十分だった。


 その警戒心をツヴァイも感じ取っていた。

 アインスがいつも口うるさく言っている。奇襲作戦では相手を油断させることが大切だが、ひとたび対面の戦闘が始まれば『能力を大きく見せることも重要』だと。

 現に、ゲオルクはツヴァイのヘンテコを必要以上に警戒して攻めあぐねている。実際にはただ物を収納するだけの能力であるにも関わらずだ。

 互いの剣が交差し、火花が散る。

 単純な筋力ではゲオルクが(まさ)るが、力の流れをうまく利用しているツヴァイの方が一枚上手だ。ゲオルクの足が一歩後退する。


「……残念だな」

「は?」

「ヘンテコでありながら、よくここまで鍛え上げた。だからこそ残念だ。お前がギフトを授かってさえいれば、共に背を預けあう最高の仲間になれたかもしれない」

「あたしはそういう言葉が一番嫌いなのよっ。『境遇』で人の価値を決めるな! あたしの価値はあたしが決める!」


 ツヴァイが横一直線に剣を()ぐ。ゲオルクは後ろに飛び退()くことでそれを回避する。


「それに……残念なのはこっちも同じよ。あんたは、向こうにいる2人と違って芯から悪いやつには見えない。なのにブラウの悪行を見て見ぬフリしてる」

「大いなる使命に犠牲はつきもの……仕方のないことだ」

「大いなる使命?」

「オレはブラウという男の能力に心酔している。あれこそ神より授かりしギフトだ。あの圧倒的な力を目にしたとき、オレは気づいた。神は求めているのだ。ブラウによる革命を」

「ふん、気持ち悪い宗教ね」

「神は信じないか? これほど不思議な能力が世界に発現したというのに」

「信じる信じないは重要じゃない。今もどこかで苦しんでいるヘンテコ保持者が沢山いるのに、それを無視するような神には祈らないわ。欲しいものは全部自分の手で勝ち取ってみせる」

「そうか」


 ゲオルクは哀れみの表情を浮かべる。

 そして次の瞬間──彼の全身から赤色の電気が放たれた。


「ならばその非力な腕で奪い取ってみろ。そして痛感するといい。神より授かりしギフトの前に、いかに己が無力だったかを──」


 ツヴァイは身構える。

 ここからが本番だ。

 自分の持てるすべての力と知恵を絞り出さなければ、ヘンテコがギフトに勝つことなんて到底できない。

 ツヴァイの目が、獰猛(どうもう)な獣のように敵を睨みつける。

 そのときだった。

 ゲオルクの体が膨張する。

 いや、違う。

 そう錯覚しただけだ。

 一瞬のうちに間合いを詰められたことによって。


「はっ──!?」


 ゲオルクの剣が、すぐ脇腹まで迫っていた。

 ツヴァイは思考すら置き去りにし、反射だけでゲオルクの剣と自分の体との間に大剣を差し込む。

 ギリギリ防いだ。そのはずだった。


「なっ……」


 まるで津波に飲み込まれたように、あらがう余地もない。

 あり得ないほどの腕力を持ってして、その剣撃はツヴァイの剣を彼女の体ごと叩き飛ばす。

 二度三度と地面をバウンドし、受け身を取ることすら叶わない。

 うつ伏せに倒れたまま、ツヴァイは全身の痛みに悶える。


「がっ……ぐぁあ! な、何が……」


 まともに反応できなかった。

 これがナンバーズの他のメンバーであれば、防ぐこともできず、即死していたかもしれない。

 いや、それ以上に……なんだ今の力は?

 息が乱れ、あいた口から地面に向けて唾液が伸びる。唾液は、血が混じり赤く濁っていた。

 ぐらつく視界に、ゲオルクの足がうつる。彼はツヴァイを見下ろしながら言う。


「ギフト『身体強化』……身体能力を極限まで高める能力。拳で小突くだけで岩を破壊し、頭を撫でれば頭蓋骨を粉砕する。剣をふるえば、鉄すら木っ端微塵。ダッシュや跳躍、動体視力まで強化される。ここまでシンプルで強力な能力は他にないだろう?」


 ツヴァイは剣先を地面に突き立て、なんとか立ち上がる。


「そのまま倒れておくべきだったな。お前はもう手も足も出ないぞ。ここからは闘いじゃない、一方的な『弱い者イジメ』だ」

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