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第八話「過去への執着の行末」

「とまらないこの気持ちは消えることのない自分への罪」ー卒業生・松裏芽衣(16)


 前回の矢田との情報交換の後、僕は千歳に電話を掛けた。


 「夜分に申し訳ない」


 「・・・ううん大丈夫。それより何を協力すれば良いの?」

 僕は矢田と話してる時に、千歳に連絡をしていた。

 彼女には『協力』してもらう。


 「実は、近元学は訳あって僕と因縁があってな・・・・。表面上では普通だが、かなり僕に根を持っている。クラスを引っ張っていく者同士、関係をよくしておきたくてな。」


 「よく分からないけど・・・私にできる事ってあるのかな?二人の問題なのに私が関わったらいけない気がする・・・」


 「あいつは僕と馴れ合う気がないんだ。『二人きりの時』は尚更僕の存在が、機に触るだろう。だから、僕とじゃなく、千歳と『二人きり』になって欲しい。その間に僕が入っていく。ある意味仲介役だ。」


 少し言い方を変えたが、あながち間違いじゃない。


 「わっ・・・私??・」


 「あいつも男だ。二人きりだと何してくるか分からないから怖いだろ。無理はさせない。嫌なら断ってくれ」


 千歳は間髪入れず即答した。


 「私でよければ・・・やります。手伝わせて!その『仲直り大作戦』に!!」

 (『仲直り大作戦』か。面白い・・・・・・。)


 「ありがとう。その・・・・礼と言ったらあれだが、一連の出来事が終わったら、僕から君の告白の返事をしたい」


 「え」


 「聞いてくれるか?」


 「・・・・・・・うん」


 「約束だ。必ず返事をする」


 「・・・・わかった・・・・・そのためにも私、ベストを尽くすよ」



 お互い電話を切り、寝床に入った。


 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 千歳は走って、僕の背後に回った。


 「遠出・・・お前、千歳にこうなる事態を仕向けさせたな・・・?」


 近元はどうやら察したようだ。


 その通りだ。千歳には作戦を伝えていた。

 『二人きりの場で、『自分と僕の関係を言え』と。

 話し方が上手い千歳に共感を得た近元は、まんまと誘われ、自分を隠しきれなくたった。

 そして、遠出(津神)を堕とすため、彼女に手を出すだろうーーーーー


 その決定的瞬間を、僕が捕らえれば、こっちの勝ち。


 僕が今こうして前にいるという事は、近元の負けなのだ。




 「『お前の大切なものを壊す』と言ったんだ。と言うより、もう俺の手の上にあるがな」


 僕は、スマホを近元に向け、彼に写真フォルダを見せた。


 そこには千歳の首を絞めようとする近元が写っている。


 「おい・・・これは」

 「さっきの連写音はこの教室中に設置した僕のカメラだ。僕が廊下からスマホのBluetooth機能で撮影した。5台使用してな。

 どの角度からでもお前が千歳の首を絞めようとしているように見えるよう、古今東西あらゆる方向を意識して、設置したんだ」


 自分の置かれている立場を理解したんだろう。瞳孔が開き、目の動きがおかしいのがわかった。


 「だからどうしたって言うんだぁ??そんなもの、俺からしたら脅しにもなんないぜ?」


 「分からないのか?俺の言っている意味が・・・・・」


 強がる近元を、僕は更に追い詰める。




 「これがもし拡散された時の意味を考えてみろ。そう、それは『お前の学校生活』の終わりなんだ近元。今までの築き上げた人望が一枚の写真によって、一瞬で失われるという事なんだ」


 「・・・っ、テメェ。お前ごときに、俺の全てを奪われてたまるかァぁぁ!!!」


 近元は、僕に殴りかかってきた。フックや膝蹴りを入れてきたが、

 僕はひたすらに防御した。

 その様子を見ていた千歳はただ愕然と立ち尽くしていた。


 「お前はッ!!!・・・黙ってッ!!俺に殴られる人生を歩めば・・・いいんだよッ!!!!」


 近元の渾身の上段蹴りを喰らった。

 だけど何故だろう。全く痛くない。


 「それは、前の話だろ・・・・?今は違う。俺は『遠出奏多』。ただの、お前のクラスメイトだ」


 「だったら、今回も同じくしてやんよッ・・・」


 近元は僕から離れ、距離をとった。

 でかい一髪を喰らわせる気みたいだ。

 しょうがない。やっぱり、冷静になって『交渉』できる人間じゃないかーーーーー


 (少しばかりの暴力は必要か。)

 僕も構えた。


 「来いよ、徹底的に思い知らせてやる」





 「もういいよ遠出君ッ・・・・・・・・・」




 僕の服を震える手が掴んでいる。

 千歳だ。


 「もう十分でしょ・・・・続けたら『仲直り』・・・・・できないよ」


 「千歳・・・」

 近元から殺意が徐々に薄れていく。



 そうだな。これ以上彼女を苦しめたらいけない。

 彼女は善意で、手伝ってくれたのだから。


 「・・・・千歳、わかった。君をこれ以上怖がらせるのは、良くない事だ・・」


 「・・・・・」


 千歳をよく見ると涙を流していた。

 勇気を出して止めてくれたんだ。それに僕も答えなくちゃいけない。

 

 「巻き込んでしまって悪い、千歳・・・・・。

 だが近元。こちらが有利な立場なのは変わりはないぞ」


 「・・・何が言いたい・・・・・」


 僕はもう一度、写真を見せつけた。


 「『交渉』をしたい。僕と契約を結んでくれないか?」


 


 



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