第二十五話「班」
古川は自分に近寄ってくる僕に驚いていた。
「えっとー、はい?」
「僕は君と班を組みたい。ダメか?」
「いや・・・ダメじゃないんだけど・・・」
彼女は千歳の方を見る。
「待ってよ遠出君。ほら、彼女さんがいるし」
「千歳は矢田とすでに班を組んでる。それに彼女からも僕が古川を誘う事は了承済みだ」
前日に二人とは折り合いを付けている。
これも作戦の一つ。
仮に僕達3人が一緒の班で動き、潰された場合のうつ手がなくなるのを防ぐ為だ。
彼女らは二人で動き、僕は個々のチームを結成する。
そのうちの一人に古川文香を入れる。
仮説でもいい。なるべくわかる範囲の『記憶持ち』と接触し、白沢への一手を導き出す。
「わかった、遠出君と班を組むわ。但し、他の班員は私が決めて良い?」
「あぁ」
その後、古川と連絡先を交換し、一日が終わった。
三日後、古川の行きつけの喫茶店(まさかの矢田と同じ場所)で集まる事になった。
家に帰る途中に小腹が空いた為、コンビニに寄る。
肉まんを二つ購入し、外に出た。
「あ」「あ」
たまたま千歳と居合わせた。
「家に帰ったんじゃなかったの?」
「小腹が空いてなあ・・・・千歳こそなんか買いに来たのか?」
「えっと、私もおなかすいちゃって・・・・」
「よかったら一つ食うか?」
「え!?いいよ!自分で買うから!!」
慌てふためく千歳に袋から肉まんを差し出した。
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二人で熱々の肉まんを口にし、話し込んだ。
「遠出君は古川さんと組めた?」
「大丈夫だ。ただ他の班員は古川が決める事になった。彼女が白沢派じゃない事を祈ろう」
「前に聞けなかったけど、なんで古川さんを誘ったの?」
「理由は簡単だ。彼女自身『記憶持ち』として機能していないからだ」
「機能していない?」
「そうだ」
古川文香は先の運動会で矢田との関係性により、少しずつ何かを感じているはずだ。
矢田含め他の『記憶持ち』から見ても、十中八九『錦戸海夢』と言える。
本人は自覚がない。それはつまり、自分の正体に気が付いていないという事。
『錦戸海夢』は『津神凛斗』と深い関わりがある人物。
そう、僕が持ちえない『記憶の断片』を持っているはずなのだ。
「・・・・だから、古川文香を手内に納めた方が大手をかけれるんだ」
「でもさ、もうすでに白沢君が接触している可能性もあるんじゃない?」
「さっきも言ったが彼女自身、自分が転生している確証が掴めていない。問い詰められても何も答えられないし、そもそもいきなりあんな奴を信用できないだろうな」
クラス内で白沢と関わっている時を見たことがない。
ここは先の自分の仮設を信じてみてもいいと思った。
「白沢より僕は関わりがある。僕なら彼女を掴めるはずだ」
「・・・・そうなんだね。なんか少し遠出君が遠出君じゃないみたい」
「そういう千歳はどうなんだよ。矢田の他の班員は決まったのか?」
「うんとね、決まったよ」
どうやら千歳の班は五人揃ったらしい。
千歳、矢田に加えて
・田子忍
・夏飼鈴
・古市昌磨。
「田子忍」は運動会で古川・鷲尾と騎馬戦を組んでいた一人だ。学年でも一位を争うほどの成績の良さが持ち味。
テスト勝負という事で良い人選だ。
他の二人については深くは知らない。
「夏飼鈴」は千歳の幼馴染らしく、テニス部のエース。
「古市昌磨」はなんでも、教室の隅っこに一人で本を読んでいたところを千歳が誘ったのだ。
「いいメンバーができたんだな。一緒に頑張ろうな」
「うん、頑張ろうね・・・・」
肉まんを食べ終わり、夕日が沈む。
「そろそろ帰るか」
「待って遠出君」
「ん?」
僕が千歳の方を向くと、唇に柔らかい感触があった。
これは紛れもない。
肉まんんはもう、食べ終わっている。
「えっと・・・千歳?」
彼女は頬を赤らめながら僕の顔を見上げた。
「・・・言っとくけど、ほんとは遠出君と組みたかったんだからね・・・?」
微かに目つきが鋭くなっている千歳は「ふん!」と颯爽と走って帰っていった。
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古川との約束の日。
放課後、例の喫茶店に赴いた。
「あ、きたきた。おーいこっちこっち~」
声のする方へ向かうとそこにはおどおどしている男と、白髪で切れ長の美女が座っていた。
「よろしくね、とっ、遠出君・・・」
森戸部和樹。
僕と一緒にリレーに参加した男だ。
そこまで話したことはないが、見るからに頼りないな。
「ゆっ、雪城さんもほら・・・」
「・・・・・」
森戸部の呼びかけに応じず、雪城と呼ばれた女はコーヒーを口にした。
こっちに見向きもしない。
これは矢田よりも癖が強そうだ。
「古川、これで四人だ。あとの一人は・・」
「俺だよ」
僕の後に来店してきたようだ。
振り向くと、見覚えのある男が立っていた。
「近元学・・・」
「まさかもう一度組むとはな。遠出奏多」
「これで全員揃ったね・・・・それじゃ、作戦会議しましょうか」
古川が席に座る。
これは、一筋縄ではいかなそうだ・・・・




